『アークナイツ:エンドフィールド』開発陣インタビュー。いま明かされる同作のねらい、『アークナイツ』から継承されること、前回テストから大幅刷新した理由
HypergryphおよびGRYPHLINEは昨年12月14日、『アークナイツ:エンドフィールド』のベータテスト実施を発表するとともに、新たなPVとプレイ映像を公開した(関連記事)。また同ベータテストは本日1月17日12時に開始予定。本稿では、中国語メディアGcoresに掲載されたベータテスト版先行プレイレポートと開発陣へのインタビューを、許諾を得た上で日本語に翻訳してお届けする。
先月12月14日、1年ぶりに『アークナイツ:エンドフィールド』の新しいPVが公開され、2025年1月中旬にベータテストを実施することも発表となった。さらに翌日の12月15日には、ベータテスト版のゲームプレイ映像を収めた15分間の動画も公開された。その映像から、前回のテスト時と比べて本作が大幅にリニューアルされていることがわかる。また、動画に寄せられた多数のコメントからも、プレイヤーの期待と関心の高さが窺える。
このたび、GcoresはHypergryphからのお誘いで、本作の最新バージョンを数時間試遊し、さらにプロデューサーである鐘祺翔氏、黄一峰氏と直接話をする機会も得ることができたとのこと。
『アークナイツ:エンドフィールド』(以下、エンドフィールド)の最新バージョンはどういう内容なのか?前回行われたテクニカルテスト版とどのように異なるのか? Hypergryphがプレイヤーに届けたい作品とは?などなど、プレイヤーが関心を寄せているさまざまな点についてたっぷりと訊くことができたので、プレイレポと合わせてお届けする。
まずは自分自身が満足できるものを作り、その楽しさをプレイヤーに届けたい
まず、今回試遊した本作の最新版は、テクニカルテスト版とはまったく異なるものとなっていた。バトルシステムの大幅な調整に加え、多数のカットシーンと演出、新しい要素とマップが追加された。さらにアートスタイルと「集成工業」システムはかなりブラッシュアップされている。1年という時間をかけて、本作は完全にリニューアルされていた。
今回筆者の体験したバトルシステムは、より完成度の高いパーティバトル型アクションRPGだった。以下に、主な変更点を列挙する。
・敵味方全てのキャラモーションが大幅に改善され、戦闘時の操作感もアップ。戦闘中のカメラワークも進化
・スキルシステムも一新。今回のバージョンでは、スキルを発動するときに手動でターゲットを選ぶ必要がなくなり、パーティ全体でスキル発動のポイントを共有する形になっている。スキルポイントは時間経過や戦闘中の行動によって増加し、プレイヤーは戦闘の状況に応じて戦略を立て、どのキャラのスキルを使うかを決める必要がある
・新システム「連携技」の追加。発動条件を満たすことで、対応するキャラが連携技を使えるようになる。発動条件はキャラごとに異なり、たとえばプレイ中のキャラが重攻撃をする、敵が状態異常になる、複数の敵をブレイクするなどがある
・敵の攻撃を回避することが可能になった
・テクニカルテスト版にあった、ヘイト管理が必要なMMORPG寄りの仕様は削除または調整。パーティメンバーは敵と対峙したり、回避を使ったりすることで容易に敵を引き付けられるようになった などなど
新たなバトルシステムは、全体的に爽快感と高揚感がかなり増したものになっていると感じた。開発チームがパーティバトルの戦略性と「連携」にどれだけ力を入れているかが伝わってくる。筆者が一番驚いたことは、開発チームが既存のシステムを一旦なかったことにして、丸ごと作り直した勇気と発想力だ。この後のインタビューでは、鐘祺翔氏と黄一峰氏にバトルシステムの全体的な設計コンセプトについて訊いている。
本作のバトルシステムは「戦略重視のリアルタイムバトル」が設計コンセプトの中核をなしている。パーティ編成という戦闘外での戦略性に加え、戦闘中はスキルポイントの割り当て、スキル発動のタイミング、連携技の発動などを考えながら、戦略を立てる楽しみを存分に味わうことができる。
また、複数のキャラクターが一緒に戦闘に参加することは、本作の設計コンセプトの重要なポイントであると同時に、技術的に難しい点とも言える。パーティメンバーの思考や行動があまりに的確すぎると戦略性が薄まり、プレイヤーが戦略的な決定を行うための有用なフィードバックが不足しがちになる。逆にパーティメンバーが鈍すぎると、パーティバトルの楽しさや連携性が損なわれ、ユーザーのプレイ体験と没入感に悪影響を与えてしまうからだ。
