「いつのまにか“外国産日本愛強めゲーム”or”血みどろゲーム“パブリッシャーになりました」。日本田舎ドリフトシムや田舎コンビニ店員ゲームを出そうとするBeep Japan代表に狙いを訊いた
Beep Japanは東京ゲームショウ2024に複数タイトルを出展した。注目作はやはり『JDM: Japanese Drift Master』だろう。『JDM: Japanese Drift Master』は、日本の田舎をドリフトするドライブゲームだ。会場ではハンコン付きのデモ機が用意され、きらびやかなブースが設営。アクセスのよさもあってか、連日長蛇の列が並んでいた。Beep Japanは本作の国内リリースを担当。そのほかにも、ちょっと日本っぽいゲームや、欧米で人気になったゲームの国内販売なども担当している。どういう会社で、どういうポリシーがあるのか。話を訊いた。
──自己紹介をお願いします。
Robert Pontow(以下、ロベルト)氏:
Beep Japanのロベルトです。ポジションとしてはBeep Japanのトップをしています。
──Beep Japanとはどのような会社なのか、改めて教えて下さい。
ロベルト氏:
Beep Japanは、簡単に言いますとインディーパブリッシャーですね。実際はインディーといっても比較的大きなものも含めてさまざまなタイトルをリリースしています。
──大きなタイトルとしては『Atomic Heart』などの国内発売もしていますよね。
ロベルト氏:
そうですね、他に『Daymare: 1994 Sandcastle(デイメア:1994)』もありますし、あとで詳しく触れますが、今回のTGSで出展している『JDM: Japanese Drift Master』や『NanoApostle (ナノアポスル)』も大きなタイトルです。
今回紹介したい『Mandragora』というゲームもかなり洗練されていてグラフィックも綺麗なので、インディーゲームなのかAクラスゲームなのかなんともいえないところではあります。……が、ともかくさまざまなゲームをリリースしています。基本的には欧米のゲームを日本向けに発売することが多いですが、たまにアジアのゲームも扱っています。
──ロベルトさんがBeep Japanを誰かに紹介するときに、Beep Japanを代表するゲームとして挙げるような作品を教えて下さい。
ロベルト氏:
いろいろなゲームで遊んでいるのでいくつかあるんですが、たとえば社内のみんなが好きだった『LISA: Definitive Edition』には僕も思い入れがあります。ストーリーベースであることが好みだったし、実は個人的には「絶望」のゲームが好きなんですね(笑)ちょっと暗いゲームというか。
──ロベルトさんは陽気な方なのに、Beep Japanは暗めのゲームをリリースされることが多いですよね。
ロベルト氏:
そうそう(笑)メッセージが伝わってくるゲームが好きなんですね。そういうゲームは海外でも多く作られているので、そういったゲームを日本人にも遊んでほしいという気持ちがあります。
──最近のタイトルだと『Undying』も人気ですよね。これも暗めです。
ロベルト氏:
『Undying』も同じように悲しいストーリーですよね。母親がゾンビに噛まれて、自我を失ってしまうまでの限られた時間を描いたゲームなので。ただ、サバイバル要素強めのゲームプレイの方も面白いので、ストーリーを楽しみながら進めてもらえると思います。
『Undying』
──去年から今年にかけて調子がよかったゲームを教えて下さい。
ロベルト氏:
先ほどお話した『LISA: Definitive Edition』は調子がよかったです。パッケージ版にカードゲームやペーパークラフトを加えるぐらい力も入れましたし。作るのも楽しかったですし、ファンの皆さんが喜んでくれたのでよかったです。日本語版しかないのに、海外から購入してくれたファンの方もいました。
それと『Undying』もいろんなリアクションがありましたね。開発もコミュニティもこのゲームが好きみたいで。発売前にいろいろ大変なことがあって、リリースに時間がかかってしまったんですが、ユーザーの反応もよく、売り上げにも満足しています。
──これからリリース予定のゲームとしては、今回大々的に展示されていたこともあり、やはり『JDM』に注目が集まっているように感じます。
ロベルト氏:
うちはレースゲームのパブリッシングは今回が初めてなんですが、『JDM』に関してはBeep Japanが持つ別の強みが活かせるかなと思っていて。海外の開発者のコミュニティでは日本文化にインスパイアされたゲームの開発は常に人気があります。僕たちもそういうゲームが好きで、そういうタイトルを扱うことが多いんです。『JDM』もテーマが「ジャパニーズドリフト」ということで、日本の雰囲気の再現が丁寧に行われているんです、田舎の風景とか……たまにやりすぎな感じもあるんですが(笑)
──道がめちゃくちゃ細いですよね。
ロベルト氏:
そうそう(笑)装飾も日本というよりは中国っぽくないか?という部分もあるにはあるかもしれないんですが、オマージュとしての日本ということで……(笑)
──リアルな日本というよりは、日本文化をベースにしたファンタジージャパンというか。
ロベルト氏:
そうですね、外国人が想像する日本という感じの。日本の田舎道シミュレーター的な要素もあり、『JDM』はウィッシュリストの伸びに勢いがあっていい感じです。ほかに用意している新作としては、『inKONBINI』があります。ジャパンインスパイアという点では『JDM』と同じカテゴリですね。
ちょっと長い話になるんですが、開発者のDmitry Kluev(以下、ディーマ)氏とは親交がありまして。僕が『シェンムーⅢ』の開発に携わっていた時、鈴木裕(『シェンムーⅢ』の開発総責任者)と一緒にドイツのgamescomに出て通訳をしていたんです。そこで『シェンムー』シリーズの大ファンであるディーマと握手をしたのが出会いだったんですが、僕はすっかり忘れてまして(笑)
そこから半年以上たったあと、六本木のバーですごく目を合わせてくる外国人と遭遇して、「なんか見てくるな……」と思っていたら、それがディーマだったんです。偶然ですよね。『シェンムー』の話から始まって、今作っているゲームとして紹介してもらった『inKONBINI』を遊ばせてもらったらめちゃくちゃ面白くて。こっちもウィッシュリストの勢いがよくて、世界でちょっとした話題作になっています。
──そう考えると、Beep Japanは「日本そのものではないけれど、日本への愛から生まれた」みたいな作品のパブリッシングを得意としつつあるんですね。
ロベルト氏:
そういうブランディングになってきた気はしますね、確かに(笑)
──ほかに準備されているタイトルについて教えて下さい。
ロベルト氏:
『JDM』『inKONBINI』以外で、今回TGSで出展しているタイトルとしては『NanoApostle』があります。ゲームとしてはボスラッシュのソウルライクアクションで、アニメ風のビジュアルが特徴です。開発を担当するのは台湾ゲームスタジオ18Light Gameで、パブリッシングはPQubeとBeep Japanで協力しています。『Mandragora』もソウルライクで、ハードコアな横スクロールアクションが売りです。弊社が以前リリースした『Death’s Gambit: Afterlife(デス・ギャンビット:アフターライフ)』にも似ていますが、こちらはピクセルアートではなく3Dで描かれています。
──言われてみれば、Beep Japanはジャパンインスパイアなタイトルかハードコアなタイトルのどちらかをよく扱っている印象です。
ロベルト氏:
『Atomic Heart』はハードコアな方ですよね。そういったゲームもクリエイティブなものを感じられるので個人的に好きです。もう一つの出展タイトル『Long Gone Days』は戦争をテーマにしたJRPGインスパイアのゲームで、タクティカルRPGとしての面もありつつ、メッセージ性も強めです。
──『Long Gone Days』はSteam版のリリースからかなり時間を空けてのSwitch版リリースですよね。なぜこのタイミングなのでしょうか。
ロベルト氏:
このタイトルもまたテキストが多くて、時間がかかってしまったんですよ(笑)なのでパブリッシング自体はだいぶ前に決まっていました。
──どのゲームも、今思うとBeep Japanのカラーとマッチしているように感じられますね。
ロベルト氏:
わざとなのか偶然なのか……(笑)
──これからもジャパニーズライクなもののパブリッシングは期待してもいいでしょうか。
ロベルト氏:
期待しても大丈夫です。
──最後に日本のユーザーに伝えたいことはありますか。
ロベルト氏:
皆さんにはぜひ、弊社公式X(Twitter)のアカウントやウェブサイトをチェックしていただき、もし気に入りそうなものがあれば、そのゲームを試していただけるととてもうれしいです。
X:https://x.com/BeepCompany
ウェブサイト:https://beep-company.com/
──ありがとうございました。
[執筆・編集:Daijiro Akiyama]
[聞き手・編集:Ayuo Kawase]