批判殺到中の“大作”ゲーム『MindsEye』開発元で「100人以上レイオフの可能性あり」との報道
不評が寄せられている『MindsEye』の開発元Build A Rocket Boyにて、レイオフを視野に入れた協議プロセスが開始されたという。

デベロッパーのBuild A Rocket Boyにて、レイオフを視野に入れた協議プロセスが開始されたという。同スタジオは6月11日に初開発作品『MindsEye』をリリースしたばかり。同作には品質を巡って、不評が寄せられている状況がある。
Build A Rocket Boyは、Leslie Benzies氏によって創設されたゲームスタジオだ。同氏はかつてRockstar Northに在籍し、『グランド・セフト・オートIII』以降の同シリーズ作品などで、プロデューサーなどを担当した人物。同氏はRockstar Northを退職後、2017年にBuild A Rocket Boyを設立。多額の資金調達を経て『MindsEye』を開発し、6月11日にリリースを迎えた。

『MindsEye』は、物語主導のSFアクションアドベンチャーゲームだ。近未来の架空都市「レッドロック」を舞台に、ジェイコブ・ディアスの戦いが描かれる。ジェイコブは謎の神経プラント「MindsEye」を移植された元兵士で、極秘任務を遂行していたものの、記憶を喪失。レッドロックで新たな生活を始めたものの、やがてテクノロジー企業と市長との争いに巻き込まれ、自らの過去を突き止めるために戦うことになる。
本作はBenzies氏が率いるスタジオの初開発作品として注目を集めていたものの、本稿執筆時点のSteamユーザーレビューでは約1800件中好評率が37%にとどまる「やや不評」ステータス。最適化不足や不具合の多さなどの報告が多く寄せられている。また本作はサイドクエストなどがなく一貫してリニアで進行するつくりだ。目的地に向かい、シンプルなTPS戦闘を繰り返すゲームサイクルになっており、フルプライスタイトルとしての作り込みの甘さなどからも不評が集まる結果になった(関連記事)。
そうした声を受けて、Build A Rocket Boyは本作のゲーム体験を改善していくと表明。最優先事項としてパフォーマンス向上を掲げ、最適化向上を図るアップデートが実施された。また厳しいフィードバックも含めて例外なく受け止めているとして、同アップデートは長期的な計画の始まりにすぎないとも伝えられていた。

一方で今回、米IGNはBuild A Rocket Boy内でレイオフが実施予定であると報道。同誌が関係者証言として伝えるところによると、100名を超えるスタッフが影響を受ける可能性があるという。というのも同スタジオでは現地時間6月23日より、英国法に基づく45日間の協議期間が開始。これは90日以内に100人以上のレイオフが計画された場合に企業に義務付けられているプロセスだ。
その後米IGNの問い合わせに対してBuild A Rocket Boyは苦渋の決断として組織再編をおこなっていることを回答。できる限りスタッフの再配置に尽力しているものの、レイオフが生じる可能性があるため協議プロセスを開始するに至ったという。人数については言及されていないものの、人員削減もおこなわれるのだろう。
ただ同スタジオによると、今回の組織再編により、本作の継続的なアップデートやパフォーマンス最適化に注力することが可能になるとのこと。今後数年間でコミュニティを拡大するという、長期的な視野で判断がおこなわれたそうだ。

近年では発売直後の新作の売上不振を受けて、すぐさま開発元でレイオフが実施される例も散見される。人件費を減らして長期的なサポートで挽回を図る戦略もあるのだろう。とはいえ、品質への批判が集中している矢先に一定規模のレイオフがおこなわれる可能性が浮上すれば、十分な人員で改善がおこなわれるどうか先行きは不安になるところかもしれない。
なおBuild A Rocket Boyは「現実とデジタル世界の境界線を曖昧にするようなマルチワールドゲーム」というコンセプトのもとで『EVERYWHERE』というプラットフォーム構想を掲げており、『MindsEye』はその先がけとなるゲームだ。そのためか発売後もさまざまな新展開が控えていることが伝えられており、初動で躓きを見せている本作が、今後のアップデートで拡張されて持ち直すことができるのかどうかは注目される。
『MindsEye』はPC(Steam/Epic Gamesストア)および海外PS5/Xbox Series X|S向けに発売中だ。