――パーティメンバーについて教えて下さい。
黄一峰氏(以下、黄氏):
パーティメンバーについては、たとえば「プレイヤーの行動ルートを予測し、邪魔にならないように動けるか?」「複数のキャラが同時に探索や戦闘を行うとき、どうすればよりバランスが良い印象になるか?」「複数のキャラが一画面に存在するとき、視覚的に情報過多にならず、さらに個々の存在感が薄れないようにするにはどうすれば良いのか?」といった課題があります。
ここで一番難しいのは、いかにキャラの設定を損なうことなくプレイヤーや状況に合わせて自然な行動を取る、まるで本当に生きているかのような存在にするか。それと同時に、いかにプレイヤーの役に立つ仲間として作り上げるかということです。今回のベータテスト版では、パーティメンバーの行動パターンに多くの工夫を凝らしています。テスト参加プレイヤーの皆さまには、プレイの中でAIの挙動に関する工夫と改善を感じていただけることを願っています。また、今後さらなる機能強化を継続的に行う予定です。
Gcoresによる解説:
一人用ゲームの業界において、パーティバトルについては長い間議論されてきた。しかしこれまでの中国国内では、パーティバトル形式のゲーム需要が市場で十分に検証されていない。そのためか、同時期に発表されたゲームコンテンツでパーティバトルシステムを採用している作品はかなり少ない。今回の試遊を通じて、本作の製作陣は日々研究を重ねており、さらに開発チームとプランナーが密に連携し合ってより高い完成度を目指していると感じた。
一方、バトルシステムに合わせて、レベルデザインも進化を遂げていた。黄氏は次のように語る。
黄氏:
エンドフィールドの多くのエリアには、それぞれ独自のプレイ要素とビジュアルの魅力があります。全てのプレイ要素を一つの動画にまとめたら、きっと驚くような内容になると思います。我々はたくさんのダンジョンやテーマを用意しています。ランニングゲームやジャンプアクションなどの基本的なものに加えて、ユニークで不思議な謎解きなどもあります。
Gcoresによる解説:
本作において中核となるもう一つのシステムに「集成工業」がある。これは基地や工場の建築システムであり、ゲーム内の他のシステム同士を繋ぐものでもある。ベータテスト版では、このシステムが全体的にブラッシュアップされ、新しい内容も追加されている。まず、基本となる建築の操作方法が改善され、俯瞰視点でのクイック建築機能も充実した。これによりプレイヤーは、自分の基地をより見やすい視点で楽に建築できるようになった。
また、戦闘専用の施設が新しく追加され、それに合わせて拠点を防衛するシステムも追加されている。防衛では「タワー」が大きな役割を発揮する。基地の建設はキャラ育成や報酬に関係するだけでなく、バトル要素の一部にもなっているのだ。つまり、タワーディフェンスである。こう言い換えると、皆さんにも馴染み深いと思う。
さらに、「集成工業」システムを使えば、戦闘施設をマップ上に自由に設置し、効率よく敵を倒すこともできる。ただし、戦闘施設には設置数の上限があり、施設を増やせば消費電力もその分増加する。そのため、マップに大量の砲台を設置してその火力だけで敵を制圧することはできない。
――「集成工業」システムについて、ずっと疑問に思っていることが一つあります。マルチプラットフォーム対応の「アニメ調ゲーム」には、このゲームシステムは少し重すぎるのではないかということです。
鐘祺翔氏(以下、鐘氏)・黄氏:
今、業界ではアニメ調スマホゲームのプレイヤーは、ゲームシステムへの関心が薄れている傾向にあると言われています。しかしそれは、市場が長い時間をかけて作り上げた結果に過ぎず、プレイヤー自身が新しいゲームシステムを求めていない、もしくは拒否していることを意味しているわけではありません。より新鮮で面白いシステムを開発・設計していくことは、我々の原点とも言えます。これは『アークナイツ』から続けてきたことで、エンドフィールドでも同じです。「集成工業」システムはかなりの拡張性を備えており、今後ゲームシステムを進化させていく際の基盤になってくれると考えています。
先ほど「集成工業システムは少し重すぎないか?」という質問がありましたが、私はこのシステムに興味を持つプレイヤーはかなり多いと考えています。たとえば『Factorio』『Dyson Sphere Program』『Minecraft』などは非常に優れた作品であり、市場で高い評価を受けています。
