常識破壊オセロゲーム『デビルリバーシ』開発者は「Steamユーザーに新しい体験を届けたい」、だから「手厳しいレビューもありがたい」。開発者に話を訊いた


作家の喜多山浪漫氏は11月21日、定番ゲームの常識破壊シリーズ第1弾『デビルリバーシ』をリリース予定だ。対応プラットフォームは、PC(Steam)。本作は、誰もが知るテーブルゲームである「リバーシ(オセロ)」をベースに、ルールを拡張してデジタルゲーム化した対戦ゲームである。

本作を手がけた喜多山浪漫氏は、前職は元ゲーム会社社長という経歴をもつ小説家である。そんな喜多山氏が、小説家となった今、なぜ再びゲームを作ることになったのか。そして、定番ゲームの常識破壊とは、『デビルリバーシ』とはどんなゲームなのか。弊誌では喜多山氏と、『デビルリバーシ』の開発を担当したクローバーラボのディレクターの山田一成氏に伺った。


元ゲーム会社社長が小説家になり、再びゲームを作った理由とは

――自己紹介をお願いします

喜多山浪漫(以下、喜多山)氏:
喜多山浪漫です。小説家です。元々、26年ほどゲーム業界で働いていまして、とある地方のゲーム会社で社長も務めておりました。2年ほど前に独立しまして、そこから喜多山浪漫名義で小説家をしています。現在KADOKAWAの電撃マオウで連載中の「エトランジュ オーヴァーロード」が今のところの代表作で、同作は東京ゲームショウ2024でゲーム化も発表させていただきました。本日はよろしくお願いします。


山田一成(以下、山田)氏:
クローバーラボで、現在ディレクターとエンジニアとして働いている山田一成です。よろしくお願いします。


――喜多山さんはゲーム会社の社長をされており、ゲーム業界から少し距離を置くかたちで小説家に転身されました。そもそもなぜ再びゲームを作ることになったのでしょうか。

喜多山氏:
ひとりで伸び伸びとやりたいな、というのがあって。なおかつ前の会社と競合しないようにという配慮もあって、次は違う業種にしようと考えました。そこでひとりで何ができるかなと思ったときに、小説が一番良いかなと思ったんですね。前職でもシナリオを書くことが多かったので、そのときに培ったスキルを活かせるというところもあって、まずは自分のやりたいことを小説という方法で形にしてみるということがスタートだったんです。

そこで、自分の書いた小説を自分で営業に行って、「コミックにしてください」とか「良かったらゲームにしませんか」とか、そういう営業をして生計を立てるという活動をし始めました。

ただ、商品化される前の段階でキャラクターデザインの方を起用したり、テーマ曲のようなものを作ってもらったりっていうのは、出資者が集まっていない状態だとコストは自己負担なんです。自己負担でやっていくのはいいんですが、いくつかのプロジェクトというか、小説のネタを作って立ち上げていく中で、やっぱり結構お金がかかるな、というのが正直なところで(笑)そこで、将来を見据えて自身でパブリッシングする道も模索しておきたいと考えて、1本作ることにしたのです。

――『デビルリバーシ』には、クローバーラボから何人くらいのスタッフが参加されているのでしょうか。

山田氏:
メインとして3人で、スポットで1人の計4人です。内訳で言うと、僕がディレクションとプランナーとエンジニアという役割で、ほかにキャラクターデザインで1人、UIで1人です。そして、スポット参加として、オンライン対戦の実装などの専門的な部分で1人に手を借りて、という構成で開発しています。


――『デビルリバーシ』は、そもそもどういった経緯で開発がスタートしたのでしょうか。

喜多山氏:
定番ゲームであるリバーシにひと味加えたら、全然違うゲームが作れるんじゃないかなと考えたのが『デビルリバーシ』を開発しようと思った最初のきっかけなんです。定番ゲームには、リバーシ以外に囲碁、将棋、麻雀など、いろいろなものがありますが、そのルールはすでに完成されている面白いものなので、そこに誰も手を加えようとしないと感じていました。

ただ、私は実はまだ定番ゲームに宝が隠れている可能性があるんじゃないのかなと思っていて。誰も考えないからこそ考えてみたいと思っていたのがスタートですね。それでどの定番ゲームのルールに手を加えたら面白いかなと思ったときに、やっぱりリバーシがシンプルで良さそうだったんです。

