基本プレイ無料FPS『Shatterline』SteamからEpic Gamesストアへの完全移行を発表。NFT導入のため
デベロッパーのFrag Labは7月26日、Steamにて配信中の基本プレイ無料FPS『Shatterline』をEpic Gamesストアに完全移行することを発表した。完全移行の背景には、本作に取り入れられる予定のNFT要素と、Steamにおける禁止事項があるとのこと。
『Shatterline』は基本プレイ無料のオンラインFPSだ。PvPモードとしては、キル数を競うTDM(チームデスマッチ)のほか、拠点を巡って戦うConquest、爆弾設置を巡る攻防が展開するPlant-the-Bomb、オブジェクトの進行を巡ってバトルするEscortモードを備えている。また協力PvEモードとして、ローグライク要素を備えているExpeditionモードも収録。ほかのプレイヤーたちと共に強大なボスに挑むことができる。
本作は2022年9月8日に早期アクセス配信を開始し、現在に至るまでサービスを運営してきた。そして2024年6月15日には、本作の完全版のリリースのための準備として、8月1日に早期アクセス配信を終了、サーバーを閉鎖することが発表されていた。またその発表の際、完全版のリリースに伴い、新たなパートナーとの話し合いが行われていることも言及されていた。
続けて7月3日、『Shatterline』はブロックチェーンゲームの運営会社Farawayと提携することを正式に発表した。Faraway社はNFT(Non-Fungible Token)、いわゆる非代替性トークンの仕組みを取り入れたゲームを多数手がける会社だ。また発表の中では同社が手掛けるブロックチェーンゲーム「HV-MTL」とコラボレーションをすることが明かされていた。なおその際、『Shatterline』の正式版の発売がEpic game ストアで行われることも発表。Steamプラットフォームを離れることがほのめかされていた。
そして7月26日、『Shatterline』公式X投稿によって、本作が完全リリースのためにSteamを離れ、Epic Gamesストアに完全移行することが明言されたかたちとなる。
本作がSteamプラットフォームを離れる理由については、『Shatterline』開発陣によって行われたQ&Aで回答がされている。いわく、Steam はすべてのNFT を含むゲームを禁止しているため、Epic Games ストアのほうがNFTのゲームへの統合にあたりはるかに安全であるとのこと。なお、Steam版からEpic Gamesストア版へのユーザー進行状況の完全な移行は、「現実的ではない」とのこと。しかし、一部の移行や補償を含めて協議中だそうだ。
『Shatterline』開発元の説明どおり、Steamでは開発者向けガイドライン上で、「暗号通貨またはNFTの発行や交換を許可するブロックチェーン技術に基づいて構築されたアプリケーション」の公開を禁止している。一方で、Epic GamesストアではNFT要素などを含むブロックチェーン技術に基づいたゲームの配信が認められている。そのため、NFT要素を本作に取り入れるためにEpic Gamesストアに完全移行するという判断が下されたのだろう。
なお本作で実装されるNFT要素として、PvEモードに「HVドローン(HV drones)」を追加するようだ。これはNFTトークンとしての価値を持つほか、ゲーム内でもサポートドローンとして使用可能。PvEモードにおいてプレイヤーをサポートする性能を持つという。このドローンはPvPモードでは使用不可能のようだ。『Shatterline』公式いわく、あくまでオプションとしての機能であり、強力すぎることはなくバランスが取れているものであるとのこと。
しかしNFT要素の導入、及びEpic Gamesストアへの完全移行という決定はユーザーからの強い反発を受けているようで、Farawayとの提携が発表された7月3日以降では、Steamユーザーレビューにおいて本作がNFT要素を取り入れた事を強く非難するレビューが多数投稿されている。本稿執筆時点で直近30日間のユーザーレビューは「圧倒的に不評」ステータスとなるなど、いわゆるレビュー爆撃のような状況となっている。
また、本作ではSteamでの早期アクセス配信時点から、ゲーム内課金要素を実装していた。しかし、Steam版からEpic Gamesストア版へはアカウントの進捗状況の完全移行は難しいということで、Steam版をプレイしていたユーザーからは反発があることは想像に難くない。しかしそれだけではなく、SteamユーザーレビューではNFT要素を取り入れることそのものについての非難、及び本作への失望を語るユーザーが多く見られる。ゲームに取り入れられるNFT要素に対するユーザーからの強い警戒心がうかがえる。
本作は約2年間のあいだ、NFT要素とは無縁で運営を続けてきた。しかし、リリース当初は同時接続者数がピーク時で2万人を超える人気を見せていたものの、その後は長らく3桁前後で停滞しており、プレイヤー数から見るに盛況といえるほどの状況ではなかったようだ(SteamDB)。そんな本作の状況もあってか、前述のQ&Aでは、今回Farawayとの提携を決めた理由について「『Shatterline』 に新しいプレイヤーを呼び込みたいため」であるとしている。Epic Gamesストアへの移行によって本作がどのような経緯をたどることになるのかは、今後の動向が注目される。