肝心なのは、作品の作り込みが十分であるか、学習曲線が合理的であるかどうか、そしてプレイヤーがスムーズにゲームを楽しめるかどうかです。エンドフィールドにおいては今後もシステムの改善を続け、より多くのプレイヤーにこのシステムを面白いと感じていただきたいと思っています。まずは自分自身が満足できるものを作り、そしてその楽しさをプレイヤーの皆さまに届けたいと考えています。
前作『アークナイツ』の説得力をあらゆる面で引き継ぐ
Gcoresによる解説:
2D作品である『アークナイツ』では、プレイヤーがキャラクターとストーリーに強い関心を寄せている。それはあらゆる表現が一貫性と説得力を持って作中の要素同士を結びつけ、プレイヤーの没入感を高めるからだ。しかし、3D作品で同じ完成度を保ちながら説得力のある世界を築くには、レンダリング、キャラモデルや設定、グラフィック、キャラの行動パターンなど、さまざまな面で工夫が必要となる。
本作は、グラフィック面ではHypergryphのこれまでのスタイルと高いクオリティを引き継いでいる。同チームは3Dでの経験はまだ少ないものの、昨年のテクニカルテスト段階で、すでにプレイヤーの期待を超える成果を出している。キャラモデルのディテール、3D表現、そして全体的なアートスタイルについては多くのプレイヤーから称賛された。同時に、まだ改善の余地があると考えるプレイヤーもいる。
すでに公開されたベータテスト版のゲームプレイ映像を見ると、テクニカルテスト版に比べて3Dグラフィックが目に見えて大きく進化している。では、エンドフィールドの開発チームはどのような方法でHypergryphのアートクオリティを3Dで発揮したのだろう。そのためにどのような努力を重ねたのか。そこが筆者の特に気になっていた点であり、今回のインタビューの焦点でもある。
「アニメ調ゲーム」にとって、「イラスト」のようなキャラクターをいかにリアルな世界に自然に落とし込むかは、大きな課題だ。3Dアニメ調ゲーム作品のほとんどにとって、PBR(物理ベースの写実的レンダリング)とNPR(非写実的レンダリング)の使い分けやバランスは常に重要な議題だ。
フィールドとキャラを調和させるために、本作の開発チームもさまざまな工夫をしている。鐘氏は、ゲーム中に出てくるコンクリート壁を例に挙げ説明した。その質感や、汚れ、色味などは、現実にあるコンクリートの壁と完全に同じというわけではない。ただしそれらは実際に、反復評価を繰り返しながら、慎重に調整されてきたものだ。プレイヤーが感じる違和感を減らすため、非常に多くの緻密な背景美術の作業が必要となる。それは、物理空間としての説得力を保つと同時に、プレイヤーに想像する余地を与えるためだ。鐘祺翔氏は次のようにコメントしている。
鐘氏:
『アークナイツ:エンドフィールド』では、現実とファンタジーの融合の可能性について追求しています。3D技術を磨き続けることで、その目標を良い形で実現できると考えています。
『アークナイツ』のアートワークがプレイヤーの皆さまからご好評いただいているので、皆さまに愛されている要素をエンドフィールドに引き継ぎ、シリーズとしての統一感も高めようと尽力しています。エンドフィールドのアートデザインは質感を重視した「リアルなアニメ調」で、『アークナイツ』独特のスタイルを今後も取り入れていきます。
しかし、リアルの追求には相応の代償があります。特に3Dにおいては、さまざまな要素を考慮しなければなりません。2Dイラストにおけるキャラの特徴を違和感なく3D画面で表現するために、いろいろと工夫をしました。『アークナイツ』らしさを保ちながら、3D画面に落とし込む必要があるからです。
たとえばエンドフィールドのキャラデザインでは、陣営と社会的地位の違いをより前面に押し出すようにいます。服装や武器のデザインにも、リアル感がある職業の要素を取り入れました。たとえば、テクニカルテスト版ではペリカの武器は普通の長い杖でしたが、現在では羽根ペンの形をした短い杖へと変更されています。これは、術師の武器調整という理由もありますが、何より主人公の助手という役割を果たすペリカの役割をより際立てて表現したいと考えた結果です。今の短い杖は文書にサインするペンとして使用するほか、仮想タッチスクリーンを出してタブレットとして使うこともできるなど、細かいデザインが施されています。
