Steam超リアル物理演算ドライブシム『BeamNG.drive』は、「配信開始からもうすぐ10周年」なのにプレイヤーが増え続けている。こだわりパワー
デベロッパーのBeamNGが早期アクセスとして配信中のドライブシミュレーション『BeamNG.drive』が、間もなくリリース10周年を迎える。配信開始された2015年5月30日から約10年もの間、本作が継続してじわじわとプレイヤー人口を増やし続けてきたその背景には、本作独特の魅力と開発姿勢があると見られる。
『BeamNG.drive』はドライブシミュレーションゲームだ。多種多様な車両から好きなものを選び、熱帯のジャングルや都会の大通りなどさまざまなコースを自由に走ることができる。一連のミッションからなるキャンペーンモードやタイムアタックアタックモード、荷物の配達や警察の追跡を振り切るといった個別のシナリオ、世界を自由に走るだけのフリーロームモードも存在する。
以上の要素からは、基本的にはそこまで特殊ではないドライブゲームに思える。しかし『BeamNG.drive』はその中核であるBeamNG物理エンジンによって特徴づけられている。
開発者が「ゲーム史上もっとも精巧かつ本物」と語るこの物理エンジンは、車両を構成する一つ一つの要素をすべてリアルタイムで秒間2000回もの頻度で計算。その結果、運転時のリアルな感触はもちろん、高速道路での接触事故も、崖からの転落も、車体がひしゃげ、パーツが吹き飛んでいくようなリアルな破壊として体験できるのだ。
このリアルさを支えているのはBeamNG物理エンジンの軟体物理シミュレーションである。多くのゲームではシミュレーションの難しさから、外部からの物理的な力でも変形しない「剛体」として車両をシミュレートする。しかしBeamNGは車両を、質量を持つ仮想的な点「ノード」と、ノード同士をつなぐ線「ビーム」からなるシンプルな構造物とすることで、変形可能な「軟体」としてシミュレートしているのだ。本作ではノード一つ一つの「重さ」や、ビームの「変形に必要な力」「もとの形に戻る力」など複数のパラメータを調整。緻密なチューニングによりリアルな振る舞いを再現しているわけだ。
そうした本作特有の体験のためか『BeamNG.drive』は早期アクセス配信開始から約10年にわたり、根強くプレイヤー数を増やし続けてきた。2015年の早期アクセス配信開始時にはピーク時でも数百人程度だったSteam同時接続プレイヤー数は年々増加。リリースから約6年後の2021年3月には最大1万人を突破し、最新アップデートとなる2024年12月のv0.34リリース直後にはピーク時3万人に迫る勢いを見せている(SteamDB)。長きにわたる早期アクセス配信を経て、下火になるどころかさらなる成長を見せているわけだ。
コンスタントかつニッチなアップデート内容もファンベースの維持・拡大に寄与しているだろう。アップデート内容としては「新しいタイヤホイールを実装」「タイヤの回転や車体の空力抵抗を考慮してタイヤのシミュレーションを改善した」などマニアックなものも。中には、「ドアなどの開閉音をリアルなものにするために、開閉部位の材質・サイズ・年数を考慮するのはもちろんのこと、プレイヤーからの距離、方向、プレイヤーの位置は車内か車外か、車体周辺の環境はどうなっているかなどをパラメータとして参照して音に変化をつけるようにした」というこだわり抜いた内容もある。
本作は公式にModをサポートしており、Mod文化も盛ん。公式サイトでは多数のModが入手可能だ。ユーザー制作による車両、シナリオ、マップといったものから、UIをカスタムしたり、各国のナンバープレートをつけたりなど、ありとあらゆるModが揃っている。Modを作るためのサポートツールやドキュメントも豊富で、最新アップデートでもマップエディターの改善が一つの目玉となっていた。「選択した範囲に木々を生やす」「岩を配置する」などバイオーム構築も可能な高度なマップエディターとなっている。
また車両Modとしては、日本でもよく目にする軽トラや、知る人ぞ知るヴィンテージカー、海外でしか見かけない二階建てバスなど、驚くほど豊かなラインナップが並んでいる。マップModには現実世界の場所を再現したものなどのほかに、車両をジャンプさせることに特化したマップや、純粋に車両の破壊を楽しむマップまでバラエティー豊かに存在している。
「二階建てバスを最高速度で崖からジャンプさせたらどうなるのか」など、ユーザーがイマジネーションから遊びを拡張できる仕組みも、長期にわたるファンベース拡大の一因になっているのだろう。リアルなドライブ体験と現実離れしたシチュエーションをセットにして楽しませてくれる本作は、ドライブゲームのなかでも特有の地位を確立しているといえるだろう。もうすぐ配信10周年を迎える本作の、今後の躍進にも期待したい。
『BeamNG.drive』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)にて早期アクセス配信中。価格はSteamでは2800円、Epic Games Storeでは2480円となっている(いずれも税込)。