Ubisoftの大型TPS『ディビジョン2』の再始動を任されたスタッフは当初「たった5人だった」。“存在するはずがなかったチーム”の立て直し計画

Ubisoftが手がける『ディビジョン2』について、2021年ごろから現在に至るまでおこなわれてきた再始動の内情を、立て直しに携わった開発者の一人が明かしている。

Ubisoftが手がける『ディビジョン2』について、2021年ごろから現在に至るまでおこなわれてきた再始動の内情を、立て直しに携わった開発者の一人が明かしている。

『ディビジョン2』はオープンワールドRPGシューターだ。本作では、ウイルスの影響により崩壊の危機に瀕したワシントンDCを舞台に、民間の精鋭エージェント集団ディビジョンの一員として任務をこなす。本作は2019年よりPC/PS4/Xbox One向けに発売中。開発はUbisoft傘下スタジオのMassive Entertainmentが担当している。

先日8月22日、Ubisoftはドイツで開催中のゲームイベント「gamescom 2025」に出展。『ディビジョン2』に向けた新コンテンツ「Survivors」が発表された。前作で好評を博した「Survival」の流れを汲む脱出サバイバルモードであるという(関連記事)。なお、あわせて『ディビジョン』シリーズの今後の展開を示すロードマップも発表されている。

これを機に、Massive Entertainment所属で『ディビジョン』シリーズでアートを担当したPalle Hoffstein氏が自身のXアカウントで、『ディビジョン2』が一度衰退してから昨今の新展開復活に至るまでの経緯を明かしている。

というのも、本作は2021年3月にDLC「ウォーロード オブ ニューヨーク」のストーリーの完結をもって、計画されていたロードマップの内容が終了。以降長らく新コンテンツが開発されず、過去のシーズンコンテンツが再配信されるという空白期間が続いた。背景には本作の商業的失敗があるとされている。Ubisoftが2019年におこなった投資家向けの電話会議では、期待を大きく下回ったタイトルとして、『ゴーストリコン ブレイクポイント』と並んで『ディビジョン2』の名前が挙がっている。『ディビジョン2』については評価面では上々とされたものの、セールス面では振るわなかったようだ。

そのためか、この頃から『ディビジョン2』の“復活”に向けた取り組みがおこなわれることとなる。Hoffstein氏によれば、当時本作の立て直しに携わったのはなんとたった5名のスタッフであったという。しかし、1年か2年作品の寿命を追加するだけで終わらせる気はまったくなかったとのこと。チームの規模に反して、より大きく、より長続きするものを作りたかったと語った。

ただ同氏によれば、本作の復活に向けた取り組みはゲームを新たに立ち上げるよりももっと難しかったという。どうやって進めたらよいのか道筋も明確でなく、また何年も前からスタッフたちは別のプロジェクトに割り当てられていたことから、スタッフを確保することが困難だったという。作品を復活させるという想定外のタスクにより、いわば本来存在するはずのなかったポジションを埋める必要が出てきてしまったとのこと。

しかし、同氏にとっては面白い仕事であったという。かつて『レインボーシックス シージ』の立て直しにも参加していたというHoffstein氏は、両方に携われたことは素晴らしかったとしつつ、たった5人で『ディビジョン2』を復活させたことについては、「Ah that was fun(ああ、あれは楽しかった)」と、本心とも皮肉ともとれる絶妙な感想を述べている。

ちなみに『レインボーシックス シージ』の再始動にあたって骨組みとなったチームは25人だったという(Rock Paper Shotgun)。こちらも作品の規模に比して少ない印象を受けるが、『ディビジョン2』ではさらに少ない5人が再始動の滑り出しを担っていたわけだ。再始動プロジェクトが進むにつれて人員も拡張されていったと考えられるが、重労働であったことがうかがえる。

結果として、2023年1月には本作がSteamでも配信開始。そして2023年6月からは新ストーリー・新ゲームモードなどを携えてYear 5 シーズン1として再始動。その後もシーズン展開が続けられ、2025年5月に待望の大型DLC「バトル フォー ブルックリン」が配信された。先日のロードマップ発表に至るまで、新コンテンツの展開が精力的におこなわれてきた格好だ。同氏はまだまだやりたいことがたくさんあるとしている。

今回、再始動に際して『ディビジョン2』が直面した困難や内情が語られた。UbisoftのAAA級タイトルをたった5人から復活させるという無謀にも思える計画は、Hoffstein氏やチームメンバーの力強いビジョンがあってこそ無事達成されたといえるだろう。「Survival」の実装をはじめとし、まだまだ進化に期待できる本作。2023年に発表された続編『ディビジョン3』も含め、シリーズの今後の展開に注目したい。

『ディビジョン2』は、PC(Steam/Epic Gamesストア/Ubisoft Connect)/PS4/Xbox One向けに発売中。

Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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