『モンスターハンターワイルズ』ではいきなり“先生級”“古龍級”のモンスターが出し惜しみなく出てくる。緋の森でウズ・トゥナに圧倒された、試遊プレビュー感想

『モンスターハンターワイルズ』のメディア向けプレビューツアーが実施された。本稿ではプレビュー版の試遊を通して確認できた内容をお届けする。

カプコンは来年2月28日、『モンスターハンターワイルズ』を発売予定。『モンスターハンター』シリーズの約4年ぶりの新作として世界的な注目が集まるタイトルだ。10月末から11月初頭にかけてはベータテストも実施され、盛況を博していた。

このたび弊誌は、カプコンより『モンスターハンターワイルズ』のプレビューツアーに参加(弊誌合同インタビュー記事弊誌スタジオ取材記事)。このなかではベータテストになかった内容が含まれるプレビュー版を試遊する機会が設けられており、本稿ではプレビュー版で確認できた内容をお届けする。なお試遊プレイにおいては開発中のバージョンが使用されており、製品版とは異なる内容が含まれる可能性があるため留意されたい。


いきなりの“先生”候補

今回の試遊プレイは、新規データを作成してゲームを開始する方式でおこなわれた。禁足地にたどり着き、バーラハーラに襲われるノノと出会い、チャタカブラを倒してイサイと出会うところまではオープンベータテストと同様。一方でその後のクエストがプレイアブルとなっており、隔ての砂原エリアにて、新モンスターである炎尾竜「ケマトリス」の討伐を目指すこととなる。ケマトリスはニワトリのようなトサカをもつ、二足歩行の獣竜種のモンスター。ふさふさとした大きな尾からは発火性の物質が出ているそうで、炎上を伴う攻撃方法が特徴だ。

大きな尾をのっそりと振り回してくるだけでも厄介だが、そこに炎が加わるためさらに強力。炎が撒き散らされる範囲を想定して回避したり、燃えているエリアを避けたりと、戦闘時に注意すべきことは多い。果ての砂原には枯草が多く、あっという間に燃え広がることにも注意が必要。チャタカブラの次に戦う大型モンスターでありながらも、難しさは格段に上がる印象だ。

製品版でももしプレビュー版と同様のクエスト順になるならば、ケマトリスは2体目にして早くも新規プレイヤーにとって“先生”のような存在になるかもしれない。ドス系のモンスターなど、比較的優しめの中型・大型モンスターを狩りながら緩やかに進んでいく過去作と比べるとかなりハイテンポな難易度アップといえる。テンポがよくシリーズ経験者としては好印象な反面、入門者にとってはいきなりの壁となりそうだ。何度も挑み続けて動きを覚えたり、救難信号で仲間を呼んだり、環境を利用する攻撃手段を使ったり、あるいは鉱石や骨を採取して装備を整えるなど、試行錯誤が必要だろう。


初めての「緋の森」

ケマトリスを倒すと、イベントを経ていよいよオープンベータテストにはなかったエリア「緋の森」がお目見えだ。荒野や岩場が広がる隔ての砂原とは対照的な、草木がうっそうと茂り、豊かな水をたたえる密林となっている。

しかし名前に火のような紅色を指す「緋」を冠する通り、おどろおどろしい赤い水が流れる場所がある点も特徴。この発生源とみられるのが、試遊プレイにおいて次に戦うこととなった刺花蜘蛛「ラバラ・バリナ」だ。ラバラ・バリナは、赤い綿毛に覆われた腹部を展開させると、大輪の花のように見える点が特徴のモンスター。赤い綿毛は巣作りにも使われているようで、巣は真っ赤な綿毛や蜘蛛糸で覆われた異様な空間となっている。

ラバラ・バリナは、シリーズ過去作における蜘蛛型モンスターであるネルスキュラ、ヤツカダキと同じく、鋏角種に属している。そして試遊プレイで戦う限りでは、ラバラ・バリナは鋏角種のなかでもひと際トリッキーなモンスターであった。まず印象的なのは、ジャブのような攻撃が多いこと。決定打をあまり見せずじわじわとハンターの体力を削りつつ、麻痺毒のある綿毛を周囲に飛ばしてうっかり触れるのを待ち構えてくる嫌らしい戦法だ。被ダメージ覚悟であれば攻撃するチャンスは多いものの、位置取りにおいてはケマトリス以上に周囲の状況に気を配る必要がある。単純なヒット&アウェイとは違った戦い方が求められる相手であった。


再会

ラバラ・バリナ撃破後には森の獣人モリバーとのイベントを経て、いよいよ桃毛獣「ババコンガ」戦だ。ババコンガはニンテンドー3DS向けの『モンスターハンターダブルクロス』以来、実に約7年ぶりに再登場するモンスターである。ベータテストおよび今回のプレビュー版を通して、初の過去作からの登場モンスターの狩猟でもあった。

約7年ぶり、しかも現世代機で復活を果たしたババコンガの狩猟を経て、我ながら意外な感想だがなぜか筆者は大きな変化を感じなかった。ただただ「ババコンガを狩っている」という気持ちがあり、懐かしさや安心感が勝っていた。もちろんグラフィックは格段に向上しており、桃色の毛並みが揺らいだり、モーションが滑らかで自然になっていたり、放屁の立体感ある表現だったり、進化を数え上げればきりがない。

ただ、変化した部分があまりにもババコンガとしてしっくり来すぎて、いわば新生ババコンガと戦ったという気持ちはまったくなかった。新しい攻撃方法にさえ「ババコンガならしてきそう」とすんなり腑に落ちる納得感がある。7年も時を経ているのに“ババコンガという概念”がここまで正確に表現されているのは職人芸だろう。

