『鳴潮』Ver2.6ストーリープレイ感想。完全無欠の王「オーガスタ」の“人間”の物語。破滅と善悪の両面を描いた『鳴潮』らしい人間賛歌ストーリー

『鳴潮』のVer2.6前半でメインストーリーとして追加された潮汐任務第二章・第八幕「赫耀の陽に灼かれて」をプレイした感想をお届けする。

すべてを失った壮絶な過去、寄る辺ない環境で成り上がった経緯、権力を手に入れても常に民衆のために戦い続ける覚悟。『鳴潮』のVer2.6前半でプレイアブルになったオーガスタは、完璧な人間といっても過言ではない存在だ。人間の可能性を絶対に諦めないオーガスタの生き様によって待ち受ける滅亡の不安が浄化されていき、確かな未来を勝ち取っていくような高揚感に包まれた。作中で太陽にたとえられるオーガスタは光眩しい存在であり、危機の最中でも人間の可能性を照らし出す。

あまりに気高いオーガスタの信念に、筆者は魅了され虜になってしまった。太陽ともいうべきオーガスタの魅力に取り憑かれてしまったのだ。この記事では、2025年8月28日から配信されたVer2.6前半でメインストーリーとして追加された潮汐任務第二章・第八幕「赫耀の陽に灼かれて」をプレイした感想をお伝えしたい。


波乱万丈の人生経験で育まれたオーガスタの器の大きさ

実は1つ前のバージョンであるVer2.5後半では、Ver2.6で登場するメインストーリー最新話の序章が追加されていた。そこに描かれているのはオーガスタの壮絶な過去だ。災害による故郷の壊滅、闘技場で100人ものグラディエーターとの戦闘、勝ち取った栄光によるセブン・ヒルズの総督まで出世など、オーガスタの人生は波乱万丈だ。

普通なら成り上がり物語で終わるところだが、オーガスタは違った。もう2度と災害に負けて悲劇を繰り返さないように、統治者としてすべてを捧げている。総督になったあとも災害との戦の最前線で指揮を取るオーガスタの揺るぎのなさから、太陽にたとえられるのも当然だろう。彼女は王の力の象徴でもあり、人々に希望を与える存在だ。

オーガスタがもっとも懸念するのは、セブン・ヒルズが壊滅するという予言だ。その予言は特殊な予言能力を持つ集団が未来を覗き見たものであり、実際に起ってしまう可能性は極めて高いと信じられている。共鳴能力に優れた「英雄王」が救世主となる予言も存在するが、平凡な共鳴能力しかもたないオーガスタは英雄王と見なされていない。

そうしたオーガスタを総督という権力の座から下ろそうとする画策する一派もいるようだが、オーガスタはまったく取り合っていない。オーガスタにとっての最優先事項は災害から民を守ることであるからだ。自分から権力を奪う者が現れる噂が立ってもまるで頓着せずに、自分がやるべきことに邁進する。オーガスタの器はとにかく大きいのだ。オーガスタは力を備えているものは信頼してくれるし、その一環として主人公は今回の冒険の参加を許された。ここまで民に尽くしているオーガスタが充分に称賛を得られないことは不条理であるし、元老院による下種た策略にはプレイヤーとして腹が立つ。

元老院への溜飲を下げてくれたのは、新キャラクターのユーノだ。予言者集団の一員であり、そのなかでも史上最高クラスの予言能力を持っている。ユーノは優れた予言能力を持っており、外れた予言はないそうだ。自分が見てしまった滅亡の予言をそのまま受け入れるのではなく、なんとか予言を回避できないかを探っている。ユーノの自らの才能に翻弄されずに、どうすべきかを考えていくというのはオーガスタに通じるものがある。滅びの予言について不安を漏らすユーノに、オーガスタは「王が王たる所以は、民のために不可能を成し遂げることにある」と言い放つ。2人の問答は世界の行く末に関わってくることであり、才気あふれる2人だからこその重さを持っている。

