Epic Gamesのボス、Unreal Engine 5製ゲームの最適化不足は「開発の順序が原因」と説明。ゲームエンジンのせいじゃなく、扱い方次第
Epic Games社のCEOであるTim Sweeney氏は、Unreal Engine製ゲームにおいて指摘されることも多いパフォーマンス問題について言及した。

Epic Games社のCEOであるTim Sweeney氏は、Unreal Engine製ゲームにおいて指摘されることも多いパフォーマンス問題について、開発者が最高クラスのハードウェアを優先していることが問題だと説明した。海外メディアClawsomegamerが伝えている。
Unreal Engine(以下、UE)はEpic Gamesが開発するゲームエンジン。フォトリアルな美麗グラフィックが特徴で、大手スタジオを中心に多数のタイトルで採用されている実績をもつ。現在Unityと並んで業界標準ともいえるゲームエンジンだ。2022年4月に正式リリースされた最新メジャーバージョンであるUnreal Engine 5(以下、UE5)では、NaniteやLumenといった新機能を搭載し、さらなる品質向上や開発プロセスの効率化を実現している。
一方で、UEを採用したゲーム作品では、最適化不足が課題とされることもしばしば。たとえばUE5製タイトルである『ARK: Survival Ascended』では、PCおよびコンソールなどさまざまな環境におけるパフォーマンス問題なども指摘されていた。その後も、特にリリース直後には最適化不足が問題視される作品がしばしば見られる。最適化不足の原因がUE5にあるとする憶測も、一部ユーザー間には根付いている状況だ。

Epic Games社のCEOであるTim Sweeney氏は、先日韓国で開催された「Unreal Fest Seoul 2025」の基調講演後のメディアインタビューにてこうした状況について言及。一部ユーザー間でUE5製ゲームの最適化面に不満が生じている点についての質問を受けてSweeney氏は、開発の順序がおもな原因だとする見解を示した。同氏によれば、多くのスタジオがまず最高クラス(top-tier)のハードウェア向けに開発をおこない、最適化や低スペック環境でのテストを最後まで残しているという。理想を言えば、最適化は早々に、すなわち本格的なコンテンツ制作をおこなう前に始めるべきだと説明している。
なお、Epic Gamesとしては現在2つのことに取り組んでいるという。1つはエンジンのサポートを強化し、さまざまなデバイス向けに自動で最適化をおこなえるようにすること。そしてもう1つは、「早期に最適化をする」ということが慣例となるように、開発者の教育を拡充することだとしている。また、必要であれば、同社のエンジニアたちが助けに入ることもできると述べた。
ただSweeney氏は、ゲームの複雑さが10年前よりもはるかに高まっているため、単にエンジンレベルだけでの問題解決は困難になっているとも説明。エンジンメーカーとゲーム開発チームが協力し合う必要があると伝えている。Epic Gamesとしては自社タイトルとして『フォートナイト』を開発した経験があり、同作での最適化に関する知見がUEに活かされているそうで、低スペックのPCなどでもゲームが快適に動作するように設計されているとしている。

Sweeney氏の一連の発言は、ゲームの最適化に関する問題がひとえにUE5に起因しているとする主張への反論ともいえるだろう。たとえばハイスペック環境での美麗なグラフィックなどを前面に押し出した作品であっても、低スペック環境での動作も想定しながら制作初期段階で最適化をはじめることができれば、多くのプラットフォームで快適に動作させることが可能であるのかもしれない。
とはいえ、スタジオの規模を問わずUE5が採用されるゲーム作品は増えている。UE5での開発経験や最適化のノウハウはスタジオごとにまちまちとみられ、今回Sweeney氏が語った自動最適化などエンジン側のサポート強化も期待されるところだろう。Epic Gamesは開発者向けの支援にも力を入れていく姿勢を示しており、同エンジンを使用するゲーム作品のパフォーマンス改善が今後どれだけ進められるのかにも注目される。
Unreal Engine 5はEpic Games Launcherから無料で利用可能だ。