PS5 Proは「高画質かつ60fpsで遊びたい」ニーズに応える。そこに価値を見出すかどうか

左がPS5 Pro、右がPS5で撮影したスクリーンショット

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は11月7日にPlayStation 5 Pro(PS5 Pro)を発売した。弊誌ではSIEから提供を受け、先日には外観レビューを公開(該当記事)。本稿では実際のプレイに焦点を当て、PS5 Pro Enhanced に対応するタイトルから『Marvel’s Spider-Man 2』および『Horizon Zero Dawn Remastered』を軸に、所感をお届けする。結論からいうと、これはPS5 Proの発表当初から語られ尽くしているトピックながら、4K解像度かつ60fpsでゲームを遊ぶという点が強みになるだろう。

まずは引っ越し

ゲーム画質などの紹介に入る前に、PS5からPS5 Proへの移行について触れておきたい。セーブデータの移行に関してはPlayStation Plus(以下、PS+)へ加入している場合、PS5でクラウドストレージへ事前にアップロードしたものを、PS5 Proへダウンロードすることが可能となる。今回筆者はPS+に加入していためクラウドストレージ経由でのデータ移行を行ったが、特に躓くこともなく、スムーズな移行が可能となっていた。本体メニューとしては、PS4からPS5 Proの移行はUSBストレージなどでできることが確認できたが、PS5からPS5 Proについては同項目がなかった。PS+での移行が手っ取り早いのは間違いない。


世界へのピントが、一層合致した感覚

次に、筆者がゲーム内でキャプチャした画像を交えながら、実際の変化についてお伝えしていきたい。PS5 Proではまずゲームが始まった瞬間に、画面が与えてくる情報量の違いをはっきりと感じた。もともとPS5の時点で画質は美しく(それが4K解像度であればなおさら)、Proの映像をぱっと見て大きな変化を言語化するのは難しいだろう。一方で、細かく見ていけば、確かに肌の質感や、画面に表示されている建物や光の情報が増え、画面の向こうの世界が一層近く感じるようになったことがわかる。

まずはPS5 Pro Enhancedの対象である、先日発売された『Horizon Zero Dawn Remastered』について見てみよう。提供資料やゲーム内の説明によると以下の画質向上がなされている。

Horizon Zero Dawn Remastered

ー新しいアップスケーリングとアンチエイリアスのアルゴリズムによる、60fpsでのゲームプレイと解像度優先モードと同品質の両立が可能に
ー被写界深度のレンダリング向上により、フォーカスエリア外のなめらかさや安定性の向上及びフォーカスエリアの対象がより明確に(特に産毛や肌の描写)
ーボリュメトリックサンプリング(3次元での被写体認識)の向上による薄明光線や全体的な安定感の向上
ーフル解像度のフォワードレンダリングの大幅向上により、ホログラムや火、煙などのVFXの鮮明度が向上。 水のレンダリングも改善され、ノイズが減り、より安定した画質になる。

ざっくりと説明すると、60fpsでより高い画質での動作が可能になった、というところだろう。特に産毛や肌の描写、VFXやエンビロメントの鮮明性があがっている。

左がPS5 Pro、右がPS5で撮影したスクリーンショット


『Horizon Zero Dawn Remastered』での比較においては、PS5 Proと、PS5のグラフィック(解像度優先)モードにて、同じ場所でのスクリーンショットを撮影した。ディテールにおける画質向上が主な箇所であるためこのサイズ感では伝わりにくい部分があるかもしれない。しかし撮影にあたり拡大したり画面を動かしたりしてみると、背景に配置している岩などのテクスチャの粗さなどが目立たなくなり鮮明度がアップしたことがわかりやすかった。また、アーロイの輪郭に沿って柔らかく生えている産毛が光に当たり白く光っていることなど、細かな部分が飛ばずに、きちんと描写できるようになっている、というのが顕著に感じられた。


PS5 Proで撮影したアーロイ、下唇のでっぱりの下にもうっすらと産毛のテクスチャが見え、ムラを持ちながら光っている。
またPS5 Proではゲームをプレイしている時も、上の静止画レベルのディテールで動作する。60fps/4K解像度を出しながらもはっきりとした描写がどこまでも続く。精細な描写が、没入感を後押ししている。

