PSVRは汎用ヘッドマウントディスプレイになり得るか?Wii U上の『スターブレード』を通じて考える

2016年10月13日、PS4向けVRヘッドセット「PlayStation VR(以下、PSVR)」が発売された。本稿ではPSVRのHDMI対応ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)としての可能性について取り上げたい。

2016年10月13日、PS4向けVRヘッドセット「PlayStation VR(以下、PSVR)」が発売された。なんとか事前予約に滑り込めた私は、早速『Rez Infinite』『バットマン:アーカムVR』などを堪能したところだが、それらのPSVR専用タイトルについてはまた稿をあらためて紹介したいと考えている。本稿ではPSVRのHDMI対応ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)としての可能性について取り上げたい。

PSVRの映像の入出力などを司る「プロセッサユニット」には、PSVR本体との接続端子や電源のほか、入出力用のHDMI端子がそれぞれ一つずつ備わっている。当然、通常は入力側にPS4からのHDMIケーブルを、出力側に映像機器へのHDMIケーブルを接続するわけだが、映像入力はHDMIケーブルを通じればPS4にかぎらずどの機器からでも接続が可能であるという情報をTwitterで見かけたのである。

それを見てあることを思いついた。それは「これを使ってWiiのバーチャルコンソール版『スターブレード』を遊ぶと楽しいのでは?」ということだ。WiiにはHDMI端子は存在しない(非公式な周辺機器としてはいくつか存在する)が、Wii UのWiiモードから『スターブレード』を起動すればHDMI出力は可能である。ついてはこの件の検証の結果や使用感について書き記しておく次第である。

 

WiiUと接続

プロセッサユニットのHDMI端子部。左側はTV等への映像出力、右側がプロセッサユニットへの映像入力。今回は本来PS4からの入力を受信する右側の端子にWii UからのHDMIケーブルを接続した。ちなみに写真には写っていないが、反対側にはPSVRへの専用出力端子がある
プロセッサユニットのHDMI端子部。左側はTV等への映像出力、右側がプロセッサユニットへの映像入力。今回は本来PS4からの入力を受信する右側の端子にWii UからのHDMIケーブルを接続した。ちなみに写真には写っていないが、反対側にはPSVRへの専用出力端子がある

PSVRの初回セットアップは事前に済んでいるものとして、ここではその手順などについては省略し、さっそく検証を開始する。本来PS4からのHDMIケーブルを接続する箇所である「HDMI IN」に、Wii UからのHDMIケーブルを接続してみる。

そしてPSVR、Wii Uの電源をそれぞれONにする。さてどうなるか。

結論から言えば、あっさりと映ってしまった。PS4側の設定でいう「画面サイズ:小」のサイズでのシネマティックモード相当の条件で動作しているとみられる。もちろん、Wii Uからの出力がヘッドトラッキングといったPSVRの機能に対応しているわけではない。あくまでWii Uの画面がPSVRの有機ELモニタに出力されるというだけで、解像度もPSVRのそれ(片目960×1080)だ。しかしながら、PSVRにはしっかりとWii Uの画面が表示され、さらにプロセッサユニットのパススルー機能も一緒に動作するので、まったく同じ画面がテレビにも同時に出る。HDMI接続の汎用HMDとして考えると、機能的な不足は感じない。

テレビに映し出された『スターブレード』のタイトル画面。これと同じものがPSVRへも同時出力される
テレビに映し出された『スターブレード』のタイトル画面。これと同じものがPSVRへも同時出力される

映像の出力に問題ないことが確認してから、『スターブレード』をあらためて遊んでみたところ、これが思っていた以上に良かった。PSVRには、視界の端になればなるほど映像のピントが合わなくなりぼやけてしまう傾向がある。だが『スターブレード』の場合は、この仕様が偶然にも、アーケード純正筐体の凹面鏡を利用した「無限遠投影システム」をほのかに再現しているように感じて、エンディングまでさっくりと遊べてしまった。事前にWiiリモコンの設定を済ませておくことが必要であるなど煩雑なところがあったり、『スターブレード』を含むナムコのバーチャルコンソールアーケード特有の仕様として壁紙の設定がOFFにできなかったりと残念な点はあるが、『スターブレード』の宇宙の奥行きをTVモニタ以上に感じることができた。これは環境が許せば一度は試してみて欲しい。

カーソルで狙って撃つだけというゲーム内容も、手元が見えないVR HMDと相性が良い
カーソルで狙って撃つだけというゲーム内容も、手元が見えないVR HMDと相性が良い

遅延に関してだが、パススルーはついているもののPSVRに映し出されている画面とTVモニタに映し出されている画面を比較する手段が用意できず、正確なところは不明と言わざるを得なかった。なので「ほとんど感じない」というのが正直なところだ。違和感がゼロと言うとウソになってしまうが、「HMDに不慣れだからそう感じるだけだ」と言われるとそういうものかで済んでしまう程度のものである。いずれにせよ、ゲームプレイに致命傷と言うほどのものでは無いように感じた。

Wii U以外にXbox OneとXbox 360についても試してみたが、どちらも正常に表示された。Xbox Oneについてはゲームプレイ、ブルーレイディスク再生の両方を行ってみた所、どちらも普通に表示された。もちろん、いずれも解像度はPSVR相当に変更される。基本的にHDMI入力ならソースは問わないようだ。ブルーレイ再生も視聴できたことから、HDCPにも対応していると見て良いかもしれない。

 

常用するには厳しいが

長々と検証してきたが、結論を述べよう。まず映像はHDMI入力なら基本的に問題ない。その際、PS4自体は必要ない。PSVRの電源を入れれば、HDMI入力された映像を映してくれる。

しかしこれをサブモニタ・HMDとして常用できるかどうかとなると、やはり難しいと考える。『スターブレード』に関しては相性がバッチリだったし、何を映して遊ぶかにも依存すると思うが、ちょっと被って何かを楽しむと気軽にやるには、PSVRと言えどまだ大きすぎるように思う。個人的には発汗の問題も大きく、これを頻繁に被ったり外したりするのには少々抵抗がある。今回はもののついでにと、何とか寝そべりながら利用できないかと色々な体勢でPSVRを装着することを試してみたのだが、この形状にフィットするソファやクッションの手配には相当な苦労を要するという結論になってしまった。PSVRに限った話ではないが、HMDというガジェットには、こうした取り回しの問題が今後もしばらくはつきまとうのだろう。

とはいえ、何度も繰り返すようだが『スターブレード』との相性は抜群だった。PSVR向けのコンテンツでなくとも、これをHMDとして使った際に相性の良さを発揮するコンテンツはおそらく他にもあるだろう。それらと出会ったときのために、PSVRというHMDの存在を頭の片隅においておくのも悪くない。

Rokurou Eyama
Rokurou Eyama

ビデオゲームとアメコミとバイク(盗難被害遭遇済)をこよなく愛する30台前半。レトロゲームも最新ゲームも等しく同じ大切なプレイ対象である。

幼少期に出会った『マーブルマッドネス』の衝撃でビデオゲームに目覚め、なぜか実家に転がっていたMSX2+に親しみ、バーチャルボーイに立体視の未来感を植えつけられゲーム人格が形成されていった。STGからRTSまでどんなジャンルも遊んでみるが女の子がいっぱい出てくるゲームは苦手。

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