『ホロウナイト シルクソング』の中国語翻訳が「作風とズレまくり」で不評殺到、業界翻訳者まで苦言。開発元がすぐさま改善表明する事態に

Team CherryのPR/マーケティング担当者は9月5日、『Hollow Knight: Silksong』の簡体字中国語ローカライズの改善に取り組むと発表した。

Hollow Knight: Silksong』の開発元Team CherryのPR/マーケティング担当者Matthew Griffin氏は9月5日、本作の簡体字中国語ローカライズの改善に取り組むと発表した。本作においては、中国ユーザーの間で翻訳品質について問題視する意見が相次いでいた。

本作は、高い評価を得た『Hollow Knight(ホロウナイト)』の続編だ。前作にも登場したホーネットというキャラクターを主人公とし、シルクと歌に支配された古代のムシ王国を舞台に、ホーネットの過去にもまつわる謎を解き明かすべく冒険する。

『Hollow Knight: Silksong』は2019年の発表から約6年を経て、先日9月4日についに発売された。かねてより非常に大きな注目を集めていた作品ということもあって、発売当日にはPC(Steam)版の同時接続プレイヤー数がなんと53万人を突破。また、配信開始直後には各プラットフォームのストアにて接続エラーなどが発生し、本作の購入・ダウンロードのためにユーザーが殺到したためではないかとささやかれた(関連記事)。

本作は早くも高評価を得ており、Steamのユーザーレビューでは、本稿執筆時点で約3万7000件のうち88%が好評とする「非常に好評」ステータスとなっている。ただ、投稿されたレビュー評価を言語別に見てみると、簡体字中国語だけかなり不評の割合が大きい。ほかの言語では9割以上が好評に投じているのに対し、簡体字中国語だけ好評と不評の割合がほぼ半々という状況だ。簡体字中国語によるレビュー投稿は英語に次いで2番目に多く、全体の好評率にも大きく影響していることだろう。

Steamでの簡体字中国語による不評レビュー内容を確認すると、ゲームの内容について言及しているものももちろん存在するが、ローカライズについての不満の声が多く見られる。それは単に、原文である英語からの翻訳のクオリティが良くないというだけではないようだ。

海外メディアLoekalization Blogによると、中国のSNS上では本作の発売の数か月前から、翻訳者として本作に関わっていることを公言する人物が確認されていたという。その人物はHertzzzzというハンドルネームを使用しており、本作の中国語ローカライズ担当者のひとりとしてクレジットに掲載されたHertzz Liu(刘辉洲)氏だと推測される。

Hertzzzz氏は、開発元Team Cherryと秘密保持契約を結んでいるはずであるが、本作の物語のネタバレをしたり、翻訳プロセスの詳細を公開したり、本作のリリース日を示唆したりしていたという。また本シリーズに登場する特定のワードについて、ファンの間で定着していた翻訳があったにもかかわらず、持論に基づき本作では却下したことを得意げに語っていたこともあったそうだ。

こうした経緯があった上で、いざ本作が発売されると、問題の人物による翻訳が酷かったことが確認され、先述したように不評レビューが殺到する事態になったわけだ。前作『Hollow Knight』では、その独特な世界観にふさわしいローカライズであったそうだが、Loekalization Blogいわく本作は「シェイクスピアを気取って書かれた清朝時代のメロドラマ」になってしまったという。このテキストこそが「本作の真のラスボス」だとも指摘している。

また、人気RPG『OMORI』の中国語翻訳を担当したTigerHix氏は、本作のローカライズは武侠小説のようだとコメント。これは翻訳者自身のセンスとディレクションに起因する問題であり、努力でどうにかなるものではないため、翻訳者を交代させない限り改善できないだろうとした。

そして開発元Team CherryのPR/マーケティング担当者Matthew Griffin氏は9月5日、本作の簡体字中国語ローカライズの品質の問題について認識しているとし、フィードバックに感謝の言葉を述べた。また、今後数週間にわたってローカライズの改善に取り組む予定であることも明らかにしている。

本作の中国語ローカライズを担当したHertzz Liu(刘辉洲)氏らは、どういった経緯で採用されたのかは不明で、もうひとりのFinn Wu(吴华锋)氏を含め素性ははっきりしない。ともあれ開発元Team Cherryには、その中国語翻訳が相応しいのかどうか判断できる人物がいなかったと思われ、今回の一件では同スタジオに同情的な意見も聞かれる。今後は、新たな翻訳の品質に注目が集まることだろう。

『Hollow Knight: Silksong』は、PC(Steam/Microsoft Store)/Nintendo Switch 2/Nintendo Switch/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けに配信中だ。Xbox/PC Game Pass向けにも提供されている。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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