最初は、実際のリバーシを使って娘と一緒に遊んでいて。石の上に石を重ねたらどうなるのか、という試行錯誤を始めたんです。リバーシは、四隅を取ったら絶対にひっくり返せないので、それがほぼ勝ちに繋がるという勝ち筋が明確にあるじゃないですか。その勝ち筋が正直面白くないなと思っていて。端っこを取られても巻き返せる、「端っこを取ったから良いってもんじゃないぞ」という遊びが作りたかったんです。じゃあ、どうすれば実現できるかと考えたときに、「石の上にさらに石を置けばいい」という考えに至ったわけです。

そのルールを採用して娘とのテストプレイで遊んでみたところ、石の上に石を重ねて、挟んでひっくり返すという遊びが成立しそうだったんですよ。これはもしかしたらいけるな、という手応えがあったので、クローバーラボに来たときに、雑談がてらに相談して。

山田氏:
実際のリバーシを持って来られまして(笑)

喜多山氏:
それでちょっと1回実際に遊んでみて、やっぱりいけるよねと。それで、1か月くらいで山田さんが形にしてくれて、実際にデジタルで遊んでみてもいけそうだな、と判断して正式にプロジェクトが始動したという流れですね。


――リバーシのルール改変のひらめきが開発スタートしたきっかけとのことですが、そもそも『デビルリバーシ』どういったゲームなんでしょうか。

喜多山氏:
本作は、一言で説明してしまうと、いわゆる「リバーシ」です。ただ、『デビルリバーシ』の最大の特徴は、盤面に平面に石を並べていくだけではなくて、石の上に石を重ねて、重ねた後に挟んでひっくり返すことができるんです。そのリバーシの常識破壊のおかげで、四隅が完全な安全地帯ではなくなり、端を取ることが完璧な勝ち筋ではなくなりました。

さらに、リバーシの石をひっくり返すという基本に、連鎖反応という要素も加えました。そのため、普通なら1つの石がひっくり返るだけのところでも、周りの石にも影響して、1箇所が黒になったとき、それに隣接した部分も黒になる、という連鎖が起きるんです。石の上に石を重ねるという発想から、連鎖という要素に繋がったことも、『デビルリバーシ』がかなり面白くなるんじゃないかという確信に近いものを得られたきっかけですね。

――本来であれば勝ち筋となる端を取るためにどうしたらいいかという問題解決を軸に、どんどんゲームルールを突き詰め、連鎖要素も生まれたということですね。

喜多山氏:
そうですね。そして、最終的に山田さんが中心となってゲームに落とし込んでくれました。ちなみにゲームの勝利条件は、最初にアナログの盤面でやっていたときは、最終的に上から盤面を見たときに白と黒のどちらが多い、という計算方法だったんです。ただ、デジタルで遊ぶときには、最終的にはポイント制になりました。デジタルにして実際に遊んでみたとき、『デビルリバーシ』は枚数制よりも、ポイント制の方が断然面白いということがわかりましたね。

“新しい体験”を味わわせることに重点を置いた

――リバーシという定番ゲームに、別の付加価値を付けることも、商品化にあたって大事だと思いますが、『デビルリバーシ』はルール以外の部分で何か工夫はありましたか。

喜多山氏:
『デビルリバーシ』においては新しいものを体験してもらうということに注力しました。新しいゲーム体験というのが、ゲームユーザーにとっての一番大事な価値なんじゃないかなということはずっと思っていまして、私は別の人がやっていることと同じことをやるのに、あまり価値を見出していないんですよ。流行りに乗るというところもですね。

では何に価値を見出しているのかというと、やっぱりここでしか味わえない体験というのを提供することが最大の価値なんじゃないかと思っています。そういう意味では、シンプルに「新しいリバーシです」というところに価値があるんじゃないかなって思っています。

――ミニマルなゲームなものの、ゲームのエフェクトやグラフィックなどの仕上げは、ゲームとして必要な整えをしっかりされている印象です。

喜多山氏:
そこはやっぱりクローバーラボがゲームを作り慣れているというのがあります。私が何か言わなくてもかなりこだわってエフェクトやSEとか、細部に至るところまでデザインしてくださったという、その結果だと思いますね。あと、壮大な物語のストーリーモードとか、美麗イラストがたくさんありますというのは、このゲームにはあまり意味のないプラス要素で、お金ばかりかかる要素なのかなと思いますし。

――ちなみに、石の上に石を重ねられること、連鎖が起きること以外に、何かルールに手を加えた部分はありますか。

山田氏:
新しい要素としてあるのがトーテムですね。たくさん積み重ねた石で連鎖されまくるということが起きてしまうので、その対抗手段としてトーテム化という要素も加えました。ちなみに、トーテム化という名前ですが、デビルとか魔王という要素に相応しい名前にしようと思って考えて、生贄が思いつきまして。それで生贄で何をやるのかとかをいろいろ調べていくうちに親和性があって面白いなというので、トーテム化という名前を採用しました。


