Steamにて“製品版と同じ内容のデモ版”がやたらあると注目を集める。なぜそうした特殊なデモ版が存在するのか

一部のゲームでは製品版と同じ内容のデモ版が配信されているという。Steamおよび非公式データベースSteamDBの調査により、「製品版と同じ内容を無制限にプレイできるデモ版」がいくつもあると報告されている。

Steamにて「製品版と同じ内容のデモ版」が配信されているゲームがいくつも存在することが話題になっている。該当ゲームの開発者の一人は、趣味としてゲームを作っているため、製品版は実質的に寄付として用意していると回答。その他のゲームにも、さまざまな理由があるようだ。

Steamでは開発者がゲームのデモ版(体験版)を配信可能だ。2024年にはレビュー可能な「デモ版専用のストアページ」も用意できるようになった(関連記事)。ユーザーからのフィードバックなどにより、作品によってはデモ版時点でアップデートされて、内容が拡張される場合も。とはいえデモ版でプレイできるのはゲーム序盤のみの作品が一般的だろう。

しかし、一部のゲームでは製品版と同じ内容のデモ版が配信されているという。海外掲示板Redditにて、Steamおよび非公式データベースSteamDBの調査により、「製品版と同じ内容を無制限にプレイできるデモ版」がいくつもあると報告されている。報告では該当タイトルがリストアップされており、25本のゲームのほか、個人デベロッパーHijong Park氏が配信しているすべてのゲームが対象のようだ。

該当ゲームのストアページにアクセスすると、デモ版にはFree、製品版にはSteam Editionと表記されているものが多くみられる。製品版は税込120円など低価格のものが多いようだ。なおSteam仕様としてデモ版は、Steam実績、Steamトレーディングカードなどに非対応。レビューもできない。とはいえ上述した作品のゲームプレイやボリュームは製品版とまったく同じで無制限にプレイ可能だという。製品版を有料販売しているにもかかわらず、なぜ太っ腹なデモ版が用意されているのだろうか。

その理由について、上述の「すべてのゲームにおいてデモ版を製品版と同じ内容で配信している」Hijong Park氏がスレッドに回答を寄せている。Hijong Park氏は純粋に趣味でゲームを開発しており、インディーゲーム配信サイトitch.ioにてすべて無料で公開中だという。そうした中で、パブリッシャーがSteamでのリリースをサポートしてくれたとのこと。しかし、趣味として作った作品を有料販売する価値はないという思いから、製品版と同じ内容をデモ版として公開しているという。有料の製品版は実質的に寄付であり、小さな特典としてSteam実績が解禁されるようだ。上述のFree/Steam Editionと表記されている低価格作品には、同様の思いがあるのだろう。

一方、リストアップされた作品の中にはFree/Steam Editionという表記がなく、製品版が1000円以上で販売されている作品もある。一見しただけでは一般的な序盤のみのデモ版として配信されているように見受けられるだろう。これらの作品にはそれぞれ異なる理由があるようだ。

たとえば、『ΔV:土星の環(ΔV: Rings of Saturn)』は、2022年3月3日にデモ版を製品版と同じ内容にしたことを発表。同年2月にウクライナ侵攻が開始されたばかりであり、本作を購入する代わりに、大切なことや困っている人にお金を使ってほしいと訴えている。そのほか、『StarMade』はストアページにて、早期アクセス終了までは製品版と同じ内容をデモ版として配信していることが明記されている。より多くのテスターやフィードバックがほしいとのことだ。また『ComPressure』は売上1000本突破によりデモ版を製品版と同じ内容にしたことを発表。本作に興味をもったプログラマーと繋がりたいという思いがあるようで、ゲーム全体のソースコードも公開している。

2024年には約1万9000本ものゲームがリリースされるなど作品数が年々増加しているSteam(関連記事)。また、昨今は開発エンジンの発展などにより、個人デベロッパーの参入も増え続けている。それだけに開発者の考えも多種多様だ。今回、「製品版と同じ内容のデモ版」を配信している開発者にも異なる理由があることが判明したかたち。それぞれの開発者の思いに寄り添って、まずは「製品版と同じ内容のデモ版」をプレイしてみるのはいかがだろうか。

Haruki Maeda
Haruki Maeda

3DアクションRPGと犬をこよなく愛するPCゲーマー。『フォールガイズ』のようなわちゃわちゃ系も大好きです。

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