Gcoresによる解説:
キャラデザインへの言及があったので、あわせてキャラモデルをどのようなアプローチにしたのかについても尋ねてみた。その答えは「3Dでも『アークナイツ』の優しさと重厚さを兼ね備えたスタイルを維持したい」というものだった。この目標ははじめから明確であり、今も『アークナイツ』が多くのプレイヤーに愛される理由でもある。
本作のキャラデザインは、『アークナイツ』のスタイルを引き継いでいる。黒、白、灰色のバランスが考えられた中に鮮やかな色を追加。異なる材質を組み合わせることによって「統一感」あるいは「陣営」を表現すると同時に、キャラの個性も強調している。3D画面でこういったデザインをどう表現するかについて、本作の開発チームは研究を重ね、答えを見出したようだ。たとえば、3Dモデルにおいてアニメ風の表現を動的に再現するという技術は、現在のエンドフィールド開発チームの技術革新と得意分野の一つとなっている。
鐘氏:
たとえばあるキャラでは、あえて手描きイラストならではの描線を再現しました。しかしそれは固定のものではなく、光や視点の位置次第で常に変化します。こうしてキャラのリアル感を強めたうえで、『アークナイツ』らしいイラストの質感に近づけています。
フィールドとの調和、そして世界観の表現を考慮して、エンドフィールドに登場するキャラの服装や武器のデザイン、レンダリングスタイルでは、一定のリアリティを維持するようにしています。現在リリースされている3Dアニメ調ゲームの中でも、もっともリアルな作品の一つと言えるのではないでしょうか。私はそれを「写実主義のアニメ調」スタイルと呼んでいます。私たちは自然界の寒色と、リアルな素材のテクスチャを活用しています。また、ファッションとアクセサリーのデザインにおいては、実用的かつポストアポカリプスの雰囲気を目指しています。
Gcoresによる解説:
PVからゲームプレイ映像に至るまで、本作の服装デザインはリアルさが重視されているように思う。現実的な服装の仕立てを前提としながら、近未来風のエッセンスを伝統的な要素の代わりに盛りこんだ結果、独特のスタイルが生み出されているのだ。たとえば、ザイヒの華やかな洋風の衣装には大量のバックルやハイテク素材と模様などが盛り込まれ、近代的かつSFのような特徴を持っている。また、チェン・センユーの中国風の要素を取り入れた服装も同様で、細かいところに金属素材やPVC素材の装飾が施されている。
今回の試遊では、キャラの3Dモデルだけでなく、インパクトのあるフィールドアートも強く印象に残った。特に、ベータテスト版で新たに追加された、エンドフィールド工業の基地「帝江号」とタロⅡの新しいマップ「宏山」はとても印象深い。
帝江号は低軌道の宇宙ステーション(溢れるロマン!)で、エンドフィールド工業の拠点でもある。プレイヤーはここで、戦闘シミュレーションや育成素材の生産などを行うことができる。また、オペレーターに話しかけたり、従業員たちのおしゃべりに混ざったり、自由に歩き回ることもできる。
宏山は中国風のフィールドだが、一般的なアニメ調ゲームで見られる中国風のイメージとは異なり、「中国風ハイテク工業フィールド」となっている。現実世界から日常的に見られるイメージを抽出したうえで、『アークナイツ』が5年間維持してきた「SF風+少々のファンタジー要素+少しの武侠」を組み合わせることで、独自の魅力を持ったフィールドが形作られている。『アークナイツ』プレイヤーの1人として、このフィールドに入った瞬間、2024年の春節イベント「懐黍離」に登場した大荒城がついに3Dとなって目の前に現れたかのような気持ちになった。
フィールドアート、特に宏山について、鐘氏と黄氏に語ってもらった。
鐘氏・黄氏:
説得力のあるフィールドを作りたいんです。そのため、リアルな雰囲気を重視したフィールドを目指しています。たとえばヴィルヌーヴ監督の映画「ボーダーライン」のような、一見静かな中に、実は殺気が潜むような感じとか。それから、中国の優れた武侠映画の視覚的な要素も参考にしました。「グリーン・デスティニー」や「LOVERS」などです。
フィールドデザインにおいては、自然のものと人工物を区別して表現しました。自然のものはできるだけ現実的な地形を再現しています。たとえば光の当たり方や道の比率とか、植物の高さなどは、できるだけ現実に近くなるよう努めました。一方、エンドフィールド基地や、敵の拠点などの人工物の方は、シンプルなデザインにシンボルマークなどの象徴的な要素を加えて、近未来風に仕上げてみました。その上で、リアルなスタイルの中に『アークナイツ』のファンタジー要素も加えています。