――ルール改変ゲームを作っている最中で、ルールがしっかり見えていない状態は、どんどんルールに手を加えたくなるのでは。その割には要所のルールいじりに留まっていますね。

山田氏:
最初にゲームの企画を聞いた辺りのときに、喜多山さんからeスポーツ化みたいなワードを聞いていました。それだったらあまりランダム要素とか、ローグライクとかデッキ構築といった複雑な要素を入れずに、リバーシの基本である対面で対局するかたちを極力維持したいというのがあったので、その点をブレずに形にしていきましたね。

――ポーカーやブラックジャックにローグライク要素を入れるとか、そういうルール改変ゲームのブームがあって、『デビルリバーシ』も一見その後追いっぽく見えますが、その路線は追っていないということなんですね。では、どういった遊び方をイメージされていらっしゃいますか。

喜多山氏:
対戦して遊んでもらうというところに重きを置いていて、特にオンライン対戦でユーザー同士で遊ぶとか、あとはストリーマーの方々が実況しながらワイワイ楽しんでもらうみたいなところをイメージしていますので、今の段階では対戦に特化しています。どちらかというと、パーティーゲームの側面が強いかなと思っていますね。

とはいえ、最近流行りのローグライクとかにも非常に興味はありますし、そういう進化のさせ方が『デビルリバーシ』にも、もしかしたらあるのかもしれないですが、どっちつかずになったら良くないので、一旦そちらの方向性は考えないかたちで作っています。

本作にはストーリーモードが存在、基本的には対戦を楽しむゲームという

――両方やると中途半端になってしまうと。

喜多山氏:
間違いなく中途半端になると思うので、ここは割り切って、こっちと決めた方向に進んだ感じですね。

山田氏:
実は、開発途中に何でもあり系のリバーシゲームがSteamでリリースされて、あれを見たときは心が疼きましたね。何でもあり系の方が面白そうだと思いつつも、最初に決めたコンセプトをブレさせてはいけないと思って、気持ちを抑えるのをちょっと頑張りましたね。

喜多山氏:
最初に決めたコンセプトをブレさせずに最後まで作り切って、完成した後に本当は無茶苦茶やってみたいとなったときに、じゃあ『デビルリバーシ』を改造した無茶苦茶版というのを考えれば良いと思うんですよね。後から“スーパーデビルリバーシ”を作っても良いわけです。

一同:
(笑)

喜多山氏:
そういう基礎がちゃんとできた上で無茶苦茶した方が良いという考え方もあると思うので、手順としてはこれで良いかなと思っています。

――ちなみにオンラインでは、どういった対戦が楽しめるのでしょうか。

山田氏:
オンラインマッチに関しては、プライベートマッチとクイックマッチを用意しています。プライベートマッチは部屋を作成して、友達にパスワードを教えてプライベートで対戦をするものです。クイックマッチは、そのときに対戦待受をしている人とランダムでマッチングして対戦というものですね。


――クイックマッチにはレーティングなどは存在するのでしょうか。

山田氏:
現在はレーティングの実装は考えていませんが、ユーザーが増えてきたらちょっと検討したいと思っています。

喜多山氏:
最初の段階でそういうのをやり過ぎると、誰とも全然マッチングせずに対戦できないとかになっちゃいますので。

――AIとの対戦プレイはどれくらい楽しめるのでしょうか。

山田氏:
1人プレイにおいてはAIの強さを3段階用意しています。『デビルリバーシ』は勝敗がポイントで決まるので、毎ターン最大DPSを出すというのが、ひとつの強い行動のアンサーになるんですね。なので、一番賢いAIは最大DPSを出すというかたちで落ち着いています。ただ、実は最大DPSを出すことが必ずしも賢いというか、絶対最強というわけではなくて、盤面状況をもうちょっと見て打てるような、次の盤面まで意識した打ち方ができるAIでなければ、本当に賢いとは言い切れないのかなと。

――パワー系タイプのAIなんですね。

山田氏:
(笑)「一番高いとこや!」と攻めてくる。ただ、それでも十分ある程度強いと思うんです。ただ、その先はまだまだ研究中といった感じですね。

――その下のレベルのAIはどういった感じですか。

山田氏:
そこは連鎖をあえて狙わない打ち方をしたり、連鎖が非常に好きだったり、ポイントを取りたいとか堅実に盤面を広げたいとか、トーテムを使いたいとか、そういったプレイスタイルのエッセンスを抽出して、AIに性格付けして、難易度をバリエーションとして用意しようと考えています。


