「ラスベガスを遊び倒せ!」 ギャンブルとは相反する街で垣間見たアーケードゲームシーンとは?

アメリカ・ネバダ州にある世界有数の一大カジノリゾート、ラスベガス。南北を貫く全長6.8kmに及ぶメインストリートのラスベガス・ストリップには約30以上のカジノホテルが立ち並び、24時間365日眠ることなくその賑わいを見せている。

00アメリカ・ネバダ州にある世界有数の一大カジノリゾート、ラスベガス。南北を貫く全長6.8kmに及ぶメインストリートのラスベガス・ストリップには約30以上のカジノホテルが立ち並び、24時間365日眠ることなくその賑わいを見せている。

谷と砂漠に囲まれた自然の真ん中に一大カジノリゾートを夢見たマフィア、ベンジャミン・シーゲル(のちに暗殺され死亡)によってその礎が築かれ、実業家のハワード・ヒューズがラスベガス中のカジノホテルを買収し続けたことでマフィアの資金源となっていた実情をクリーンに。企業家のスティーブ・ウィンは自身が買収したカジノホテルに噴水・火山ショーを次々と導入したことで街そのものを「エンターテイメント化」させるなど、三人の男によって変貌を遂げたこの街は、税収のほとんどをカジノの収益で賄っている。

カジノエリアに立ち入れない21歳未満の子供やギャンブルに興味のない女性陣といった家族連れや観光客を取り込むために、無料で観覧できるショーやショッピングモールが多岐に用意されているが、子供でも楽しめるように「アーケードゲームエリア」を併設しているところもいくつか存在している。

本記事は各店舗の紹介とともに、AUTOMATON的視点から「“遊び”と反するギャンブルの街でアーケードゲームはどのように親しまれているのか?」を現地取材したものをレポートする。

 

ファミリー層を対象にしたカジノホテル内のゲームコーナー

・CIRCUS CIRCUS

 

ラスベガス・ストリップ北部にある「サーカスサーカス」は名前のとおりにサーカスをモチーフにしたカジノホテルだ。ジャグリングや空中ブランコが無料で観覧できる「サーカスアクト」に、ジェットコースターや小型観覧車を設置した屋内遊園地「アドベンチャードーム」を併設。ファミリー層を対象にしている。

 

セガの『スカッドレース』『デイトナUSA2』、バンダイナムコエンターテイメントの『MOTOCROSS GO!』『湾岸ミッドナイト MAXIMUM TUNE 3』をはじめとするレースゲームが数多く稼動。シフトレバーの不具合やモニターが不調なものもあるが、1プレイ平均25~50セントで楽しめる。

 

二階にあるアーケードゲームフロアには1990年代に日本でも多く稼動していたゲームだけではなく、カーニバルマシン(お祭りの縁日でよく見かける射的や輪投げに近いもの)が所狭しと並んでいる。その光景は子供のみならず大人でも思わずワクワクしてしまうことだろう。

 

日本では見慣れないカーニバルマシンだが、景品のぬいぐるみ欲しさに現地の子供たちが親の前で駄々をこねる様子は世界共通。また、併設されている「アドベンチャードーム」内にもアーケードゲームがいくつか設置されており、隅から隅まで余すことなく堪能できる。

 

・merlin’s arcade(Excalibur)

 

ラスベガス・ストリップ南部の交差点、ニューフォーコーナーでひときわ目立つお城型のカジノホテル「エクスカリバー」。地下一階に構える広面積なアミューズメントフロア「Fun Dungeon」内にあるのがアーケードゲームフロア「merlin’s arcade」だ。

ちなみにアメリカのアーケードゲームコーナーでは、自身のプレイ結果に応じてチケットが払い出される「リデンプションマシン」というゲーム機が人気を博している。チケットの枚数に応じてマグカップやぬいぐるみといったちょっとした景品と交換できるのだが、カウンター前ではビニール袋にたんまりとチケットを貯めこんだ親子連れを見かけることも少なくない。

 

上記の「サーカスサーカス」とラインナップは似通っているが、どちらかといえば2000年代のゲームが多く稼動している印象。アクセスが便利なニューフォーコーナーにあるカジノホテルであるだけに、老若男女問わずに賑わいを見せている。

 

・TIME OUT(The ORLEANS Hotel)

 

