ゲーム開発者間で「とにかく作ってみた→どうなった」紹介が流行中。形にしなきゃ始まらない
Redditにて、ゲーム開発者たちの間で自身のゲームがどのように変化したかを紹介する投稿が流行している。

海外掲示板Redditにて、ゲーム開発者たちの間で自身のゲームがどのように変化したかを紹介する投稿が流行している。
Redditでは話題の内容に応じて、サブレディットと呼ばれるコミュニティに分かれている。今回流行が生じているのは、「IndieDev」や「IndieGaming」といったサブレディットだ。その名の通り、インディーゲームの紹介や開発者たちの成果報告、開発のノウハウ共有などが日夜盛んにおこなわれている。
これらのサブレディット内で最近になって「JUST MAKE IT EXIST FIRST(まず形にしろ)」「YOU CAN MAKE IT GOOD LATER(良くするのは後からできる)」というフレーズとともに画像や動画を投じる動きが流行を見せている。添付されているのは自分のゲームの初期段階と、その後どのように変貌を遂げたかを比較した画像や動画だ。ほとんどスケッチのような状態から変化するものや、初期段階ですでに見映えするものなど、紹介されているものはさまざま。今回はその一部を紹介しつつ、ゲーム開発の様子を覗いてみよう。
まずは流行が始まった7月29日ごろに投稿されたmarcisl氏の動画。初期段階では、キャラクターを動かすと大量の同じ姿のキャラクターがついてくるものとなっている。マップもグリッドがそのまま見えており、置かれているオブジェクトは青いキューブ状だ。それから約1年半後とされる映像では、プレイヤーに近づいてくる大量の敵に向けて銃を撃ったり、ジャンプで軽快に攻撃するゲームに大変身を遂げている。初期段階の同じ姿のキャラクターたちは、プレイヤーを追尾する敵の仮の姿だったというわけだ。
こうした仮置きは多くの開発者の間で一般的な手法のようだ。最初はどんなかたちでもよいので、「まず形にする」ところから始めるという発想なのだろう。ほかの開発者も同様の比較を投稿しており、鳥となって飛び回るゲームを開発中のMuckWindy氏の投稿では、初期段階の映像としてテクスチャの貼られていない地形を、棒と板が組み合わさっただけのようなキャラクターで飛び回っている様子が紹介されている。一方で現状では木々や草木の豊かな広大なフィールドを、鳥が悠々と飛行するゲームになっているようだ。
また、7月25日にリリースされた放置ゲーム『Mini Painter』の開発者も比較画像を投稿。ヴィネットのように小さな部屋で生活するフィギュア職人をデスクトップの片隅で眺められる作品だが、その開発の初期段階では、ほとんどのオブジェクトが輪郭と陰影しかない灰色のものとなっている。これはこれでシンプルなグラフィックの作品として成立しそうだが、最終的にはじっくりと描きこまれた部屋に変貌。より彩り豊かで生活感溢れる部屋へと磨き上げられている。
一方で、開発者が自身の作品を紹介する投稿の中には、初期段階から目を見張るようなものも存在する。こちらは「Unity3D」サブレディットに投稿された、開発中のゲーム『MEATSHOT』を紹介するものだが、初期段階からキャラクターが縦横無尽にアクションして戦う様子が描かれている。後にブラッシュアップされたものでは、建物の材質や、車や貯水タンクといったオブジェクト、攻撃や撃破のエフェクト、濡れた地面の反射に至るまで、細部の表現が向上。一方で降りしきる雨は目立たなくなっており、表現の向上と同時にゲームプレイへの配慮もしていることがうかがえる。
なお多くの投稿が寄せられている中で、ひときわ反響を呼んでいるものもある。「JUST MAKE IT EXIST FIRST」というフレーズの後に続くのは変化を遂げた後の姿ではなく、「Shelf it later(後に棚上げ)」という言葉とゴミ箱の画像だ。途中で心が折れる、あるいは開発前のアイデアが「作ってみるとおもしろくない」と思えてくるのは、多くの開発者の抱える悩みなのであろう。とはいえ「まず形にする」ことでアイデアを取捨選択することにも繋がるのかもしれない。
ちなみにこうした投稿に向けては、自分の作品をリリースできずじまいだったことを後悔する開発者の投稿も寄せられた。このユーザーは20年近くもゲーム開発を続け、リリース済みの作品に関わったことがあるにも関わらず、自分自身の作品は一つもなかったそうだ。プロトタイピングは数多くしたものの、コーディングなどをなんでも最初から“正しいやり方”で作ろうとしてしまったために、モチベーションが続かなかったという。そのため“正しく”作ることにこだわらず、作ってから正しくしていけばよかったという教訓を、後悔と共に綴っている。
いずれにせよ、「まず形にして、後から整える」という手法は多くの開発者の共感を集めている様子だ。とはいえ“まず作った”段階の作品の出来は三者三様。開発者によって制作スタイルに違いがあることもうかがえる。「IndieDev」や「IndieGaming」では本稿で紹介したほかにもさまざまなゲームのビフォーアフターが紹介されているため、興味のある人はチェックしてみるのもいいかもしれない。