戦国MMOSLG 『信長の野望 天下への道』をあえて“MMO嫌い”がプレイすると、眠れなくなるほど挫折した。……でもMMOは好きになった

新作MMO歴史戦略SLG『信長の野望 天下への道』がリリースされた。GvG要素が特徴の本作を、MMOが苦手なプレイヤーが遊ぶとどうなるのか。

グラビティゲームアライズは6月18日、『信長の野望 天下への道』をリリースした。対応プラットフォームはiOS/Androidで基本プレイ無料。MMO要素を含むことが特徴の本作を、MMOが苦手なプレイヤーが遊ぶとどうなるのか。本稿ではテスト環境での先行プレイとリリース後のプレイに基づき、その顛末を紹介していきたい。

信長の野望 天下への道』は、コーエーテクモゲームスから『信長の野望·天道』の正式ライセンスを受けてKingnet、テンダゲームスが開発、グラビティゲームアライズが運営を務めるMMO歴史戦略シミュレーションゲームだ。日本各地の戦国大名に仕える領主として自勢力を発展させながら、敵対勢力との戦闘や政治的駆け引きを勝ち抜き天下布武を目指す。


ところで筆者はMMOが嫌い……というかほぼ食わず嫌いだ。最初に遊んだMMO作品はコミュニケーションにつまづきそのままフェードアウト、その後もMMOをはじめとするコミュニケーション前提のゲームを避けるかのごとく、オフライン専用ゲームか対戦特化型のゲームを好んでプレイしてきた。

ではなぜそんな筆者があえて本作のプレイ記事を書くことになったのか。それは本作の「不可侵地域」システムに興味を引かれたからだ。MMOが苦手な筆者でも、ひとりで領地に籠ってせっせと強くなれる。エリア分けされているからこそ際立つ不可侵地域の巣籠り感が、オフライン専用ゲームよりも魅惑的に聞こえたのだ。

さらに筆者は本作をリリースに先がけてテスト環境でプレイしたが、その際は完全にソロプレイ。あえて本作を、筆者が好きなソロプレイで体験していいという太鼓判まで押してもらえたのだから、心を躍らせながらプレイに臨んだ。そして、すがすがしいほどの挫折をした……ただ意外にもこの傷を癒したのが、本作のMMO要素だった。本作ではテスト環境でのソロプレイ、そしてリリース後のオンラインプレイ、その両方における筆者の体験を伝えていく。なお、テスト環境とリリース版ではサーバーが異なるため、リリースに伴ってはいちからプレイし直している。


ひとり黙々と陣地を拡大、出だしは順調

まずは本作の基本システムを紹介しておこう。本作のシーズン1には6つの戦国大名家が参戦。各プレイヤーは所属する勢力を選び、群雄割拠の戦国時代さながらの勢力争いを繰り広げることとなる。本作は3か月ほどのシーズン制で進行し、シーズンごとに状況がリセットされる、新規プレイヤーが参入しやすい仕組みだ。

本作には多数の戦国武将たちが登場。さまざまな能力をもつ武将を選び、最大3名の部隊を編制して戦に臨むこととなる。また本作の大きな特徴は、大名同士が覇権を争う「争覇地域」と大名本拠地の「不可侵地域」の2つの地域が存在すること。他勢力プレイヤーの影響を受けない「不可侵地域」で内政をしてしっかりと準備を整えてから、「争覇地域」での勢力対勢力(GvG)の戦いに挑むのだ。

筆者はゲームシステムの推奨を受けて、毛利家を選びゲームをスタートした。どの勢力も、ゲーム開始後しばらくは「不可侵地域」で自勢力の強化拡大に勤しむこととなるだろう。

過去の『信長の野望』シリーズの作品と同じく、本作でも自勢力の「内政」と「軍事」をバランスよく成長させていくことが重要となる。幸いにも本作はチュートリアルが充実しており、今やるべきことが常にわかりやすく提示される。「主要任務」と呼ばれるこのゲーム内目標をこなしていくだけで自勢力をバランスよく成長させられる上に、ゲーム内に存在する攻略要素を一通り学ぶことができるのだ。

拠点付近に陣取る山賊の討伐や資源地の確保、自拠点施設の強化などを重ね、筆者は順調に毛利家の本拠地「吉田郡山城」を成長させていく。マイペースに黙々と勢力を強化できるところは、まさに筆者が「不可侵地域」に期待していたゲームプレイであった。