オーガスタが太陽であるならば、ユーノは月にたとえられる存在だ。2人は気が合うようで、重責を担う立場の者同士とは思えないほど親しい関係を築き上げている。お互いの大切な理解者であり、一方がもう一方を際立たせているような形だ。その関係性はあまりに尊いが、2人が主人公をそこに連なる存在と見なしてくれるのがうれしかった。2人の素晴らしさを間近で見ることのできることは一種の特権であり、そうした2人のことをきちんと理解して労うチャンスがあるのは素敵なことだ。


精神的なタフさ、そのものであるオーガスタ

壮絶な過去、勝ち取った栄光、決して諦めない強い意志。オーガスタの人格は完全無欠だといってもいいほどだ。元老院との協調や、自分の地位を狙うグラディエーターへの対処などは甘くなりがちだが、民草のために災害と戦うという姿勢は一貫している。オーガスタは気高い目的意識を持った稀有な指導者であり、オーガスタが太陽のように君臨し続ければ街は安泰だろうという気さえしてくるほどだ。

精神的にタフすぎるオーガスタは、どのような事態にあっても基本的には動揺している素振りを見せることはない。オーガスタが主人公を災害と戦う「狩り」に招待したあとに次から次へと巻き起こる事態についても、適切な判断を下して周囲を率いていく。オーガスタの振る舞いは素晴らしい王のようであり、彼女を信じて行くことが問題解決の最短ルートといっても間違いないだろう。実際プレイして感じたのは、オーガスタを信じ抜くことが重要だと感じた。ここまで自分を捧げることができるのは特異なことであり、首尾一貫してやり続けるオーガスタに尊敬の念を抱いたからだ。

あまりにオーガスタが自己完結しすぎているので、オーガスタと周囲のキャラクターの間に壁のようなものが存在していると感じるのも確かだ。オーガスタは信頼できるキャラクターではあるのだが、主人公はどうしても彼女の内面に踏み込めない。そうしたシーンが続くため、今回のメインストーリーの途中までは主人公とオーガスタにどこか距離感を感じるものとなっている。

そうした2人の距離感が近付くのは、主人公がオーガスタの過去を詳細に知ってからのことだ。オーガスタがかつて暮らしていた村へ行き、過去を垣間見る不思議な体験をすることでオーガスタは自身の抱く心情を吐露してくれるようになる。オーガスタの過去は壮絶であり、現在の気高くて高潔な性格に成長できたのはひとえに彼女の本来的な資質といっていいだろう。あまりにつらい過去から決して逃げずに正面から立ち向かい、それを克服していくオーガスタの姿に心酔させられた。

こんなに素晴らしいのに、オーガスタ自身は共鳴能力の低さゆえに自分のことを予言から救う「英雄王」になれないと思っていることがもどかしい。プレイヤーとしてはオーガスタの辛い過去無念や、未来の破滅を防ぐためにすべてを捧げていることを知っている。オーガスタにとってもっとも必要なのは周囲の理解者であり、労いの言葉だ。オーガスタには偉大な王としての資質が備わっていると伝える主人公の姿は、プレイヤーがオーガスタに抱く印象を見事に言語化してくれたといえるだろう。それをまさに主人公が絶好のタイミングでオーガスタに伝えてくれたときはうれしかった。

最終的には主人公とオーガスタの共闘によって、セブン・ヒルズを襲う災害を倒すことができたときはカタルシスがあった。脅威が去ったあとにオーガスタが率直な本音を語ってくれるように変化したのは、真の意味で主人公を対等の立場と認めてくれたからだろう。総督であるオーガスタに親友と呼ばれるのは畏れ多いが、地位や権力に関係なくオーガスタに親友として認めてもらえるのは主人公にとって誇りとなる。対等の立場になったことに伴い、本来の意味でオーガスタが真の仲間となったともいうべきかもしれない。今後のストーリーでも主人公とオーガスタによる共闘に期待したいところだ。

