PlayStationのコントローラーが“ブタの遠隔手術”低遅延ネットワーク実験に活用される。スイスで医者が操作すると、香港のブタの胃で内視鏡が精密動作

Image Credit: The Chinese University of Hong Kong

香港中文大学医学部とスイス連邦工科大学チューリッヒ校は8月26日、豚に対する遠隔手術実験を実施し成功したとの報告をおこなった。低遅延のネットワーク技術を活用し、スイスから、香港にいる豚への内視鏡手術が成功したという。なおこの実験では、PlayStation向けコントローラーが用いられたようだ。海外メディアのFox Newsなどが報じている。

今回の実験に用いられたとみられるのは、PlayStationMove ナビゲーションコントローラーだ。PlayStationMove ナビゲーションコントローラーはPS3向けに2010年に発売。スティック・十字キー・○ボタン・×ボタン・L1・L2が固めて搭載された片手用コントローラーで、PlayStationMove モーションコントローラーと併用することが想定されている。なおこのほか発表に際して披露された画像ではPS5向けのDualSenseで内視鏡を操作するイメージも確認可能だ。


実験において実施された手術は、磁気内視鏡(magnetic endoscopes)を用いた、豚に対する内視鏡検査だ。この手術は香港の手術室でおこなわれた。しかし担当医がいるのは、約9300キロメートル離れたスイス・チューリッヒで、遠隔操作による手術がおこなわれた。


公開された映像を確認する限りでは、先述したPlayStationMove ナビゲーションコントローラーが用いられている。映像を見ながら、コントローラー操作で器用に内視鏡が動かされているようだ。

なお香港中文大学の発表によれば、遠隔操作による手術にあたっては、信頼性の高い高速なネットワーク接続が必要になるとのこと。今回の実験では通信規格としてリアルタイムの双方向通信を行えるWebSocketプロトコルを使用することなどにより、9300km以上の距離があるスイス・香港間の遠隔操作の遅延を0.3秒以下に抑えることに成功しているという。きわめて低遅延での操作を実現することで、たとえば磁気内視鏡を体内で180°Uターン(反転)させることができたとのこと。今回用いられた磁気内視鏡が、標準的なデバイスと同等に自由に動作することを証明できたという。

Image Credit: The Chinese University of Hong Kong

今回の実験を受けて、次のステップとして人の胃に向けた手術でも応用される計画だという。ゆくゆくは世界中の外科医がいない地域でも手術を可能にすることが期待されており、胃腸ガンの診断や治療ができるようになる見込みとのこと。また胃腸だけでなく、神経血管系や胎児の手術にも応用できる可能性があるそうだ。

豚を対象に、低遅延の遠隔操作手術が実現されたという今回の実験。なお手術がやや“ニッチ”なコントローラーともいえるPlayStationMove ナビゲーションコントローラーを用いておこなわれたとみられる点も、注目されるところだろう。数多くのボタンを備えた片手用コントローラーとして、白羽の矢が立ったのかもしれない。また先述のとおり発表ではDualSenseで操作されているイメージも公開されており、幅広いコントローラーで操作可能なのだろう。

ゲーム用コントローラーは汎用性が高く誰にでも扱いやすい点が特徴。これまでにも医療目的以外にも軍事目的や土木工事などに応用される例もみられた(関連記事1関連記事2)。ゲーム用コントローラーは、ゲームに限らず幅広い用途の操作デバイスとして引き続き注目されているようだ。