2章の宏山は中国風のフィールドですが、中国古代の設定をそのまま使ったわけではありません。中国の伝統的な建築の特徴を保ちつつ、全体的なスタイルを現代風にアレンジしました。もし古代の建築物やその建築手法が現在まで存在し、進化し続けたとしたらどうなるだろうという想像をもとにデザインしています。古風すぎるとエンドフィールドの世界観に合わないため、少し現代的な要素を取り入れました。
また、実際にプレイしていただければわかるように、宏山では普段よく見かけるような漢字の「スローガン」がたくさん見られます。馴染み深い感じがしますよね。私は中国のデベロッパーとして、漢字というのはただの文字というよりは、中国文化の真髄だと考えています。たとえ形が変化したとしても、本質が変わることはありません。中国人なら漢字だと一目でわかりますし、強い視覚的なシンボルとして使うのも、現代風に仕上げる手法の一つです。正直に言うと『アークナイツ』でも同じような手法を使っていまして、考え方を受け継ぎ、さらに発展させたと言えるかもしれません。
しかし、もっとも重要なことは、キャラがどんなフィールドにいたとしても、プレイヤーにとって違和感なく感じられるということです。
細部にわたって「リアル」を感じてもらいたい
――前回のテクニカルテスト版と今回のベータテスト版を試遊して、『アークナイツ:エンドフィールド』は技術的にとても大きな進化を遂げていると感じます。Hypergryph初の大型3Dプロジェクトとして、かなり充実かつ安定したゲームプレイ体験をプレイヤーに提供しています。
『アークナイツ:エンドフィールド』の開発に使用したゲームエンジンは何なのでしょうか? また、技術面において、どのような難関を突破しましたか?
黄氏:
より充実した内容を提供できるように、Unityを大きくカスタマイズしました。レンダリングの基礎構成とレンダリングパイプラインは独自に開発したものを使っています。
Unityに関しては、基本構成、エディター、ツールを残し、内部のコアコンポーネントや他の要素はすべて再構築しました。とくにグラフィックレンダリング部分は全面的に改造しました。ゲームエンジンの基礎構成はデータ指向(ECS)の方式を使っているので、より効率的にゲームコンポーネントを処理できます。加えて、本作の厳しいパフォーマンス要件を満たすため、グラフィックスAPIも全面的に改良しました。
もう一つ、大きく改善した点はマップのシームレス化を実現できたことです。去年のテクニカルテスト版では、「四号谷地」のステージを切り替えるたびにロードの時間が必要でした。ベータテスト版では、ローディングなしでシームレスにマップを切り替えることができます。これを実現するには、フィールド開発における基本技術、ツールチェーン、開発フローを再構築しなければなりませんでした。これらの革新により、読み込み効率とフィールドでの全体的なパフォーマンスが大幅に改善されました。現在、「四号谷地」全体がシームレスな「超巨大箱庭」マップとなり、プレイヤーはロードの待ち時間なく、より自由に探索を行えるようになっています。
そのほか、複数プラットフォーム対応のシェーディング技術も独自に開発しました。一般的には遠景になると動的な影を表現できなくなることが多いですが、エンドフィールドでは遠景、近景、さらには超遠景まで、全てのフィールドにおいて動的な影が表現されています。また、工場建築の部分においても自社の技術を採用しました。ECSを基盤としたデータ処理およびレンダリング技術を使い、多くの最適化と改造を行って、動的な光と影の表現を実現することができました。
効果音の制作では、特別にFoley(フォーリーサウンド)チームを作りました。実物を使って効果音を制作し、リアリティや臨場感を再現しています。革の摩擦、金属の衝突、布が風になびく音――こういった効果音を意図なくただ使うのではなく、キャラの動きや、その時の感情と環境に応じて、動的に組み合わせたのです。プレイヤーがそういうディテールからもリアリティを感じられるように工夫しています。
自分だけの特別なものを創造する
――最後に一つ、よく訊かれそうな質問ですが、理想的な『アークナイツ:エンドフィールド』制作チームとは、どのようなメンバーで構成されたものでしょうか?