――シンプルな弱中強というよりは、対戦相手のプレイスタイルというかたちでの難易度設定なんですね。

山田氏:
はい。現状でできそうなのがそういったかたちですね。

――『デビルリバーシ』において、高度な対戦となるとどういう展開になるんでしょうか。

喜多山氏:
うーん……、我々自体も本当に完璧な攻略法というか、定石みたいなものがわかっていないんですよね。一部、理解し始めたスタッフも出てきているんですが、まだ先があるような気もしていて、正直未知数なんですよね(笑)もちろん端っこが強力ということもなく。ポイントを稼ごうと思ったときに、端はあまり有効に働かないという考え方があるので。

山田氏:
連鎖をたくさん起こすとか、逆に連鎖を全然起こさずに相手がやりたい行動をさせない打ち方をし続けてポイント差をキープするという渋い打ち方もありますね。『デビルリバーシ』っぽい打ち方か、「リバーシじゃん」という渋い打ち方か……。

喜多山氏:
何も起きないやつですね(笑)

一同:
(笑)

――プレイヤーによって個性が出るゲームなんですね。

山田氏:
ルール改変が生んだ、リバーシにおいてのプレイスタイルみたいなものは、本来なかったものですね。

――ちなみに、おふたりはどういった戦い方をされるんでしょうか。

喜多山氏:
私は元気にポイントを狙っていきます。

山田氏:
僕も連鎖を多めに狙う派ですね。

喜多山氏:
ちなみに、クローバーラボ社内に、一番上手い名人みたいな人がいるんですが、その人は相手にできるだけ何もさせないタイプですね(笑)

常識破壊シリーズ第2弾、第3弾、そしてNintendo Switch向け移植も

――『デビルリバーシ』は発売フェーズにたどり着きましたが、今後どういう風に広げたいという構想はありますか。

喜多山氏:
『デビルリバーシ』というゲームのルールを新しく作ることができたので、このルールを活かした何か別のゲームを考えたいと思っています。たとえばキャラクターを別のものにしたり、IPを変えたりという風にしながら、『デビルリバーシ』というゲームのルールの可能性を広げるような活動をしていきたいですね。

それと、これは常識破壊シリーズとしての展開になりますが、今回は第1弾としてリバーシを選択しましたが、『デビルリバーシ』の評価次第で、第2弾、第3弾の常識破壊シリーズにもぜひ挑戦したいと思っています。それが将棋なのか、麻雀なのか、それともポーカーなのか、いろいろ案がありますので、定番ゲームだからこうじゃなきゃダメ、というもの自体を変えていくという取り組みができると良いなと思っています。

――元が良いことを認めつつ、あえて遊び方を広げてみたいと。

喜多山氏:
今普通のリバーシとか麻雀とかを作ったところで、素晴らしい作品が世の中にあるので、後発だと無料でもない限り誰も遊んでくれないと思うんです。ゲームとしての新しい体験価値をちゃんと盛り込んだものを出さないと意味がないので、それをやろうと思ったときには、常識破壊をするのが一番良いんじゃないかという考えですね。それと、Nintendo Switch向けの移植も予定しています。

――Nintendo Switch向けの移植は、Steam版のセールスに関わらず、ですか。

喜多山氏:
セールスに関わらずやった方が良いだろうなと思っています。

山田氏:
イベント出展にすべて参加した中で、Nintendo Switch版は出ないんですかという声が多かったので、やっぱり需要があるのかなと思っています。皆さんの声を受けて、移植を検討しているところですね。


ヴァニラウェアの新作ではありません

――『デビルリバーシ』にキャラクターデザインとして神谷盛治氏、音楽に崎元仁氏が参加されていらっしゃいますが、どういう関係で参加されたのでしょうか

喜多山氏:
元々、お二方とは以前からこ゚縁がありまして。神谷さんは私が独立したときにすぐに会いに行ったんですが、そのときに独立祝いとして喜多山浪漫のイラストと会社のロゴを作ってくださったんです。

元々そういったこ゚縁がありまして、喜多山浪漫の絵を描いてくださったときに、ほかにも何点かイラストがあったんですよ。で、神谷さんはあまり自分の描いた絵に執着されないので、そこで描いてもらった絵って、何もしなかったら多分一生世には出ないだろうなと思って、それはもったいないのでどこかのタイミングで使わせてもらおうと考えていました。

――たしかにそれはもったいないですね……。

喜多山氏:
それで機会を伺っていたんですが、ちょうど『デビルリバーシ』を作るとなったときに、「あ、これだ」となりまして。お願いしたところ、使わせてもらえたという流れなんです。