ラスベガス・ストリップから少し離れた所に位置するオーリンズホテルは、もともと地元民をターゲットにしたカジノを展開。親子連れや年配の客層が多いため、カジノ以外にも映画館やボウリング場を併設。アーケードフロア「TIME OUT」はバンダイナムコエンターテインメントアメリカが運営しており、日本で生まれた『ギャラガ』や『パックマン』も現代向けにリメイクしたリデンプションマシンを数多く用意している。

 

カウンターにぬいぐるみやグッズがぎっしりと並んでいる様子は、いまもなお『パックマン』の人気の高さを物語っている。どれもこれも気になるアイテムばかりなので、リデンプションマシンでついつい熱くなってしまうこと必至。

 

1プレイ遊ぶために投入するトークン式(1ドルでトークン4枚)から、店舗が独自に用意したカードに定額の料金をチャージできるシステムへと切り替えたばかりだという。日本でもタイトーが自社で運営する「タイトーステーション」でPasmoやEdyといった電子マネーでプレイ料金を投入できる仕組みを築いているが、その利便性は世界でも広まっていくのかが今後の注目点になるだろう。

 

・GAME WORKS

 

ラスベガス・ストリップから南にあるショッピングモール「TOWN SQUARE」の一角に店舗を構える「GAME WORKS」は、独立型のゲームセンターとして営業している。オールドゲームよりは近年のタイトルの稼動が多く目立った印象だ。サッカーやアメリカンフットボールを観戦できるスポーツバーや、競技への参戦と閲覧が可能な「e-Sports」ラウンジ、さらにはボウリング場まで併設しており、大型遊戯施設としての側面も兼ね合わせている。

 

購入する金額に応じて、マシンに投入できるクレジットがチャージされたカードを受け取るという電子マネーシステムを採用。入り口には飲食カウンターが用意されており、ちょっとしたファミレスのような店構えだ。

 

・お酒を提供するバーと遊びを提供するアーケードの複合、バーケード

日本では風俗営業第8号の法令により、ゲームセンターでお酒を提供することはできないが、お酒を提供する「バー」と遊びの場である「アーケード」を組み合わせた「バーケード」はアメリカ各地に存在しており、ラスベガスの地でも営業している店舗がある。

 

・HI SCORES BAR-ARCADE

街の中心地よりも大きく南に離れているため、徒歩もしくはバスでの移動がメインとなる観光旅行において足を運ぶには少し不便ではあるが、壁一面に可動しているアップライト筐体の数々は圧巻の一言だ。

 

バーということで昼間よりも夜のほうが来客は多く、複数のゲームサウンドが混じりあったBGMをツマミにしてカウンターで飲むのが好きだという人や、仲間内でスコアを競い合う若者たちで賑わっているという。

 

ここまでに紹介したフロアや店舗を見ると営業面での不安はないようにも思えるが、北部の繁華街・ダウンタウンの事情はそうでもない姿を見せている。代表的な観光名所として、LEDによるスクリーンショーが楽しめる全長約400メートルのアーケード「フリーモント・ストリート・エクスペリエンス」があるものの、勢いのあるラスベガス・ストリップに一度奪われた観光客の流れを完全に戻すことはできずにいるという。

ダウンタウンにて2011年に開店したバーケード「INSERT COIN(S)」は、2015年の7月に家主からの立ち退きを宣告されたという。現在でも建物と看板はそのまま残されており、いまにも再オープンしそうな様子はどこか切なさを誘うものとなっていた。

 

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ラスベガス・ストリップもここ数年で観光客の対象をファミリー層から若者層へとシフトしようとする動きが活発だという。カジノホテル「MGMグランド」も、2014年にナイトクラブ「ハッカサン」を併設。世界的にも有名なDJを招いており、毎週末には入場待ちで二十~三十代の男女が長蛇の列をなしている。

上記で挙げた「TIME OUT」を取り仕切るNAMCO USAディストリクト・マネージャーのジェシー・マインスター氏は「ラスベガスという街が対象とする層を変えても、ゲームを無邪気に遊んでくれる子供たちや、ゲームを愛してくれている人がいる以上、我々は悲観はしていませんよ」と話している。日本でも時おりカジノ法案に関する是非が話題になるが、パチンコ・パチスロメーカーだけではなく、ゲームメーカー直営店や大型資本チェーンのアミューズメント施設がどのようなアクションをとるのか、これからも併せて注目していきたい。

Takuya Kudo
Takuya Kudo

1989年生まれ。UNDERSELL ltd.所属。ビデオゲームとピンボールをこよなく愛するゲームライター。新旧問わない温故知新のゲーム精神をモットーに、時代によって変化していくゲームセンターの「いま」を見つめています。

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