Marvel’s Spider-Man 2

『Marvel’s Spider-Man 2』については、レイトレーシングの強化が行われ、光や水、反射の描写技術が向上した内容になっている。ゲーム内は以下のモードが用意されている。

ー忠実モード(Pro):30fpsで新しいレイトレーシングのグラフィック機能を楽しみたい人向け。レイトレーシング機能を調節することで、安定して中程度のフレームレートで遊ぶ事が可能になった。特に「VRR」または「120Hz出力」オフション使用時にその効果が強く発揮される。エリアによっては、歩行者や車両の密度が増し、髪の毛のディテールも向上する。

ーパフォーマンス優先モード(Pro):PlayStation Spectral Super Resolutionを使用することでなめらかな60fp維持しつつ、標準の忠実モードの画質を通してゲーム体験を楽しみたい人向けの設定。反射や水、窓の表現におけるすべててのレイトレーシング機能がオンになっている。

なお、忠実モード(Pro)では以下の項目が調整可能

ーレイトレーシング・アンビエントオクルージョン:レイトレーシングの技術でアンビエントオクルージョンを用い、さらにライティングを計算する。「中」では、スクリーンスペース・アンビエントオクルージョンを増幅、「高」ではさらにグローバル・イルミネーションの反射がライティング情報として追加される。シーンによって大幅に異なる場合がある。
ーレイトレーシング・反射とインテリア:レイトレーシングの反射と窓の奥に見える建物ないのインテリアの質を設定する。「中」ではハーフレンダリングでの解像度、「高」ではフルレンダリングでの解像度に設定される。また、「高」では反射とインテリアのアニメーションも向上する。
ーレイトレーシング・キーライトとキーシャドウ:レイトレーシングで中距離から遠距離までの日陰を計算し、カスケードシャドウに置き換える。この機能は街の景観に大きく影響を及ぼす。

『Marvel’s Spider-Man 2』については、パフォーマンスモードで動作を比較した。PS5版の同作のパフォーマンスモードは、高画質ではあるしレイトレーシングオンオプションがあるなどかなり頑張っていたが、やはり画質優先モードとは隔たりがあった印象。しかしPS5 Proでは画質を犠牲にせず高いフレームレートで動作するという点で、はっきりとした進化を感じた。

またPS5 Proでは特に光の描写が発生するときにより顕著に違いを感じた。あたたかな夕暮れの景色の描写では画面に発生するノイズが軽減され、よりはっきりと発色され、光がこちらに届いている様に感じる。

左がPS5 Pro、右がPS5で撮影したスクリーンショット

また光や水などのレイトレーシング対象物の描写が強化されており、近くに見えるとさらなる違いを体感できる。スパイダーマンのマスクについたゴーグル部分であったり、電撃や炎が発生した時のオブジェクトへの反射具合など、PS5からより一層洗練されくっきり艶やかに描写されるようになっている。今作では特にそういったVFXの描写は多く出番があるため、臨場感が増した状態で楽しめるシーンが多いと感じた。

PS5 Proで撮影したスクリーンショット


パフォーマンスモードを、よりハイクオリティで

ほかさまざまなタイトルを試したが、そもそもとしてPS5は無印の時点でグラフィック表現に秀でている。もとがいいのである。それゆえに、画質の向上を期待すると、体感としてどこまで恩恵を感じられるかは不透明だ。筆者も画質優先モードの比較においては、ふたつの画像を比較して改めて認識できる程度ではあった。

そうした点を踏まえても、やはりこれまで画質をある程度犠牲にしてきた、高fpsのパフォーマンスモードを、高いグラフィック水準で遊べる点がPS5 Proの最大の特徴だろう。さわる前からそうであろうと予想していたが、さわった結果改めてそう感じる。4K解像度で60fps、あるいはそれに近いパフォーマンス。PS5ではなくPS5 Proだからこそできる体験はこの点になる。決して安い買い物ではないので、ここにどこまで価値を置くか。それが購入の判断基準になるだろう。