――元々『デビルリバーシ』向けに創られたイラストではないんですね。

喜多山氏:
そうです。元々描いてくださったものを上手く使わせてもらったというかたちです。なので、『デビルリバーシ』に神谷さんがクリエイティブで関わっているというものではないので、そこを誤解されて「ヴァニラウェアの新作だ!」みたいなかたちで期待されちゃうと大きな間違いが起きるので、そこは違いますとお伝えしておきます(笑)

――でも、作曲の崎元さんのお名前まで見ると、ソワソワする人もいますよね。

喜多山氏:
崎元さんも以前からの知り合いで、一緒のお仕事をしたこともあるんですが、元々は神谷さん繋がりで知り合った経緯があって、神谷さんにキャラクターイラストの件で協力をお願いしたっていうのもあって、じゃあ音楽はやっぱり崎元さんかな、って。崎元さんに「3曲でいいので……」とお願いしに行って。

――なぜ3曲だったのでしょうか。

喜多山氏:
最低限必要な、タイトルとバトル、ストーリーで、最低限3曲は絶対必要だったので、その3曲でいいので書いてもらえませんかとお願いしにいったところ「いいよ」と言うので書いてくださったかたちですね。

山田氏:
ちなみに、実際納品いただいたのはバトル勝利時と敗北時のジングルがあるので、5曲ですね。

喜多山氏:
そうですね。その5曲いずれも非常にクオリティの高いものを作曲いただいて、『デビルリバーシ』という作品自体がグッと引き締まった感じです。

――ちなみに、どういう風な曲が良いというイメージは伝えていたのでしょうか。

喜多山氏:
それはもう“崎元さんっぽい”のが良いです、と。超豪華な崎元さんっぽいのが良いですと伝えました。

山田氏:
実際に納品いただいたときはびっくりしましたね。ゲーム画面のスクリーンショットとかも共有していたので、ちょっとポップな感じになるのかなと思っていたら、もう崎元さん全開になっていました。

喜多山氏:
お願いしたときは、リバーシにこの曲を使うのか、というくらいの曲がいいなと思っていましたね。崎元さんに書いてもらうのならそうじゃないと、っていうものを期待していたら、期待どおりの楽曲を提供いただけましたね。

目が肥えたSteamユーザーにプレイしてもらい、厳しい意見をもらいたい

――最後に、AUTOMATONの読者はSteamユーザーが多いのですが、Steamユーザーに対して、メッセージをお願いします。

喜多山氏:
新しいものとか珍しいものとか、そういった物に感度の高いユーザーがいる場所っていうのがSteamなのかなと。そういうプラットフォームに、自分たちがリバーシという既存のものを崩して作った新しいゲーム性が確立できたんじゃないかと思っています。目の肥えたSteamユーザーから、『デビルリバーシ』がどういう評価を受けるのか、すごく楽しみにしています。


――Steamはレビュー欄がありますし、手厳しさもあります。

喜多山氏:
それは全然良いと考えていますね。散々なことを言われる可能性もありますが、それを受け止めて、次にどうすればいいのかを考えていくことも大事だと思っています。ですので、厳しいユーザーさんたちにもぜひ手に取って遊んでもらいたいです。

リバーシは誰でも知っているゲームですが、『デビルリバーシ』は石を重ねて連鎖が起きると言っても、文章とかだと何のことかわからないんですよ。動画だけ見ても、自分で実際にプレイしてみないとどういう感覚なのかわからないと思うんですよね。なので、実際にプレイしてもらいたいですね。

あと、本作のストーリーモードでは、何となく遊んでいた要素が、ちゃんと意図的にできるようになっていくという楽しさもありますので、そういったところも体感してもらって、その上で評価してもらいたいなと思っています。

――山田さんはいかがでしょう。

山田氏:
今作はちょっと実験的というか、一石を投じる作品だと思っているので、厳しい声もいただきたいですね。それと、Steamでずっとひとつのゲームを遊んでいるような人たちにもプレイしていただいて、このゲームの奥深さ、どこまであるのかということを研究してもらいたいですね。もちろん、ライトユーザーの方にもバンバン連鎖を狙ったり、適当に置いて連鎖したり、みたいに楽しんでもらいたい作品です。

――厳しい意見も大歓迎というのは気概を感じます。お二人の今後のご活躍も期待しております。

喜多山氏:
私はゲーム会社を辞めて、独立して小説家を始めています。人生やり直しみたいなところがあるので、もう一度初心に戻ったつもりで、いただいたご意見に真摯に向き合っていきたいと思います。

――ありがとうございました。

『デビルリバーシ』はPC(Steam)向けに、11月21日発売予定だ。

[執筆・編集:Koutaro Sato]
[聞き手・編集・写真:Ayuo Kawase]