“壺おじ”『Getting Over It』、RTA世界記録が約2年ぶりに更新。1分切りのさらに先へ

“壺おじ”こと『Getting Over It with Bennett Foddy』のRTAにて、世界記録が2年振りに更新された。1秒短縮の大幅更新である。

Getting Over It with Bennett Foddy』(以下、Getting Over It)のRTAにて、世界記録が更新された。2年ぶりの記録更新となっており、1秒以上のタイム短縮を実現している。

『Getting Over It』は、“壺おじ”とも呼ばれる、2017年にリリースされた横スクロール型のアクションゲームだ。プレイヤーは、登山用のハンマーを携え、何故か下半身が釜にすっぽり収まった男を操作し、険しい山を登っていく。本作ではマウスなどを、弧を描くように動かすことでハンマーが回る。可能な操作はそれだけだ。ハンマーを凹凸に引っ掛けたり、反作用による勢いなどを利用したりして山を登っていく。独特の操作に加え、いやらしい配置の障害物や、一度のミスにより進行状況が大きく後退する可能性もあるステージのデザインなど、常に緊張感の漂うゲームプレイが特徴だ。

そんな本作は盛んにRTA(スピードラン)でクリアタイムを競われるゲームの代表でもある。リリース時から多くの走者が記録を競い合い、Speedrun.comを見ると本稿執筆時点では約4000人もスピードランに参加している人気タイトルといえる。

そしてRTAにはそれぞれルールが設けられた「カテゴリー」が存在しており、“壺おじ”RTAにおいてもいくつかのカテゴリーに分かれて日夜走者が記録を競っている。今回そんな本作RTAにて、走者のOyamaTakeshi氏が「Glitchless」カテゴリーの世界記録を2年ぶりに更新した。

Glitchlessカテゴリーはグリッチを使わず、山を登りきるレギュレーション。リリース当初こそ8分47秒の記録だったものの、すぐさま2分台に到達。その後もハンマーの動きは最適化され続け、2018年10月には日本人RTA走者のnorishio氏が1分21秒275を記録した。2020年9月にはBlastbolt氏によって1分10秒切りが記録された。

さらにBlastbolt氏は、一度は世界一位の座を明け渡すものの、2023年4月に記録を更新し、一位の座に返り咲いた。その後同氏は1分切りも達成し、59秒885という記録は2年ほど破られることがなかった。また「59秒切り」についても、誰が初めに大台に達するかという様相を呈していた。

そんな中、6月13日にとうとうOyamaTakeshi氏が世界記録を更新。ランでは、スムーズにスタートを切ったOyamaTakeshi氏がよどみなく登山を進めていく様子が収められている。雪山地帯に入ってもそのスピードが落ちることはなく、Blastbolt氏が数手かけて登った、吊るされた桶のある地帯も、左側の壁を介さず、直接登ることに成功している。その後も留まることなく氷の壁やアンテナも乗り越え、ついに宇宙に到達した。

そうしてOyamaTakeshi氏はBlastbolt氏の記録を1秒559も短縮する58秒326を達成。世界記録の更新と59秒切りが同時に実現したかたちだ。OyamaTakeshi氏の世界記録達成を喜ぶ投稿には1万以上のいいねが寄せられ、多くの称賛コメントも集まっている。同氏は続く投稿にて嬉しさより安堵の方が大きいと述べており、タイム短縮にかかる緊張感や難易度の高さがうかがえる。

約2年振りとなる世界記録更新が果たされ、『Getting Over It with Bennett Foddy』のスピードランコミュニティも、再びさらに活性化するだろう。58秒326という記録が今後破られるのか、不倒の記録となるのかはまだわからないが、まずは前人未到の記録を残したOyamaTakeshi氏に称賛を送りたい。

『Getting Over It with Bennett Foddy』はPC(Steam)/iOS/Android向けに配信中だ。

Kosuke Takenaka
Kosuke Takenaka

ジャンルを問わず遊びますが、ホラーは苦手で、毎度飛び上がっています。プレイだけでなく観戦も大好きで、モニターにかじりつく日々です。

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