『VRChat』の「24時間誰もいなくなると消滅するワールド」、2年間生き延びる。世界の誰かが繋いできたバトン
『VRChat』内にある「This world will be deleted in 24 Hours」というワールドが2月5日、2周年の節目を迎えることになった。毎日に誰かがワールド内のボタンを押し続けないと、消えてしまうワールドだ。
『VRChat』は基本プレイ無料で提供されているソーシャルVRと呼ばれるジャンルのアプリだ。ユーザーは様々な仮想空間「ワールド」の中でオリジナルのアバターを操作し、世界中のユーザーと交流することができる。ちなみにVR専用アプリではなく一般的なPCディスプレイでもプレイ可能だ。ユーザーは自分の操るアバターを自由にデザインできるだけでなく、ワールド自体も自由に作成してサーバー上で公開できるのも特徴。世界的に人気のあるアプリであり、日本でもコミュニティが根付いている。
近年でもその人気の勢いは増すばかりで、コロナ禍での巣ごもり需要もあり直近ではプラットフォーム合計で同時接続者数10万人超えを達成するほどの成長を見せている。Steamでの早期アクセス開始から3年ほどは平均1万人程度であった同時接続者数も連日3万人~5万人を維持。新年祝いに集ったからか、2025年の元旦には本作Steam版史上最大となる6万6824人を記録した(SteamDB)。
その『VRChat』で2023年の2月5日にCrazium氏が公開した「This world will be deleted in 24 Hours」というワールドが、本日2周年を迎えた。その名前の通り24時間でサーバーから自動的に消滅してしまうという極めて実験的なワールドだ。
ワールドに入るとすぐに立っている巨大なディスプレイには、ワールド消滅までのタイムリミットがリアルタイムで表示されており、そのすぐ手前には赤いボタンが置かれている。そのボタンを押すとカウントダウンがリセットされてワールドが維持される仕組みだ。
ボタンを押してもワールドの寿命が伸びる以外の見返りはなく、押すかどうかは完全にユーザーの自由意志に委ねられている。しかもワールドの寿命は24時間以上にはならないため、その日すでに別の誰かがすでに押していれば、ほぼ無駄足になる日も生じうる。
そんな本ワールドが2年間存続し続けている。つまり2年もの間、世界中の誰かしらが何の見返りも求めずに、このワールドを消さないようにわざわざボタンを押しに来ていたということだ。
なおこのワールドにあるのはディスプレイとボタンだけではない。周囲の白樺の森はあちこちで倒れて時間の流れを感じさせ、焚き火の跡や手紙はかつていた誰かを思い起こさせる。無人の遊具は今でも遊ぶ何者かを待っているようだ。ワールドすべてが「人々に置いていかれ忘れ去られる物」というテーマで統一されていて来訪者に強烈なノスタルジーを抱かせてくれる。そのノスタルジーに心動かされた多くの人々がこのワールドを消すまいと現在まで見えないバトンをつないできたのだろう。
ちなみに本ワールドは2023年のレインダンス国際映画祭において、XR作品を称える「Raindance Immersive」にノミネートされていた。この際にはリセットボタンが機能しなくなる本ワールドの特別バージョンが1日限定で公開。本ワールドの最期の瞬間が披露されていた。とはいえ本ワールドに最期の瞬間が訪れたのはその特別バージョンだけだ。今後もボタンが機能し続けるかぎり、「This world will be deleted in 24 Hours」は消えずに残っていくかもしれない。
『VRChat』はOculus StoreおよびPC(Steam)で早期アクセス中。Android Storeではベータ版が提供されており、すべてのプラットフォームでVRの有無にかかわらず基本プレイ無料となっている。