Steamにて、「あなたが買うのはゲームソフト自体ではなくプレイ権」と明示されるように。永続所有じゃないと「買う」と書いちゃいけない米州法への対策か
Steamにてデジタル製品を購入した際に、ユーザーに対し「(ゲームソフト本体ではなく)ライセンスの購入」である旨を告知するメッセージが表示されるようになった、と報告されている。これはアメリカ・カリフォルニア州での新法案成立が影響しているようだ。海外メディアEngadgetなどが報じている。
Steamの利用規約では、コンテンツおよびサービスは「ライセンス供与されるものであり、販売されない」と記載されている。そしてライセンスがユーザーに対して供与されたとしても、「権原または所有権が付与」されることはない、としている。つまり、Steam上でゲームを購入したとしても、ゲーム販売元やSteamを運営するValve側などの都合によって、そのゲームがプレイできなくなる可能性がある、ということだ。
今回海外メディアや一部ユーザーなどから、Steamについてそうしたライセンスに関する記述の追加が報告された。具体的には、Steamストアページからゲームなどを購入する際の「支払に進む」ボタンの下に、あくまでも購入するのはソフト自体でなく利用権となる「製品ライセンス」であることが明記されるようになっている。
このように変更された経緯には、今年9月にアメリカ・カリフォルニア州で制定され、2025年から発効される州法「AB 2426」が関係していると思われる。AB 2426は、消費者保護に関係する法律だ。
同法ではたとえば、電子書籍や楽曲などのデジタルコンテンツを購入するとき、それが永続的な所有権の入手ではなくSteamでの購入のように「ライセンスの供与」という形態をとっている場合には、「buy(買う)」「purchase(購入する)」といった言葉が使用できなくなる。しかしながら、あくまでライセンスの供与であることを明示したり、消費者に確認を取っている場合にはそうしたワードの使用は引き続き可能なようだ。今回Steamは、カリフォルニア州での法案成立にともなって、全世界向けにも対応をおこなったかたちだろう。
なお「AB 2426」が成立した背景としては、デジタルメディアの販売にあたる諸問題があると考えられる。一例ではAppleの提供するApp Storeについて、2021年に集団訴訟を起こされている(Hollywood Reporter)。これはユーザーが「購入した」コンテンツについて、実際にはApple側にアクセス権を停止する権利があり、「誤解を招く表記である」とするものである。「AB 2426」では、そうした記載は虚偽広告にあたるとして、民事罰の対象となることが明記されたかたち。
ゲームの所有権については、今年3月に告知された『The Crew』のサービス終了にあたっての騒動が記憶に新しい。同作はサービス終了が告知されプレイ不可能となった。これが「所有権を奪っている」として、ユーザーから不満や怒りが表明されていた。なお販売元のUbisoftのエンドユーザー使用許諾契約書では、あくまで使用の許諾であり、販売されたわけではないとの記載がある(関連記事)。しかしUbisoftの公式ページなどでは本稿執筆現在「購入」というワードが引き続き使われている。Steamのように、こちらにもなんらかの調整が入る可能性はありそうだ。
ダウンロード販売については先述のように、サービス終了/配信停止、そのほかアクセスの停止を契機として、“所有権”の所在についてたびたび問題となることがある。今回カリフォルニア州での「AB 2426」成立によって、少なくともSteam上ではあくまでライセンスの供与であることが明記されるようになったかたちだ。
ちなみにGOG.comでは配信タイトルのすべてについてDRMによるオンライン認証などを必要とせず、ゲームファイルさえ所有していればオフライン環境でも遊べる「DRMフリー」が特徴。そのためGOG.comではSteamでの対応のように、告知や警告を出さずとも「buy」といった表記を使える模様。GOG.comは公式Xアカウントにて今回の話題に触れ、同ストアの購入ページに「“GOGでの購入はオフラインインストーラーを提供し、あなたから奪われることはありません”と追記しようか」と冗談めかしつつ同ストアの強みをアピールしている。今後他プラットフォームなどでも購入表記の変更がおこなわれるか、動向が注目されるところだ。