1つ前のVer2.5後半のメインストーリーは約1時間、と今回のVer2.6前半で展開されたオーガスタのストーリーは約5時間とこれまでに比べて1つのメインストーリーにかかるプレイ時間が長かった。ストーリーにかかる時間が長くなったことは決して悪いことばかりではなく、オーガスタという人物が歩んできた人生を丹念に知ることができたように思う。人として滅びという運命に抗う様子が濃密に描写されており、『鳴潮』のストーリーにおける重大な目的の1つを掘り下げて見ることができたような展開で満足度は高かった。


滅亡の絶望感に苛まれながらも運命を切り開いていく高揚感

セブン・ヒルズのリーダーであるオーガスタが率いる軍団によって、滅亡のおそれにつながる災害と戦うことができたのは、今後のメインストーリーで大きな指針の1つとなるだろう。滅びの予言は必ずしも絶対のものではなく、人々の選択によって滅びを回避できる可能性も存在することが示された。ポストアポカリプスの世界観が特徴の『鳴潮』には退廃的な雰囲気をせつなくも美しいと思わせるところがあったが、今回のメインストーリーでは滅亡の運命を切り開いていく高揚感も表現されている。人の持つ善性や可能性を描いた今回のメインストーリーは人間賛歌ともいえる内容だったかもしれない。

正直なところ、滅びの予言についてはまだ謎が多い。今回のストーリーをもってしても滅亡の予言を止めることができたのか、それともさらなる悲劇の可能性が残されているかもわからない。今回はオーガスタに焦点が当てられたストーリーだったが、過去に登場したキャラクターも滅びを回避できるかに関わってくるだろう。たとえば、次回予告に相当するイベントシーンではメインストーリー第2章の舞台の重要人物であるカルテジアの再登場が示唆されている。その一方で『鳴潮』Ver2.4予告特別通信で発表されたキャラクターのガルブレーナが不穏な様子を見せているため、波乱の展開もありそうだ。

『鳴潮』のメインストーリー第2章の舞台であるリナシータが、滅亡の危機にまだいるのは間違いない。そうしたなかで主人公たちに求められるのは予言をただ受け入れるのではなく、どのように対処していくかを考えていくことだ。Ver2.6でオーガスタと共に乗り越えた経験は主人公の血肉となり、ほかの仲間へ波及する形でリナシータを救う大きな流れになっていくかもしれない。不安と高揚感の入り混じった現在はどのような結末を迎えるかはまったく予想できないが、人間の可能性を見出した『鳴潮』のストーリーが今後どうなるのか楽しみでならない。


誰よりも滅びの予兆を知っているユーノはどうなる?

次回のメインストーリーは、2025年9月17日から潮汐任務第二章・第九幕「今宵は月の手のもとに」として配信される。こちらはユーノが主役級のキャラクターとして登場するようだ。作中でもっとも優れた予言能力を持つユーノは、誰よりも滅びの予兆を知っている人物といえるだろう。そうしたなかにありながらも、ユーノはオーガスタと共に戦うことを選んだ。今回のメインストーリーでは「運命なんて走り去ってブチ抜き、殴り飛ばせばいい」という旨のメッセージをオーガスタに伝えており、ユーノにも精神的な強さを感じた。

ユーノがこういうふうに発言できるのもオーガスタの影響を感じるところがあり、太陽にたとえられるオーガスタと月にたとえられるユーノはいいコンビ関係を築き上げているといえる。次回のメインストーリーではユーノが掘り下げられる内容となるようだ。世界の行く末はもちろん、主人公とユーノの関係性がどのように育まれていくのかにも注目したい。

過酷な運命が待ち受けていることを知っていてもなお、未来のために戦う勇気。その確固たる決意こそが、滅びの雰囲気に満ちた世界を救うきっかけになるだろう。Ver2.6のメインストーリー前半は滅びの絶望に苛まれながらも、人間の可能性を見せてくれた素晴らしいものだった。

鳴潮』は、PS5/iOS/Android/PC(Windows/Steam/Epic Gamesストア)向けに基本プレイ無料で配信中。

Ryuichi Kataoka
Ryuichi Kataoka

「ドラゴンクエストIII」でゲームに魅了されました。それ以来ずっとRPGを好んでいますが、おもしろそうなタイトルはジャンルを問わずにプレイします。

記事本文: 68