サウナゲーム開発元、「チームでサウナ入浴必須」条件の大事さを求職者に熱弁するもしつこいとして批判浴びる。謝罪するもサウナ必須の主張は譲らず

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デベロッパーのSpectrum Studiosは先週、同スタジオの「採用条件」にまつわる謝罪のメッセージを動画で公開した。「求職者に向けて、採用条件として裸でのサウナ入浴を求めた」として批判を受けていたためだ。ただし、同スタジオはサウナにまつわるゲームを開発しており、同条件自体は以前より定められていたようだ。Eurogamerなどが伝えている。

Spectrum Studiosはポーランドを拠点とするデベロッパーだ。かつてPeople Can Flyでプロデューサーなどを務めていたという、Jacek Piórkowski氏が立ち上げたと見られる。同スタジオについては筆者観測範囲内にて、現状公式サイトなどは公開されていない様子だ。

*Spectrum Studiosのロゴ


そのため不明な点も多いものの、LinkedInにおける公開情報では、今までになかったような新作ゲームを作る事を目的としていることが明かされている。新作は、『ライフ イズ ストレンジ』のナラティヴや『ファイナルファンタジー』シリーズのストーリー/キャラクターなど、さまざまなゲームの要素を混ぜた作品になるという。

同作品の主人公はサウナマスターとなり、香りや音楽といった要素も含めた多彩なサウナを提供することになるそうだ。また、そのために開発スタッフには「サウナ入浴セッションへの参加(作品理解のために必要なので必須)」が義務付けられるとの採用条件が記されている。


発端は「雇用者から求職者へのアプローチ」

Spectrum Studiosとその代表であるPiórkowski氏に批判が寄せられる発端となったのは、ゲーム開発者Aleksandra Wolna氏とのLinkedIn上でのやりとりだ。Wolna氏は、現在求職中の開発者だ。というのも、同氏はかつてデベロッパーのTaming Chaos(パブリッシャー・All in! Gamesの傘下)でナラティヴデザイナーとして活動していた。しかし、All in! Gamesについては、現在傘下スタジオの従業員などに賃金を支払っていないといった報道がある(CD-Action)。そうした状況もあり、Wolna氏はLinkedIn上にて職を求める呼びかけを投稿していた。

そんなWolna氏の投稿に対して、反応を示したのがPiórkowski氏だった。同氏はWolna氏のポートフォリオを求めるも、上述の採用条件を確認したWolna氏より「サウナ入浴セッションを拒否できるのであれば、ポートフォリオを送る」と丁寧に返答されることとなった。Piórkowski氏は返答を受けて、さまざまなサウナの種類の違いを体験して理解する必要があると熱弁。「(Wolna氏の性別にちなんでか)女性だけのサウナ入浴会も開ける」と提案している。そしてWolna氏は「ジェンダーとは関係なく、裸やそれ同然の格好になることは仕事に必要ないと考えている」とまた丁寧に返答し、その場でのやりとりは終わっている。

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なぜか食い下がるPiórkowski氏

しかしその後、Piórkowski氏はなぜかWolna氏にふたたびアプローチ。Wolna氏から「裸でのサウナ入浴セッションが必要ならば働けないと伝えたはず」とふたたびきっぱり断られると、返事として「名前を忘れていた」と言い放っている。ここで別のユーザーが、この特殊な採用条件について疑義を唱えた。するとPiórkowski氏はヒートアップし、「サウナに実際に入らなければ違いはわからない」「作品のためにサウナセッションが必要」「裸になる必要があるのは、タオルは不衛生になるからだ」といった持論を展開し始めた。

Wolna氏はPiórkowski氏の主張に対して、考えはわかったとしつつ「職務のなかで裸にならなければならない点を問題にしている」と明確にした。すると、Piórkowski氏は反論。Wolna氏はサンプルで実力を証明することもできたのに、お互いに時間を無駄にしたとコメント。さらに「うちのナラティヴガールたちは、素晴らしい脚本を書くために僕とサウナに入らなきゃいけない(My Narrative girls had to go to sauna with me to came up with amazing script)」と言い放った。

Piórkowski氏は一連のやり取りを目にしたユーザーたちから反論を受けるも、主張を曲げず熱弁し続けた。男性が女性に共にサウナに入ることを要求しているようにも見えるこの様子は、開発者のAdrian Chmielarz氏によりFacebookに向けても拡散され、Piórkowski氏並びにSpectrum Studiosが批判を受けることとなったわけだ。

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そして謝罪へ

日本時間6月20日ごろ、Piórkowski氏はSpectrum StudiosのLinkedInページを通じて、一連の発言について謝罪する動画を公開するに至った。Eurogamerが掲載した英語翻訳によれば、否定的な反応は同氏にとって予想外だったという。同氏はWolna氏を辱めたりする意図はなく、言葉選びが悪く意図を説明できていなかったとした。また、「サウナガールたち」との言葉は、当時のナラティヴチームが女性のみで構成されていることを伝えるための表現だったという。

Piórkowski氏は続けて、サウナ文化について情熱を燃やす人材を探すため、サウナ入浴セッションを“鉄則”としたと説明。男性または女性のみのセッションも開催できると繰り返し強調している。そして、「今後は意図が誤解されないよう言葉選びに気をつける」としつつ、Wolna氏に謝罪の意を伝えている。

Wolna氏側はEurogamerに向けて、「All in! Gamesの賃金未払より、サウナの方が話題になってしまったのは残念」としつつ、“サウナマン”が問題視され、不適切な採用姿勢についての議論が起こったことはよかったとコメントしている。また、同氏はPiórkowski氏の謝罪を受け入れるとのこと。