マイクロソフトのActivision Blizzard買収を巡る、米連邦取引委(FTC)による訴訟が取り下げ。完全決着

マイクロソフトのActivision Blizzardに関した訴訟について、米FTCは5月22日、訴訟をすべて取り下げると発表した。長きにわたる係争に決着がついたかたち。

マイクロソフトによるActivision Blizzardの買収に関して米国FTC(Federal Trade Commission・連邦取引委員会)は5月22日、買収を阻止するために起こしていた訴訟をすべて取り下げると発表した。

マイクロソフトは、2023年10月にActivision Blizzardの買収手続きを完了させているが、FTCは反トラスト法(独占禁止法)違反を訴え法的措置を模索してきた経緯がある。今回のFTCの判断により、両者の争いは完全に終結することとなった。

マイクロソフトは2022年1月、Activision Blizzardを総額687億ドル(約10兆円・現在のレート)で買収する方針を発表。その後、テック業界最大規模の買収案件となることもあって、独占禁止法違反の恐れがないかなどについて、日本の公正取引委員会を含む各国・地域の規制当局による審査が進められることに。ここで待ったをかけた当局のひとつが米国のFTCだった。

Activision Blizzardは、『Call of Duty』シリーズなどを手がけるActivision、『オーバーウォッチ』や『Diablo』シリーズの開発元Blizzard Entertainment、『Candy Crush』などで知られるKingといったデベロッパー・パブリッシャーを傘下に持つ。

FTCは、特にマルチプラットフォームで展開されてきた巨大フランチャイズである『Call of Duty』シリーズを念頭に、買収完了後にはマイクロソフトが独占化するのではないかと指摘。また、サブスクリプションサービス(Xbox Game Pass)やクラウドゲーミングサービスといった分野においても市場の競争阻害につながる買収であるとし、裁判所に仮差し止め命令を求めた(関連記事)。

これに対しマイクロソフトは、『Call of Duty』シリーズの提供を確約する合意をSIEや任天堂、Valveと締結。SIEは同買収について、当初は強硬に反対する立場を取っていたが、最終的には合意に至った。またマイクロソフトは、NVIDIAやUbitus、Boosteroidなどのクラウドゲームサービス運営会社とも同様の合意を取り付け、FTCを含む各国・地域の規制当局の懸念に対応した(関連記事)。

そして2023年7月、米国カリフォルニア州北部地区連邦裁判所は、FTCによる仮差し止め命令の請求を棄却。裁判所は先述した各社との合意にも触れ、マイクロソフト側が提示した証拠では、Activision Blizzardのコンテンツへの消費者のアクセス方法は買収後むしろ増えることが示されているとし、一方で市場の競争阻害を主張するFTC側は説得力のある証明をできていないと指摘した(関連記事)。

これを受けて、マイクロソフトは同年10月にActivision Blizzardの買収手続きを完了させ、一方でFTCは控訴に動く。ただ、第9巡回区控訴裁判所は連邦裁判所による判決内容を支持し、先日5月7日にFTCによる控訴を棄却。そしてFTCは5月22日、公共の利益にもっともかなう対応として、同買収の阻止に向けた訴訟をすべて取り下げることを発表した。

FTCの発表を受けて、規制当局や訴訟への対応に当たってきたマイクロソフト副会長兼プレジデントのBrad Smith氏は、米国内のプレイヤーおよびワシントンD.C.の良識の勝利であるとし、FTCに対しては今回の決定に感謝を示すコメントを出している。

なおActivision Blizzardは、すでにマイクロソフト傘下企業として活動しており、既存のマルチプラットフォーム展開を継続。一方で、先日にはGame Pass加入者向けサービス「Retro Classics」を発表し、1980〜1990年代のActivisionタイトルを提供するなど、両社のシナジーを活かす取り組みもおこなっている。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

記事本文: 7220