『アークナイツ:エンドフィールド』「日本語試遊版」先行プレイ感想。期待値が上がる戦略×工場運営RPG


ひとりMMORPGのような戦闘と探索に、超巨大工場地帯の運営を組み合わせたゲームとして、『アークナイツ』の関連作として注目が集まっている『アークナイツ:エンドフィールド』。このたび東京ゲームショウ2024にて試遊する機会に恵まれたため、その模様をお届けしよう。先に言ってしまえば今回の試遊内容は、以前、限定的に行われた「テクニカルテスト」を日本語化して用意した、というものであった。同テストを筆者は経験しているという前提のもと、記事が進行することに留意してほしい。

『アークナイツ:エンドフィールド』は『アークナイツ』の関連作となる、3Dリアルタイム戦略RPGだ。基本プレイ無料とアイテム課金制を採用している。リリース日は未定。対応プラットフォームはPC、iOS、Android、PlayStation5を予定している。プレイヤーは「エンドフィールド工業」の管理人として、未知の惑星「タロⅡ」を仲間とともに開拓していく。

日本語での試遊体験


筆者としては2度目のタロⅡ訪問となった、今回の試遊体験。まず目に入ったのは、字幕が日本語になっていることだ。キャラクターも日本語で会話を行っている。本作は関連作である『アークナイツ』同様、物語に関する背景設定が非常に練り込まれていることに合わせて、作中では専門用語が飛び交う。また、目玉となる体験のⅠつ「集成工場システム」においても、素材を中心に専門用語が湧き出てくる。前回の試遊は英語のみになっており、言語の壁に振り回されながら苦労したものだが、今回はスムーズに作品の中へ入って行ける。翻訳の質については及第点に感じた。しかし、会話時に口が動かないことが気になった。没入感に影響があるため、製品版では口部のフェイシャルアニメーションの実装を願っている。

『アークナイツ』に登場する名前を見かけ感慨にふけったあと、戦闘に関するチュートリアルが始まる。本作の戦闘はキャラクターのシナジーで戦う内容になっているが、俗に言う『原神』ライクではない。基本的には4人パーティを組み、うちひとりを操作、残りが自動戦闘を行う。タンクやアタッカーが敵の注意を引き付けつつ、敵の攻撃時、スキルによってカウンターを取る。もしくは敵を浮かせたりなどして行動を阻害する。回復役が減った体力をカバーし、サポーターが味方にバフをかける。専用ゲージを削りきって敵を「ブレイク」状態にしたら、一気に攻撃をしかけていく。戦闘中のフィールドにはスキルの「属性」に誘発して発動するギミックも仕込まれているため、あえてスキルを敵がいない場所に打つのも重要である。


これをすべて1人のプレイヤーがキャラクターを切り替えつつ臨機応変に行っていく。ゲームデザインとしては『ゼノブレイド』シリーズや、『ドラゴンズドグマ2』など、ロールごとのシナジーで戦うMMORPGを、ソロプレイ化した作品に近い。こうしたゲームの面白さはいかんせん、キャラクターのバリエーションに依存すると筆者は考えているが、現時点ではどうしてもキャラクター数が少ない。リリース後は敵の注意を引くタンクに特化したキャラクターや、ヒーラーに特化したキャラクター、複合的なロールを持ち合わせたキャラクターなどが増え、戦術が拡大していくことだろう。

これは戦闘とは関係ないが、日本語ボイスが実装されたことによって、キャラクターたちの人物像が明確化したことが嬉しい。また、プロフィールについても日本語で読むことが可能になっていた。ただでさえ酷い、民族・階層差別や社会の軋轢が描写される『アークナイツ』の世界において、さまざまなパーソナリティを持つ彼らがどのような物語を展開していくのか楽しみである。


チュートリアルを終えたら、ちょっとしたクエストをプレイする。開拓地状態であるタロⅡの無法ぶりを表現する内容だ。本作はフルボイスであり、会話中に選択肢があるのも良い。ローカライズもしっかりしている。フィールドの散策体験は、上述した類型作品に少し似ている。「侵食」した世界を渡り歩く簡単なジャンプアクションと、シンプルな謎解きがあり、シームレスに発生する戦闘がある。戦闘の難易度はキャラクターの育成段階に応じて易化していくため、勝てないと感じたときは素直に育成を行うといいだろう。育成要素については、キャラクターのレベルとスキルレベル、武器と4部位の防具がある。武器は敵やフィールドを探索して入手する。(武器の課金要素が存在するかは不明)防具は後述する「集成工場システム」で生産するのがメジャーとなる。もちろん装備のパラメーターがランダムで変動する「厳選」要素もある。


クエストをこなしたらボス戦だ。本作の主だった敵は異形の怪物「アンゲロス」だが、みな角のような部位を持ち、天使のような輪を冠している。ボスは範囲攻撃や追尾弾を駆使して攻めてくるが、ダッシュやジャンプでじゅうぶん避けきれる。適切なタイミングでスキルを発動し、体力が減ったら回復アイテムを使う。十分な育成とゲームの基本ができていればクリアは難しくなかった。


最後は「集成工場システム」の体験だ。今回の試遊では既に出来上がった現場を見学するという形式であり、追加でさらに設備を建設することも出来た。「集成工場システム」は本作における目玉の1つである。プレイヤーはフィールドを探索し障害を払い除け、送電網を拡大しながら、移動設備や工場設備を建設、進化させていくことで、タロⅡという惑星を開拓していく。遊びとしてはいわゆる工場運営シミュレーターそのままとなる。プレイヤーは送電線網を広げ、素材の自動採取マシンを設置し、ジップラインを引き、素材を加工し、消費アイテムや装備品、新たなマシンを作り続ける。加工マシン同士をベルトコンベアで大量接続することで形成される工業地帯は圧巻のひとこと。材料がモリモリ流れていく光景を眺めるだけでご飯が進む。生産自体はゲームを終了しても継続される設定なため、工場を拡大するほど、プレイヤーの体験は快適になっていく。(採掘した素材の配達に関してはドローンが行うという設定のようで、ゆえにフィールド全域がベルトコンベアまみれになることはない)

筆者として気になるのは、本作がスマートフォンにも対応しているという点だ。この物量を並みのスマートフォンで描画し続けることは果たして可能なのだろうか。可能なのだろう。時代の進歩をひしひしと感じた。


以上が今回の試遊体験となる。『アークナイツ』の時点からしてそうなのだが、やりたいことに挑戦し、そのエゴを押し付けるどころか、消費者をぶん殴ってくるようなゲームデザインを実装するハイパーグリフを私は尊敬する。インプレッションとしては以前行われた「テクニカルテスト」を日本語化して用意した、という内容であり、良くも悪くも開発段階にあるという印象である。

特にキャラ不足による戦闘体験のバリエーションや、工場設備の設置に伴う手触りに関しては、リリース時に改善を期待したい。とはいえ、その姿を「エゴ」と形容できるほどには唯一無二な体験を提供してくれる本作。初報から長い事待っただけのことはあったと、改めて筆者は感じている。今後の情報展開を、首を長くして待ちたいところだ。