『ゼルダの伝説 風のタクト』RTA、Nintendo Switch 2パワーで新時代突入。虚空侵入クラッシュ回避、至難の“マッハ水泳”テクお手軽化で革新
RTA走者のLinkus7氏は6月25日、『ゼルダの伝説 風のタクト』をNintendo Switch 2でプレイする際のRTAテクニック解説動画を投稿した。従来からの変化がさまざまあるようだ。

ゲームRTA(スピードラン)走者のLinkus7氏は6月25日、『ゼルダの伝説 風のタクト』をNintendo Switch 2(以下、Switch 2)でプレイする際のRTAテクニック解説動画を投稿した。同氏によれば、Switch 2でのランは従来のゲームキューブとは違ったものになる可能性があるようだ。
『ゼルダの伝説 風のタクト』(以下、風のタクト)は2002年に任天堂より発売されたアクションアドベンチャーゲームである。2013年にはWii U向けに、グラフィックをリニューアルした『ゼルダの伝説 風のタクト HD』も発売された。オリジナル・HD版を合わせて全世界で約680万本を売り上げてきたヒット作だ。Switch 2においては、「Nintendo Switch Online + 追加パック」加入者向けのニンテンドー ゲームキューブ Nintendo Classicsにて配信されている。
本作はRTAが盛んであることでも知られている。2002年発売の作品でありながら、2024年にも新たなテクニックの発見やルートの改善がおこなわれており、本稿執筆時点でのAny%カテゴリ(達成率を問わないゲームクリアまでの時間を競うルール)の上位記録9つは2024年および今年に打ち立てられたものだ。世界最高記録は、イギリスの走者minimini352氏による44分19秒となっている。
動画の投稿をおこなったLinkus7氏は同カテゴリの世界6位の記録保持者。同氏の説明によれば、Switch 2で『風のタクト』をプレイした場合、従来は実用性のなかったテクニックを用いてダンジョンのひとつ「大地の神殿」を2分ほどで攻略できるほか、操作が極めて難しかった重要テクニック「UMSS」が誰でも簡単にできるという。

UMSS、正式にはUnbuffered Manual Superswimと呼ばれるテクニックは、人の手で実行するのが非常に難しい。アナログスティックを1秒間に何十回も前後させなければならないのだ。成功すればキャラクターに速度が蓄積されていき、本来は渡れない海をとんでもないスピードで泳いで渡る荒業が可能である。現在の風のタクトRTAは通常、ゲーム開始直後に海に飛び込んでこのUMSSを実行することに始まる。Linkus7氏によると、これまでにUMSSを手動操作で実現できたプレイヤーは世界中でも数人しかいないという。
一方でニンテンドー ゲームキューブ Nintendo Classicsではコントローラーのボタン割り当て変更機能により、比較的容易にUMSSが実行可能となった。同氏は例としてAボタンに「スティックを奥に倒す」操作を割り当てている。スティックを軽く手前に倒した状態でAボタンを連打するだけで、UMSSに必要だった高速のスティック前後が実現できるというわけだ。本作のRTAの高いハードルとして立ちはだかっていたUMSSの難度が大幅に緩和されたかたち。

また、Switch 2では壁をすり抜けて落下するグリッチを使用した後、マップがロードされていない場所に降り立った後の処理が変わっているようだ。『風のタクト』では、すり抜けグリッチ後に到達するロードされていない空間に当たり判定が存在していない一方で、宝箱の上にだけは着地することができる。しかし着地後にも周囲のロードはおこなわれずマップを強制的にロードするために風のタクトで「昼夜の唄」を振っても、ゲームがクラッシュしてしまっていた。ようするに、すり抜けても意味のない場所が多かったのだ。ところが、Switch 2ではこのクラッシュが発生しない。Linkus7氏はこのテクニックにより大地の神殿を2分ほどで攻略できると説明している。
このほかにも『風のタクト』のRTAには、さまざまなテクニックが存在する。たとえば、体力が尽きた際にジャンプ斬りを出してボタンを連打することでゲームオーバームービーをキャンセルしてわずかずつ上昇していく「ゾンビホバー」や、ゲームボーイアドバンスとの連動が必要なアイテム「チンクルシーバー」を本来使えないガノン城内で使用するといったものだ。
ただし、Switch 2にはゲームボーイアドバンスを接続することができないため、チンクルシーバーは使えない。新たに使えるようになったテクニックもあり、使えなくなったテクニックも存在するため、Switch 2での『風のタクト』RTAは、これまでとはかなり条件が違うということになる。


本稿執筆時点で『風のタクト』RTAのカテゴリはゲームキューブとSwitch 2で分けられており、Any%にはSwitch 2での記録は存在していない。新しく見つかったテクニックも含めてルートの構築をおこなう必要があるほか、さらなる新たなテクニックが見つかる可能性もあるためであろう。今後、さらなる調査と試行錯誤がおこなわれていくことになりそうだ。
2024年に激動を見せた『風のタクト』RTAは、2025年になって新たな時代に突入しようとしている。今後も走者たちの動きから目が離せない。