オープンワールド宇宙ゲーム『Astroneer』開発者、『No Man’s Sky』の失敗から生まれた期待を懸念「我々の作品は未完成」
スマッシュヒットを記録したものの、発売前の期待には応えられず批判の的となっている『No Man’s Sky』。失望を抱えたユーザーは、次なるロマンを求めてほかの“宇宙ゲーム”に期待を寄せつつある。『Astroneer』もまた、そういった期待を背負ったタイトルのひとつだ。
『Astroneer』は宇宙を舞台としたアドベンチャーゲーム。開発元であるSystem Eraは、Ubisoftなど大手パブリッシャーでキャリアを積んだデベロッパー達が集まって設立されたスタジオだ。Unreal Engine 4で描かれるキュートなグラフィックが目につくが、ゲーム内容もなかなか野心的で、惑星の広大な土地を自由に散策し、銃のような道具を使えば『マインクラフト』のように地形を削ったり建物を建築したりすることもできる。素材を組み合わせて乗り物を作り乗り回すといったクラフト要素も完備されており、宇宙船を利用した惑星間の移動も可能。くわえてマルチプレイに対応しているということで、発表された当初から大きな注目を集めていた。
公開されているトレイラーでも、吸い込んだ土を使って橋をかけるシーンや、複数のプレイヤーで洞窟を探索するシーンなどが映されており、ゲームスケールの大きさや自由度が垣間見える。『No Man’s Sky』で切望されていた建築やマルチプレイが充実しているとあって、落胆していたユーザーはインターネットの各所で『Astroneer』への期待の声を大にしつつあった。
「適切な期待を持ってほしい」
しかし、こういった声を『Astroneer』の開発スタッフはあまり快くは思っていないようだ。System Eraの共同設立者Adam Bromell氏は公式ブログに「期待をマネージメントすることはおそらく不可能だ」と記事を投稿。「つまずいてしまったほかのゲームについて話すのは気が進まない」と前置きしながらも、『No Man’s Sky』が多く議論されるなかで『Astroneer』の注目が高まっていることや、メディアを中心に直接的に2タイトルを比較するような言及が多くあることを認めている。一方で、Bromell氏は『No Man’s Sky』に対してコメントするつもりもないという。ではなぜ今回記事を投稿したのかというと、傍観者として『No Man’s Sky』から学んだことを参考に、高まるユーザーの期待が抑制するねらいがあったようだ。
Adam Bromell氏「『Astroneer』はもうじき早期アクセスを開始するが、ゲームは不完全な状態だ。核となるシステムはできているが、まだまだコンテンツは不足している。マルチプレイ中のキャラクターの動きは奇妙だし、音楽もまだ足りてなくてシーンに合わせて適切なBGMが流れない。何度もゲームが止まるようなバグに遭遇することだってあるだろう。僕が言いたいのは、買う前にしっかりどんな体験ができるかを調べてゲームを買ってほしいということだ。」
ほかにもBromell氏は、『Astroneer』はいわゆる宇宙シミュレーションではないことや、正統派のSci-Fi作品でないこと、あくまでフィードバックを得ながらゲームを作り上げていく構想が前提にあることなどを強調し、適切な期待をゲームに寄せることを求めている。
『Astroneer』は12月から19ドルでSteam早期アクセスやXbox Previewでの販売を予定している。早期アクセスなどもなくフルプライス販売から始まった『No Man’s Sky』とは似て非なる境遇であるが、開発元のHello Gamesが多くの批判を浴びる姿に思うところがあったのかもしれない。「ゲームに対して正しく理解してもらうために、どんな質問だって答えるので、その時はメールをしてほしい」とも述べており、どことなく過度な期待に対して恐れを抱いている印象を受ける。
話題に中心となった『No Man’s Sky』はというと、ゲームをめぐる議論の勢いはいまだ収まりを見せず、ついには『No Man’s Sky』コミュニティの中心であるsubreddit「NoManSkyTheGame」が一時は招待制となり半閉鎖状態に陥っていた。招待制への移行を決断したmoderator(subredditごとのボランティア管理者のひとり)であるr0ugew0lf氏は、「ヘイトに埋め尽くされ、議論すらままなかった。こんな状態にするためにコミュニティの場を用意しているわけではない。申し訳ないけど、このゲームについて議論するならよそでやってほしい。」と語った。この事件の翌日、別のユーザーによってsubredditは再び元の状態に戻されている。
このように、『No Man’s Sky』のコミュニティではまだまだ動乱が続いているのが実情だ。Hello Gamesは先日「言葉より行動」と語ったとおり、アップデートに取り組みながら沈黙を守っている。しかし、有数のゲーム番組の司会をつとめていたGeoff Keighley氏のYouTubeチャンネル「LIVE with YouTube Gaming」に、Sean Murray氏が出演するという示唆があり注目が集まってもいる。2016年最も議論を呼んだといっても過言ではない『No Man’s Sky』のこうした問題は、同業者である開発者にも心理的な影響を与えているのかもしれない。