ただゲームの進行とともに敵は強くなり、とうとう一度の戦闘では倒しきれない敵が出現。ピンチを迎えたかと思われたものの、ひとつ目の部隊と兵力の削り合いをさせて疲弊させたところにふたつ目の部隊を送り込む波状攻撃戦法で無事突破できた。当て馬にしたひとつ目の部隊は兵士の消耗が大きいが、ゲーム開始から1週間プレイヤーに有利にゲームが動くシステム「初心者保護」期間のおかげである程度カバーできる。ほかにも敵部隊の弱点に合わせた編制を組んだり、部隊のステータスを上昇させる施設強化を行ったりと、本作には工夫次第で戦闘を有利に進められる要素が数多く用意されている。ひとりでテンポよく攻略できるバランスに、このときの筆者は油断しきっていた。このあと足元をすくわれるとも知らずに。


勢いそのまま攻城戦へ、しかし……

テスト環境ということもあり、ここまで本作のMMO要素を何一つ活用せずにプレイしてきた筆者は、大きな障害にぶつかることもなくスムーズに進行。意外と誰ともコミュニケーションや連携せずに遊べるMMOなのでは……?という期待を膨らませていた。そうして居城まわりの資源地をLv1~Lv5までまずは落とし、本作の重要システムである「霧」を払う最初の機会が訪れた。実は本作、ゲーム開始時点では自分の拠点以外には霧がかかっており、内政を重ねて力を蓄えることで近隣の霧を晴らし次なる目標が示されるという仕組みとなっている。広大なマップに目移りせず、次の目標が明確にわかりやすいシステムだ。

霧の中から現れたのは、我が吉田郡山城のすぐ西に位置する日野山城。本作ではそれぞれの城にレベルが設定されており、最初の城ということもあってか日野山城のレベルは1だ。現時点で遂行可能な「主要任務」は一通りクリア済みであることも加味して、今こそ攻城戦の時と判断。ステータス欄に表示されている数字がやや大きいような気もするが、ここまで着実に勝利を重ねてきた我が軍がレベル1の城などに後れをとることもあるまい。記念すべき初の攻城戦を勝利で飾り、天下布武の第一歩としてくれよう。

勇敢にも単騎で城に突撃する我が軍。そして……

負けた。あっという間もなく、完膚なきまでに叩きのめされた。一度の攻撃でまったくといっていいほどダメージを与えられていないため、波状攻撃など戦い方を変えてどうにかできる次元でもない。そこで何か見落としはないか、一度攻略情報の確認をすることに。攻城戦開始の条件となる「包囲値」は満たしているし、部隊の状態は万全。武将のレベル上げや攻城戦に適した兵種選択など、まだ攻略の余地はあるのかもしれないが、正直に言ってそれらを改善したからといってとても勝てるようになるとは思えないレベルの負けっぷりだ。

当然最初の城攻めができないとなると、これ以上攻略を進める余地はない。こうして筆者のソロプレイチャレンジは、あまりにもあっさりと終わりを迎えた。順風満帆だったこともあり、もっとソロプレイで進められる腹積もりだったことも、挫折感に拍車をかけていた。本作をまともに遊ぶためには、やはり食わず嫌いだったMMOと向きあうしかないのか。しかも本作のMMO要素は、勢力同士がぶつかるGvG。いきなりMMO初心者が飛び込んでいいジャンルなのか。リリース前夜にあれこれと考え続けた結果よく眠れず、リリース当日には諦めて明け方から起き続けていた。


脱ソロプレイ

ひとりでほかのプレイヤーとコミュニケーションを取れるだろうか。どんな風に仲間を集めればいいのか。あれこれと懸念が生じる中でついにリリースを迎え、オンラインプレイが開始。ゲームが始まりまず目に飛び込んできたのは、オンラインの世界をリアルタイムで行き交うプレイヤーたちの存在だ。オンラインゲームなのだからほかにプレイヤーがいるのは当たり前だが、世界に自分がひとりだけいる景色しか知らなかった筆者は面食らう。なんとなく、初めての上京で上野駅に着いた時のことを思い出してしまった。オンラインの空気に若干気圧されつつも、ソロプレイ時と同じようにゲームが進むことを確認し、ひとまずは安堵する。オンラインプレイであっても、導入部はテスト環境と同じ。基本的には自分の拠点の拡大に集中すれば問題ない。

