『エルデンリング』宮崎Dが『ダークソウル』当時から保つデザイン美学明かす。醜さだけでも、美しさだけでもだめ
フロム・ソフトウェアは6月21日、『エルデンリング』のDLC「SHADOW OF THE ERDTREE」を発売予定。本作のディレクターを務める宮崎英高氏が、初代『ダークソウル』当時から現在に至るまで保ち続ける美術デザインにおける美学について、海外メディアPC Gamerに向けて語った。
『エルデンリング』は、フロム・ソフトウェアが手がけるアクションRPGだ。PC(Steam)およびPS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S向けに2022年2月に発売された。本作は広大なオープンワールドを舞台としつつ、『ダークソウル』シリーズなど同スタジオ過去作のゲームプレイを色濃く継承。ボス戦闘をはじめ、手強い調整となっている戦闘なども特徴だ。
そして6月21日には、本作にとって最初で最後となるDLC「SHADOW OF THE ERDTREE」がリリース予定。新たな舞台となる「影の地」にて、神人ミケラにまつわる物語が描かれる。 このたび、海外メディアPC Gamerは宮崎氏に向けてインタビューを実施。こぼれ話として、宮崎氏が『ダークソウル』当時から守っている、自身の個人的な美学について語ったそうだ。
インタビューを実施した記者のFenlon氏は、今回の質問にあたり、設定画集「DARK SOULS DESIGN WORKS」海外版における、過去の宮崎氏インタビューについて言及した。そちらは、宮崎氏が「洗練性(refinement)、優雅さ(elegance)、威厳(dignity)といった要素をとても重視している」と語り、単にグロテスクなだけだったり、スプラッター的なだけだったりするデザインは認めないとする内容だ。
また、同過去インタビューでは『ダークソウル』『Bloodborne』『Sekiro: Shadows Die Twice』などのデザインやコンセプトアートに携わった藁谷雅典氏も逸話を語っている。藁谷氏がドラゴンゾンビ(Undead Dragon)のデザインを手がけていた際、草案として蛆などの気持ち悪いものにまみれたデザインを宮崎氏に提示したという。しかし宮崎氏は、その草案を威厳が感じられない(This isn’t dignified)として差し戻し。「ドラゴンゾンビを描くにあたっては、気持ち悪い要素に頼るのではく、雄大な獣がゆっくりと果てなく朽ちていく深い悲しみを表現してほしい」といった要望をされたそうだ。
以上のインタビューは、近年のフロム・ソフトウェア作品コミュニティにおいて、同スタジオ作品や宮崎氏の信念を示す逸話としてしばしば話題にのぼっている。今回のインタビューにてFenlon氏は、宮崎氏自身に、以上の逸話がファンの間で浸透しているのを知っているか訊いたそうだ。
すると宮崎氏は藁谷氏の名を訊いてくすりと笑い、ファンの受け止め方を知っている様子を見せながら回答したという。宮崎氏はまず、今から語るのはあくまでも個人的な信念(ethos)、あるいは美しさ(aesthetics)へのアプローチであるとコメント。開発チーム全体の方針として強いるものではなく、さまざまな理想や美学をもった人々がいると前置きした。
その上で宮崎氏は、過去のインタビューで語ったような、美術デザインに対する姿勢を、『エルデンリング』においても保とうとしていると明らかにした。同氏は「結局は美しさを表現しようとしているのだろう」と自身を分析しつつ、美しさの基準は人それぞれであるとした。そして、美しさとは物理的・表面的な魅力に限らず、プレイヤーの心に深く共鳴するものである、といった見解を示した。
宮崎氏は続けて「美しさは、醜さも併せ持つ必要がある」との考えを示した。堕落(depraved)や悲惨さ(tragic)といった要素が、美しさを高め、際立たせるというのだ。同氏としては、そうした悲惨で堕落したもののなかに、ささやかな美しい要素がある方が、リアルな美しさの表現であるとコメント。表面的な美しさ一辺倒の表現には、現実味がないと感じるそうだ。そして宮崎氏は、惨状(tragedy)のなかにある美しいものを表現することが好きであると語り、話題を締めている。
ちなみに、宮崎氏はかつて別の『エルデンリング』にまつわるインタビューにて、設定含むキャラクターデザインについてコメント。ジョージ・R・R・マーティン氏が創出した世界設定としてのキャラクターたちを、同作の本編向けに肉付けしていくプロセスについて語っていた。宮崎氏は好きなキャラクターとしてライカードを選出しつつ「欠点もあるが、人間的でドラマティックでヒロイックなキャラたちを“破壊”して、いびつでグロテスクな怪物に仕立て上げていくのが個人的にとても楽しかった」と語っていた(Game Informer)。DLC「SHADOW OF THE ERDTREE」においても、宮崎氏のただならぬセンスが炸裂しているかもしれない。
『エルデンリング』はPC(Steam)およびPS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S向けに発売中。DLC「SHADOW OF THE ERDTREE」は、6月21日発売予定だ。ゲーム本編に加えてDLCを同梱する「SHADOW OF THE ERDTREE EDITION」も同日に発売される。