ADV『アクアリウムは踊らない』RTAが“公開デバッグ作業”として盛り上がる。「年間パスポート」が猛威を振るい、作者は年末年始はデバッグへ

『アクアリウムは踊らない』は、橙々氏が手がけたホラーゲームだ。対応プラットフォームは、PC(Steam/BOOTH/Policy/ふりーむ!/DLsite)。価格は無料。RTAによって同作の”公開デバッグ”が盛り上がった。

「RTA in Japan Winter 2024」にて12月28日、『アクアリウムは踊らない』のRTAがおこなわれた。「[TrueEnding(END1)],Glitched」というレギュレーションのもと、RTAプレイヤーで同作RTAのワールドレコードを保持するえふしょー氏がプレイ。SNSでは本RTAが“公開デバッグ作業”であると話題になっている。

『アクアリウムは踊らない』は、橙々氏が手がけたホラーゲームだ。対応プラットフォームは、PC(Steam/BOOTH/Policy/ふりーむ!/DLsite)。価格は無料。主人公のスーズは、ある日訪れた水族館で恐怖の世界に迷い込んでしまう。迷い込んだ世界には、人間と生物が合わさったような見た目の怪物であるクリーピーが存在していた。スーズはクリーピーの脅威から逃れながらいなくなった友人を探し、謎を解きつつ水族館からの脱出を目指す。なお、本作はマルチエンディングが採用されている。

今回の『アクアリウムは踊らない』のRTAは、「[TrueEnding(END1)],Glitched」というレギュレーションでおこなわれた。本レギュレーションは、トゥルーエンドにあたるエンディングを目指すというものであり、Glitchedとはグリッチ利用可を意味する。つまりバグを利用した攻略でも良いので、可能な限り早くエンディングを目指すというものだ。

本RTA当日、橙々氏は自身のXアカウントにて、自作ゲームのどのバグが暴かれ、RTAに利用されるのかと戦々恐々している様子のポストを投稿。一方、その投稿に対し、本RTAで解説を務めたあんこつぶつぶ氏は、「全部解説するので任せてください」と回答するやりとりがおこなわれた。

そんなやりとりもあってか、SNSでは「公開デバッグ」がトレンド入りする自体に。そして、約8万7000人が見守る中、12月28日22時15分頃より走者えふしょー氏、解説あんこつぶつぶ氏、零月氏ら3人の布陣による『アクアリウムは踊らない』のRTAがスタートした。

えふしょー氏は、攻略上必須ではないイベントをスキップし、主人公のスーズをどんどん先へと進めていく。その間、あんこつぶつぶ氏、零月氏からは、ゲームの細かな解説やテストプレイ時のエピソード、さらには本作制作の小ネタなどが語られた。

そして、開始から約9分20秒後、「ビアンカ水族館の年間パスポート」を入手。そして、16分45秒頃、「チョウチンアンコウの鍵」を入手する直前、何もない場所で年間パスポートを使用するという、一見RTAにとっては無駄に思える怪しげな動きを見せた。この年間パスポートこそ、今回のRTAのキーアイテムなのだ。

零月氏の解説によると、年間パスポートを使うと数秒間経った後に、年間パスポートのスチルが表示される。このスチルが表示されるまでの間の時間、床のイベントマスの判定を無視しながら歩くことができるという。つまり、イベントが発生する床の場所を覚えておき、その床を通過する直前に年間パスポートを使用することで、イベントを発生させずに先に進んでいくことができるわけである。

ほかにも、通れない床の判定を無視して通るなど、えふしょー氏は年間パスポートを悪用しながら水族館内を進んでいく。即死ギミックであるリュウグウノツカイの場面も、年間パスポートがもたらす無敵時間を駆使して強行突破するテクニックを見せ、会場から拍手が巻き起こっていた。

そんなさまざまなバグや、本作のゲーム内外の小ネタを紹介しつつ、えふしょー氏が鮮やかな操作で時間を切り詰め、『アクアリウムは踊らない』RTAは1時間9分1秒の記録で完走された。完走したえふしょー氏によると、RTAでは見せなかったバグがまだまだあるとのことで、もし次の機会があるならそれらも紹介したいそうだ。『アクアリウムは踊らない』RTAは幕を閉じた。一方、RTAを見守っていた橙々氏は、Xにて実況しつつクリアまで見届けつつ、作者自身も気づいていないバグや誤植を公開されて驚いていた。また年末年始はデバッグをすると楽しげにコメントをしてる。

『アクアリウムは踊らない』は、今回のRTAではバグ部分が目立ったものの、ストーリーの完成度からユーザーに愛され、45万ダウンロードを達成した人気タイトルである。Steamストアページでは、616件のすべてのレビュー中、97%の好評を得て、「圧倒的に好評」のステータスを獲得している。えふしょー氏らも、初見プレイ時にはエンディングに感動したという。本RTAで興味をもった人は、無料で配布されているのでプレイしてみるといいだろう。

また、本作はコミカライズやグッズ化、ドラマCD化など、さまざまな展開がおこなわれている。本日12月29日には橙々氏が「コミックマーケット105」へ個人サークルとして参加するほか、フロンティアワークスの企業ブースでも、同作のグッズが頒布される。興味がある人は足を運んでみてほしい。なお、RTAにて活躍した「ビアンカ水族館の年間パスポート」も、えふしょー氏のRTA終了後より橙々氏のBOOTHにて再販が始まっている。公開デバッグ後のコミケというなかなかハードな日程となっているので、橙々氏の無事を祈りたいところだ。

アクアリウムは踊らない』は、PC(Steam/BOOTH/Policy/ふりーむ!/DLsite)向けに配信中。

Koutaro Sato
Koutaro Sato

何でも遊びますがメトロイドヴァニアとトレハン、ゲーム内の釣りが大好物。クリエイターやプレイヤーの人となりと、彼らが生み出す盛り上がりが大好きです。

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