鐘氏・黄氏:
普通の、あるいは他の人がすでに実現済みのものを作るのであれば、平均的な人か、まともな経験者がいれば十分です。
しかし、ここまで開発を続けてきて、何か特別なものを作りたいなら、作り手も特別な人でなければならないと思いました。自分の意見をしっかり持ち、ある意味で「芯が強い」存在であることが重要です。今進んでいる方向が正しいか間違っているかを教えてくれる人はいませんから、自分が選んだ道に対して、強い信念を持つ必要があります。
プレイヤーも私たちと同じく、特別で新しいものを求めていると思います。その点で、我々製作チームとプレイヤーの求めるものはとても近いです。どちらも、これまでに慣れ親しんだゲームの再現を求める一方で、これまでに存在しなかった特別なゲームをプレイしたいと思っている。これが、私たちが工場シミュレーション要素をRPGと融合させ、革新的な作品を作ろうと考えた動機でもあります。
こんにち、革新というのは、クリエイターが自分の作品のために追求するものだけではありません。今、単純に基準を高めていくだけではプレイヤーが満足できる作品を作ることはできなくなっています。そのため、何か「自分だけの特別なもの」を創り出すことが、望むと望まざるにかかわらず、今の時代を生き抜いて成功するために必要なのです。
Gcoresによる解説:
この「現実的な回答」は一見抽象的に思えるかもしれない。しかし、よくよく考えてみると、具体的かつ堅実に感じられる。
筆者は「特別」を求めているプロデューサーの姿を見て、さまざまなことを思い出した。「集成工業」という深みがあり「ハマる」要素のあるシステムが「アニメ調ゲーム」に現れた時の驚きや、ベータテスト版を試遊して、テクニカルテスト版と全く異なる印象を受け、進化や変革を実感したこと――困難な道のりでも、正しいことを貫き通す。それがこのチームから感じた「開拓精神」の正体なのかもしれない。
いつの時代でも、新たな道を切り拓くのはとても困難だ。手本がなく、道を示してくれる指導者もいないからだ。たくさんの失敗を繰り返し、躓いてしまうこともたびたびあるだろう。
しかし、裏を返せば、茨の道をくぐり抜けた先には広大な道と豊かな土地が広がっているとも言える。それは一つの作品を完成したという達成感であり、「なぜゲームを作るのか」の答えでもある。また、プレイヤーの期待に応え、彼らの想像を超えるプレイ体験を提供するということでもある。これらすべてを達成することそれ自体が、ゲーム開発のご褒美ともなるのだ。
最後に、プロデューサーである両氏から以下のようなコメントをいただいた。
鐘氏・黄氏:
自分自身が満足でき、さらにプレイヤーたちにも認められる、市場で生き残れる作品を創るのはとても難しいことです。
『アークナイツ:エンドフィールド』のプロジェクトを立ち上げたとき、その難しさについて覚悟はできていました。しかし、実際に取りかかってみると、そのプレッシャーと重圧は徐々に特殊な何か――新たなる生命を誕生させるときの原動力と情熱のようなものへと変わっていきました。どんな困難が待ち構えていようと、好きなことに全力で打ち込めることは、想像しうる中で最高の価値ある経験だと思います。
近日開始されるベータテストを通して、プレイヤーの皆さまからいただくご意見とアドバイスに期待しています。いただいたフィードバックは、今後の参考にさせていただきたいと思っています。『アークナイツ』の旅の新たな1ページに期待し、一緒に見届けましょう。
『アークナイツ:エンドフィールド』のベータテストは、PC向けに2025年1月17日12時
より開始予定。詳細な情報は、公式Xアカウントをフォローしてチェックしてほしい。また本作は、PlayStation 5/PC/iOS/Android向けにリリース予定だ。