『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』は異形の傑作、何も知らない状態で遊ぶべき。だからこの記事も読まなくていい。それでもネタバレなしで情報を得たい人へ書いた記事
記事なんて読んでないで買ってやる/待つのがいい。

アニプレックスは4月24日、『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』を発売する。対応プラットフォームはPC(Steam)/Nintendo Switch。本作は『ダンガンロンパ』シリーズを手がけた開発者らが設立したトゥーキョーゲームスが贈る新作ゲーム。
筆者は先立って本作をプレイしたのだが……記事を書くのが難しすぎる。というのも、何も知ってほしくないからだ。本作については、何も知らず何もわからないままプレイしてもらうのが、ゲーム体験として一番純度が高いからだ。何を言ってもプレイ体験を損ねてしまう。興味があるならさっさと予約して情報を遮断して遊ぶのが絶対にいい。記事なんて読んでないで買ってやる/待つのがいい。
……とここで記事を終えてしまうのも、記事の執筆者として問題がある。なので、できるだけ「プレイ体験を損ねず、購入の参考になりそうな情報を掲載する」ことを頑張ってみた。筆者は“本作をおよそ遊びきったであろう状態”。仕掛けの全容が見えないから遊びきったと言い切りづらいものの、ほぼ全部遊んだ状態だ。そんな筆者が、本作の情報をなるだけネタバレなしでお贈りする。本当にネタバレなしで、プレイ体験を損ねないようにかなり注意したので、そこは信頼してほしい。ストーリーの話はもちろん、クリア時間にすら言及していない。あとスクリーンショットは公式で出ているものだけ使っている。
以下、わかりやすくQ&A形式で回答していこう。
Q. どんなゲーム?
A. なかなか端的に説明しづらいが、学園生活アドベンチャー+学園防衛SRPGといったところ。基本的には、学園内で過ごす日々がストーリーで展開されつつ、敵襲時にはSRPGで展開される。時折自由時間なるものがあり、その際どう過ごすかを選べる。が、選べる項目は多くないのでさほど自由度はない。基本的に読み物ベースで時折SRPGとして展開されると考えればいいだろう。
Q. 小高和剛作品(『ダンガンロンパ』や『超探偵事件簿 レインコード』)と比べてどう?
A. 結論からすると、小高氏の作品としてはもっともゲームとして出来がいい。当然であるが本作には小高氏のエッセンスが濃厚に出ている。それ以上に過去作に比べてゲームプレイ部分における進化が大きい。小高氏の作品……代表作として『ダンガンロンパ』や『レインコード』を挙げるとして、両作は面白いものの「事件が起きるまでの時間」に退屈を感じやすい構造だった。これはメリハリとも言えるものの、探索パートはダレる人もいただろう。
本作においては、過去作における「殺人事件が起きた」ような緊張感がずっと続く。ずっと不穏である。そのおかげで没入感が途切れない。しかしその分気力を使う。文字ベースのゲームなのにヘトヘトに疲れる。筆者は本作を長時間プレイしていて38度の知恵熱が出る休日もあった(風邪かもしれないが)。それぐらい、プレイ中は良くも悪くも濃密な時間を過ごせる。
Q. キャラはどう?
A. 過去作も狂ったキャラは多いが、今作は特にイカれている 。飴宮怠美ちゃんの設定を見て察するといい。

Q. SRPG部分は正直どう?
A. 驚いたのだが、SRPG要素がかなり良い。筆者は『ファイアーエムブレム』シリーズなどSRPGをよく遊ぶが、本作のSRPG部分が気に入っている。一番好きなところは、強さがインフレしないところだ。攻撃のダメージはあまり大きくならない。なので、ずっと「最後のHP1をどう削るか」という駆け引きが続く。

本作においてのキャラの成長要素は「強くなる」というより「使い勝手がよくなる」にフォーカスされている。筆者は難易度ノーマルでプレイしたが、ジャンル経験者なのでさほど難しく感じなかったものの、気を抜くとすぐ壊滅するので「死闘感」があって楽しい。セーブ・ロードに制限はなく、リトライなどもさくっとできるので、やり直しも割と許容されている。また「死にかけのキャラが大技を使える」「死んでも逆に有利」みたいな変則ルールがアクセントにもなっている。ノーマルの難易度でもそれなりに難しいとはいえ、さすがに『ファイアーエムブレム』のルナティックを遊ぶ、みたいな人の難易度ニーズには対応できないかもしれない。だがSRPGとして単体で遊ぶにしてもかなりよくできていて評価が高い。
個人的に、小高氏の作品の中でも「ストーリーと地続きなバトルシステム」が導入された点も大きいと感じる。過去作においても敵との対峙においてはアドベンチャーゲームに囚われないギミックが用意されていた。それはそれでよかったのだが、ストーリーとバトルの体験がやや途切れてしまうシーンもあった印象だ。本作においてストーリーとSRPGのバトルは地続き。「敵に負けられない」という気持ちを、SRPGのバトルにそのままぶつけられる。過去作と比べてストーリーの延長上で敵とバトルしている感が強いので、気持ちが乗りやすい。ストーリーとギミックががっちり噛み合っている。非常に優れた仕組みである。

Q. 打越鋼太郎作品としてどう?
A.多くは語れないが打越氏が関与したパートは、打越作品らしいエッセンスが出ていると感じた。どうらしいのかを説明しようとすると……ネタバレになるので割愛する。
Q. エンディングが100種類あるのは本当か?安易なバッドエンドはないのも本当か?
A.本作のハンドレッドルートシナリオディレクターの打越氏が、エンディングが100種類あり、安易なバッドエンドはなく、すべてのエンディングが濃密だと語っていた(関連記事)。本当なのだろうか。これは結論からいうと、本当である。安易なエンディング、濃密の定義は人それぞれかと思うが、少なくとも選択肢選んですぐ結果がわかるものは少なく、同じバッドエンドのキャラ差分で5パターン、みたいなものはない。逆にエンディングが多くて気が遠くなったぐらいである。やりすぎである。なので、エンディング含めてボリュームについては心配しなくていい。
Q. ぶっちゃけどうだった?
A. 筆者は「面白かったという感想そのものすらネタバレになる」と考えている。
それでも述べると「とんでもなく面白く、とんでもなく疲れる、魂すら吸われそうな禍々しい傑作」とでも表現しようか。本作を突き動かすのは「未知」。「何が起こるのか」「どうなるのか」「どういう世界なのか」「あいつの正体はなんだ」。ずっと本作には未知がつきまとい、そしてそうした未知への回答が現れ、あるいはさらなる未知が生まれる。「未知のループ」が秀でており、かつその未知を埋める奇妙なキャラたちや熱いバトルが「未知」への誘いに没入させてくれる。

とにかく本作でしか味わえない体験が詰まっている。昨今においてゲームは作りやすくなったことで均質化しており、なんとなく見たことあるゲームが多くなり、ユニークなゲームというものが少なくなっている。そんな中で、本作は狂った作りになっていて際立っており、開発陣たちが本作を傑作と呼ぶだけのことはある。
とにかく「未知≒本作について知らない状態であること」が重要なのである。だからこそ「何の情報も得ずにプレイしてほしい」と強調している。いろいろな驚きがあり、それこそが本作における体験の魅力のひとつ。ぜひプレイしてみてほしい。そしていろんなショックを受けてほしい。ショックですらも、本作のかけがえのない体験なのだから。
『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』はPC(Steam)およびNintendo Switch向けに4月24日発売予定だ。