『ステラーブレイド(Stellar Blade)』開発元ら、別会社「Stellarblade合同会社」から訴えられる。名前が完全に被っていて困る


SFアクション『ステラーブレイド(Stellar Blade)』の開発元であるShift Upとパブリッシャーであるソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)が今月、同作をめぐって訴訟を起こされていたことが報じられた。 原告となるのは「Stellarblade」なる映像制作会社で、『ステラーブレイド(Stellar Blade)』という名称が被ることで同社の商標権が侵害、ビジネスに損害が与えられているとして損害賠償と差し止めを要求している。米IGNが報じている。

『ステラーブレイド』は、侵略者から地球を取り戻すために戦うアクション・アドベンチャーゲーム。開発を手がけるのはShift Upで、『勝利の女神:NIKKE』『デスティニーチャイルド』といったスマートフォン向けタイトルを手がけている韓国のゲーム開発会社だ。『ステラーブレイド』はSIEのパブリッシングの元、2024年4月26日に発売された。

そんな『ステラーブレイド(Stellar Blade)』に対して、今回訴えを起こしたのは、米国を拠点とする合同会社「Stellarblade LLC」及びそのオーナーであるGriffith Chambers Mehaffey氏。本作のタイトルとほぼ同じ名前の会社である。同社は9月初頭にShift Up、SIE、および匿名の保険会社を相手取り、損害賠償および利用差し止めの命令を求めてルイジアナ州の裁判所に訴状を提出している。

Stellarblade合同会社は2010年に設立されたとされている。ルイジアナ州を拠点とし、映画・ドキュメンタリー・コマーシャル・ミュージックビデオの制作サービスなどを提供している。またMehaffey氏は2006年からstellarblade.comのドメインを取得。2011年からは自分の仕事と関連し公開使用していると述べており、ドメインの登録情報からも取得時期が事実だということがわかる(whois.com)。実際に同社の公式サイト(stellarblade.com)とみられるページやVimeoでは、映像制作の実績を示すポートフォリオやStellarbladeとして2010年ごろから活動していた様子が確認できる。なおShift Upによる『ステラーブレイド』公式サイトのドメイン名はstellar-blade.comとなっている。

Stellarblade合同会社の訴えの内容としてIGNが報じる所によると、同社およびそのオーナーであるMehaffey氏は、Shift UpとSIEに対して「Stellar Blade」またはそれに類似する名称を使用することを禁止するよう求めている。そして要求には、Shift UpとSIEが所有する『ステラーブレイド』の記載がある所有物をStellarblade合同会社側に処分のためすべて引き渡すことなども含まれているという。

Mehaffey氏が主張する具体的な被害の内容としては、「検索汚染」などがあるようだ。たとえば、ゲームの『ステラーブレイド(Stellar Blade)』発表以前は、顧客がStellarblade合同会社のビジネスに関する情報をインターネット検索などで簡単に見つけることができたそうだ。しかし、今では「Stellarblade」をインターネットで検索すると、ビデオゲームの 『ステラーブレイド』しか見つからないとのこと。そうして同氏のビジネスが『ステラーブレイド』によって損害を受けていると主張しているかたちだ。また同氏は、ロゴの配色とデザイン化された特徴的な「S」の形をその根拠として、商標が“紛らわしいほど似ている”としている。

Stellarblade LLCのStellarbladeロゴ
Shift Up による『ステラーブレイド』 ロゴ

また訴えの中でMehaffey氏はこれまでの経緯に触れ、Shift Upによる本作の発表時、2019年には Project Eve というタイトルだったとしている。 しかし、この名称は2022年に「ステラーブレイド(Stellar Blade)」に変更され、ほどなくして2023年1月、Shift Upは「ステラーブレイド」をゲーム関連の商標として登録。これを受けてMehaffey氏は2023年6月に「Stellarblade」の商標を自ら登録し、その1か月後にはShift Up社に停止通告書を送付、利用差し止めの請求を行ったとしている。

本件について、Mehaffey氏の代理人はIGNに声明を送っている。いわく、Mehaffey氏がstellarblade.comのドメインを2006年に取得し、長年にわたって公開使用してきたことを考えると、Shift Up とSIEが同一の商標を採用する前に Mehaffey 氏の確立された先行権利を知らなかったとは考えにくいとしている。また、『ステラーブレイド』の発表によってオンライン検索結果を事実上独占し、Mehaffey 氏の長年確立されたビジネスをデジタル上の無名企業に追いやり、10 年以上かけて築き上げてきた同氏の生活を脅かしていると述べている。

なお本件に関して、筆者観測範囲内においてはShift UpおよびSIEからの声明は発表されていない。Mehaffey氏の訴えの内容が事実であるとすれば、裁判所により同氏のビジネスの先行権利とその保護が認められるかどうかが争点となりそうだ。今後Shift UpおよびSIEがどういった対応を取るのかも含め、“ステラーブレイド対ステラーブレイド”となった本訴訟の行方が注目されそうだ。