しばらくしてチュートリアルを終えたプレイヤーが増えてきたこともあり、チャットでの交流が盛んになってきた。主に、クランやギルドに相当する組織である「軍団」への勧誘が行われているようだ。当初筆者はMMO要素への苦手意識から軍団参加を渋っていた。しかしここで日野山城(Lv.1)での惨敗が頭をよぎる。このまま進めても、確実に負ける。また軍団に加入すれば、資源収入の増加などのバフを与えてくれる「軍団効果」を受けられる。ゲーム内のコミュニティに属するという抵抗感はぬぐえなかったものの、魅力には抗えず観念して軍団に参加することになった。

勧誘してくれた方、ありがとう

なお、戦国の厳しさを体現する本作では、同じ勢力内でも権力競争というべき仕組みがある。たとえば勢力への著しい貢献が認められた軍団の軍団長はそのシーズン中の筆頭家老に任命され、勢力全体の政策の制定や他勢力との交渉の権限などが与えられる。とはいえ、そういった権力争いに関わらずに一兵卒としてゲームに参加することも当然可能だ。かく言う筆者は軍団に参加こそしたものの、人の上に立てる自信がみじんもない。ひとりの兵士として戦う道を選び、黙々と目の前の目標を遂行していった。

徐々に勢力の活動範囲も広がり、同じ勢力所属のプレイヤーたちに頼もしさを感じ始めたころ、所属軍団の攻城戦イベントが発生。攻撃目標は、筆者の心と精鋭部隊をあっさりと粉砕したあの憎き日野山城(Lv.1)である。トラウマが蘇りかけ躊躇しかけたが、ここで軍団長がチャットで号令をかけてくれた。一丸となって日野山城に攻め込む仲間の姿を目にし筆者も奮起。雪崩のごとく目標へ攻め込む我が軍と共に、突撃を開始した。

今回は攻城戦イベントということもあり、「個人目標」と呼ばれる指標が表示されている。それを見る限り、やはり城に対してプレイヤーが一度に与えられるダメージ自体はそこまで多くはないようだ。テスト環境での筆者が弱すぎたわけではなかったのでひと安心。そしてこの個人目標のおかげでプレイヤーひとりが果たすべき目標がわかりやすい。小さな数値が積み重なり、城を崩すほどの大きな数値へと変わっていくことが目に見えて感じられるのだ。その後攻撃と撤退を繰り返し、10分ほどで無事攻城戦は勝利を迎えた。おそらく当然の勝利かもしれないが、前日に深い挫折を味わっていた筆者にとっては大きな意義をもつ一戦だった。一度の戦闘で押し切れなくとも、数と連携の力で最後には勝ち切る。毛利家の当主である毛利元就の、「三本の矢」の逸話を想起させる勝利であった。


一兵卒として楽しむ戦国時代

振り返ってみると、本作はGvG系のMMOの入門作品として最適ではないかと思っている。不可侵地域でじっくりと資源を集めて、時が来れば仲間と協力。難しいことは分からずとも、ゲーム内の目標や霧システムのお陰ですべきことがわかりやすい。

また今回筆者は軍団長の指示を受ける側であったが、本作では軍団幹部が勢力内の仲間をまとめやすいサポート機能が充実している。裏を返せば、ゲーム内チャットなどのコミュニケーションが苦手な筆者のようなプレイヤーでも、あまりやり取りを重ねずに仲間と足並みを揃えられる仕組みとなっている。そうしてすぐさまGvGの醍醐味を感じられる点も魅力のひとつだろう。

プレイヤー間で交流して団結し、目標達成を目指す。これまで筆者が味わう機会のなかった、MMOの良さを知ることができる体験となった。内政目当てで本作を始めたものの、今では自分でも驚くほどMMO要素を楽しめている。筆者のような“MMO食わず嫌い”は、ぜひためらわず本作に飛び込んでみてほしい

信長の野望 天下への道』はiOS/Android向けに、基本プレイ無料で配信中だ。

Daijiro Akiyama
Daijiro Akiyama

ゲームをすることと、ゲームの話をしたり聞いたりすることが同じぐらい大好きです。

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