ちなみに本作のディレクターである徳田優也氏は『モンスターハンター2(ドス)』においてプランナーとしてババコンガを手がけた“生みの親”であり、本作に再登場させるにあたっても監修を務めていたという(弊誌合同インタビュー記事)。新しさを覆い隠すほど懐かしいババコンガらしさには、同氏のこだわりが反映されているのかもしれない。

とはいえババコンガ戦でも新たな気づきはあった。それはコンガの存在感がしっかりと感じられたところだ。ババコンガを攻撃していると、群れの長を助けんとばかりにコンガたちがわらわらと寄ってくる。画面をコンガのお尻が埋め尽くす。過去作にはなかった光景だ。それでいてコンガたちの攻撃頻度や精度は控えめであり、お邪魔要素としてあまりストレスにならない部類であった。むしろ、過去作でもフィールド内にちらほらコンガがいる状況での戦闘はあったものの、活き活きとした「群れと戦っている感」は『モンスターハンターワイルズ』のババコンガ戦ならではの新鮮味といえる。


古龍と見まがう

懐かしのモンスターとの戦いを経た後はふたたび隔ての砂原に戻り、2つのクエストをこなすこととなった。沙海竜「バーラハーラ」と闢獣「ドシャグマ」の討伐クエストだ。いずれもベータテストにも登場していたモンスターであり、筆者もすでに何度か狩猟済み。とはいえ戦いの前にイベントシーンが加わるなどの変化もあった。また筆者はこの機会に折角なので今まで用いてきたガンランスと違う武器を試してみることに。セクレトにより2種類の武器を気軽に切り替えられるため、戦い慣れたモンスターの狩猟でもさまざまな武器を試す楽しみがあるのは本作の醍醐味だ。

そうして迎えた、先行プレイの最後を締めくくったのは波衣竜「ウズ・トゥナ」の撃退クエストであった。舞台はふたたび緋の森となる。ただ、以前訪れた時とは様変わりしており、天候は荒廃期から異常気象「集中豪雨」へと変貌。氾濫する水場にて、ウズ・トゥナと対峙することとなる。

ウズ・トゥナは、『モンスターハンターワールド:アイスボーン』に登場した古龍ネロミェールと似た雰囲気のモンスターだ。両者攻撃に水を用いる点も共通している。とはいえ、よく見比べるとウズ・トゥナとネロミェールの水の使い方には大きな違いがある。

というのもネロミェールは、ブレスなど自らの攻撃によって足元に水を撒き散らし、それを波打たせたり電気を放ったりといった戦い方であった。対してウズ・トゥナはそもそもフィールド上に大量の水が氾濫しており、攻撃によってこの水に大波を巻き起こしながらこちらを阻んでくる大胆な戦闘スタイルだ。大波にはすべてにダメージ判定があるわけではなく、ハンターの視界をさえぎり移動を妨害してくる使い方が主体となっている。


そのため攻撃量はネロミェールほど苛烈ではないものの、ウズ・トゥナの環境を利用する豪快な戦いぶりは、ベータテストと試遊版を通してもっとも『モンスターハンターワイルズ』の進化を感じられる部分であった。このほかウズ・トゥナはハンターが到達できない深い水場を泳いで移動したり、そこからダメージを伴う大波を巻き起こしたりと、自然環境を存分に生かした戦い方を見せてくる。

それぞれ過去作の古龍戦に勝るほどダイナミックな映像表現となっており、序盤で戦うモンスターとしては過去に類を見ないほど豪華。プレビュー版の範囲では討伐ではなく撃退でクエストが終わるものの、今後出てくるモンスターの存在感が尻すぼみにならないか心配になるほど、出し惜しみのない圧倒的な脅威として描かれたモンスターであった。


モンスターも環境の一部

ウズ・トゥナ戦を経て今回のプレビューを振り返ってみると、『モンスターハンターワイルズ』では環境とモンスターの繋がりがより強く描かれ、ゲームプレイにも表れているように思う。ケマトリスが巻き起こした火は周囲の枯草に燃え広がるし、バーラハーラは流砂を発生させ蟻地獄のようにハンターを引きずり込む。ババコンガはコンガたちの生息地では群れとして戦い、ウズ・トゥナは先に述べたとおりだ。過去作でも一部モンスターにあった表現ながら、より強化され、表現の幅も広がっている。

これまでのシリーズ作品では、あくまでモンスターとハンターの対決が主軸であった。アートデザインや構造、ギミックの違いこそあれどフィールドはあくまで脇役であり、モンスターとはある程度独立した存在であった。ここが『モンスターハンターワイルズ』では、モンスターと、モンスターが活動範囲とするフィールド上の環境が密接に結びついている。本作ではモンスターの種類によっては、ハンターは「モンスター+環境」と戦う必要があるわけだ。そのぶん環境を巻き込んだリッチな攻撃表現が描かれており、マシンパワーが活かされている部分だろう。

筆者は正直に白状すると、ベータテスト時点では便利さや遊びやすさの向上こそあれど、新作ならではの大きな進化を実感できていなかった。しかしウズ・トゥナ戦を経て胸に刻まれたのは、これまでのシリーズとは一線を画する豪快な狩猟模様だ。そこにあるのはフィールドがあって、モンスターが配置されていて、といった整然としたシステムではない。環境と生き物の絡み合いにより、フィールドごと揺れ動くような混沌とした狩りが描かれるところに『モンスターハンターワイルズ』の醍醐味があると感じている。あくまでプレビュー版時点での感想ながら、来年2月28日の発売がさらに待ち遠しくなる試遊体験であった。

モンスターハンターワイルズ』はPC(Steam)/PS5/Xbox Series X|S向けに来年2月28日に発売予定。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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