急成長ゲームエンジンGodot Engine公式、突如政治的立場を表明し物議醸す。反論アカウントを軒並みブロックし批判殺到


ゲームエンジン「Godot Engine」の開発を支援する非営利団体Godot Foundationは9月30日、スタッフおよびコミュニティに対するハラスメント行為が確認されたとして声明を発表した。これに先立っては、同ゲームエンジンの公式SNSによるある投稿が波紋を呼んでいた。

Godot Engineは、PC/モバイル/Web向けゲームおよびアプリを制作できる2D/3Dゲームエンジンだ。オープンソースとして提供され、完全無料で利用可能。開発にかかるコストは寄付によって賄われている。インディーゲームを中心に採用例が増えつつあるゲームエンジンである。


今回の一件の発端は、Godot Engine公式Xアカウントの9月27日の投稿だった。内容としては、「どうやら最近ゲームエンジンは“Woke”とみなされているようだ。であれば我々は何も言うことはない」とし、Wokot(WokeであるGodot Engine)で開発されたゲームを紹介してほしいと呼びかけた。

Wokeとは目を覚ますという意味で、人種や性別に関する差別をはじめとした社会問題に目を向ける言葉として近年使用されている。一方で、Wokeはマイノリティのための活動を指すことが多く、その活動をめぐって賛否が生まれることもある。本来はポジティブな言葉ではあるが、最近では転じて揶揄する意味合いで使われることが多い。

今回のGodot Engine公式Xアカウントの投稿の背景には、とあるゲームスタジオがUnreal Engine 5を用いていると述べたのに対し、「Wokeなスタジオは独自にエンジンを開発できないから、既製品を使うのだ」とする、あるユーザーからの指摘があった。そして、その指摘に荒唐無稽であるとして批判の声が上がっていたなか、Godot Engine公式Xアカウントは、前述したように「どうやら最近ゲームエンジンは“Woke”とみなされているようだ。であれば我々は何も言うことはない 」と受け入れるようなコメントをした格好だ。Wokeを支持することを表明する意図があったのか、上述の指摘に対するジョークだったのかは不明である。


このGodot Engine公式Xアカウントの投稿に対しては、支持する声もある一方で、Wokeに嫌悪を示すコメントも数多く寄せられることに。なかにはハラスメントともいえる攻撃的な言葉が同アカウントだけでなくスタッフに向けられることもあったようだ。また、公式アカウントとして政治的な問題への言及は避けてほしいと求める声も聞かれる。

こうした騒動を受けて、今回Godot Foundationがハラスメント行為を非難する声明を発表した。上の言動において火がついた批判を、沈静化させる意図だろう。また声明では、コミュニティを保護しようとハラスメント行為者を(SNS上で)ブロックする際に、誤ってブロックしてしまった人がいるとも言及し、ブロックの解除を要求するためのフォームを公開した。

というのも、この期間にGodot Engine公式Xアカウントは、批判的な意見の投稿者を次々にブロックしていた模様。また、たとえばLife Art Studiosの代表Starkium氏は、政治的なことよりもゲームエンジンの話題に集中してほしいと求めたところ、同様にブロックされたという。同氏のスタジオは、Godot Engine開発に高額の出資をおこなっていたが、この対応を受けて出資を引き上げることにしたとのこと。同氏が誤ブロックの対象と判断されるのかどうかは現時点で不明。


今回Godot Foundationは、騒動の発端となったGodot Engine公式Xアカウントの投稿内容については特に言及せず、否定も肯定もしていない。投稿の真意ははっきりしないものの、センシティブな話題に触れたかたちで実際波紋を呼ぶこととなったが、投稿は現在も残されている。現実として、今回のような投稿に対しては賛否両論が巻き起こることは想像に難くなかったはず。Godot Engineがオープンソースソフトウェアである以上は、特定個人の思想でブランディングされるのは関係者にとっても避けたいはず。そうした経緯もあり、Godot Engineのコミュニティマネージャーが特に批判されている。今後Godot Engineコミュニティに何らかの影響が及ぶことになるのかどうか注目されそうだ。