“要素山盛り”ワールドクラフトRPG『神箱』開発者インタビュー。RPG+パズル+街づくりの異色ゲームで作り手が届けたい体験が何かを訊く

グラビティゲームアライズは『神箱- Mythology of Cube -』を8月29日に発売予定だ。要素の多さゆえ気になるところも多い『神箱』について、プロデューサーである神崎氏、アシスタントプロデューサーである石井氏にインタビューを実施した。

グラビティゲームアライズは『神箱- Mythology of Cube –』(以下、『神箱』)を8月29日に発売予定だ。対応プラットフォームはPC(Steam)/PS4/PS5/Nintendo Switchを予定している。現在パッケージ版の予約が受付中だ。パッケージ版初回特典には、劇中曲を収録した『神箱 – Mythology of Cube – オリジナル・サウンドトラック』が付属する。また6月13日にアップデートされた体験版がPS4/PS5およびSteam中で配信中である(Nintendo Switch向けには6月配信予定)。

『神箱』は、RPGをベースにパズルと街づくりの要素を加えたワールドクラフトRPGだ。ワールドマップを探索するRPG要素のほか、土地を修復するパズル要素、街づくり要素による拠点の作成など多数の要素が盛り込まれているとのこと。主人公は女神に選ばれた「修復者」として、土地に立方体の穴が開く「断片化」と呼ばれる現象によって分かたれてしまった世界を修復するため旅立つことになる。

弊誌では、要素の多さゆえ気になるところも多い『神箱』について、プロデューサーである神崎氏、アシスタントプロデューサーである石井氏にインタビューを実施した。本インタビューを通じて、『神箱』とはどのようなゲームなのかをお伝えできれば幸いである。


――自己紹介をお願いします。

神崎:
『神箱』プロデューサーの神崎です。ゲーム業界にはもともとエンジニアとして参画していました。『神箱』は企画立案から携わっており、世界設定やキャラクター原案などをはじめ、本作の方針を決めています。

石井:
『神箱』アシスタントプロデューサーの石井です。これまではプランナー、ディレクターとして多数のソーシャルゲームに携わってきました。『神箱』は少々変わった開発経緯があり、開発に先立って150ページにも及ぶ世界観資料が用意されていました。その設定をゲームに落とし込むための調整を主に担当しています。


――グラビティゲームアライズ肝いりの作品……だと自分が勝手に考えている『神箱』ですが、企画立ち上げのきっかけをお聞かせください。

神崎:
会社から「新規IPとして、立方体(キューブ)を使ったパズルゲームを作ってほしい」というミッションがあり、そこが本作のスタートとなります。立方体を使ったパズルを作っていたのですが、企画を詰めていくにつれゲームとしての深みや面白さを出そうと考えていったところ、RPGへと進化していきました。『神箱』開発の始まりはそこからですね。

――どのような形態、規模でどれくらいの期間開発されているのでしょうか。

神崎:
何度もプロトタイプを作っては作り直しを繰り返してきたので、開発期間としては今の形に落ち着いてから1年半くらいといったところでしょうか。

――RPG、パズル、街づくりと盛りだくさんな本作ですが、どのようなコンセプトで開発されたのでしょうか。

神崎:
もともとあった立方体を用いたパズル要素にRPGが組み合わさることで「立方体」に意味をもたせる必要が生じ、そこから徐々に世界を膨らませていきました。

我々のミッションとして、「本作を今後にも残せるようなIPにする」というものがありました。そのためにはまずしっかりとした世界設定が必要になると考え、検討していくなか「立方体」を世界観と結びつけるときに真っ先に浮かんだのが「箱庭」というキーワードだったんです。そこから立方体で構成された世界とバラバラになってしまった世界をパズルで修復していくという目的が生み出されていきました。それ以外の要素については、「マップを修復したら何かを建てたくなるよね」「モンスターが出現するならバトルが発生するよね」といった具合で追加されていき、現在のようなかたちになりましたね。


――立方体という設定を活かすためにさまざまな要素を組み合わせていったということですね。

神崎:
そうなんです。ひとつの要素から組み立てていったら、あとからいろんな部品がくっついてきて、様々なことが楽しめるゲームへと発展していきました。

石井:
冒頭でも触れましたが、本作には150ページにも及ぶ世界観資料があり、主人公の立場や目的、世界で何が起こっているかなどといった設定が用意されていました。それらを読み解いていくなかでいまのゲームシステムができあがっていきました。


――世界観設定を作成したのは神崎さんですか。

神崎:
原案は私ではありますが、TRPGの「アリアンロッドRPG」などで知られる菊池たけし先生に世界観考証に入っていただき、現在のような壮大な世界へと仕上げていただきました。

――本作は体験版をプレイするとゲームシステムが理解できるのですが、一見するとやや複雑な印象もあるかと思います。本作を知らない人向けに基本的なゲームの流れを説明するとしたらどのようにされますか。

神崎:
キャッチフレーズは世界を修復し創造していくRPG、すなわち「ワールドクラフトRPG」です。具体的に説明すると、「バラバラになった世界をパズルで修復し」「修復した土地を狙うモンスターと戦い」「平和になった土地をより豊かにするために街などをクラフトして世界を創っていく」といった流れでしょうか。さらに、作った街同士を繋げることで交易が行われ、より世界が広がっていくという要素も存在しています。

現在配信されている体験版をプレイした方は、今回は序盤のみの配信となるので物足りないと思われるかもしれませんが、「自分で世界を作っていく」というところがこのゲームの一番の魅力なんです。製品版ではきっとその魅力を感じていただけると思っていますので楽しみにしていてください。

石井:
自分で新たな街を作り、そこを拠点に未開拓のマップを探索していくというのが基本的な楽しみ方ですね。それによって新たな街やキャラクターと出会い、さらにキャラクターと出会うことによって新たなシナリオが発生することもあります。

――なかなかほかに見ない設計のオリジナリティのあるゲームだと認識しているのですが、何か参考やヒントにしたものはあるのでしょうか。

石井:
クラフト要素に関しては、いわゆるサンドボックス系のゲームを参考にしています。ただ、小さなパーツを組み上げてユーザーの望むものを作り上げていくという従来のシステムはユーザーのモチベーションがかなり高くないと継続できないゲーム性であると感じていました。『神箱』では世界観というベースはこちらでしっかりと用意し、ユーザーには好きなものを作っていただきながら解放される要素を楽しんでもらうというかたちにしています。

――海外製のゲームによくある「どうぞご自由に」というようなスタイルではなく、ある程度導線が用意されていると。

石井:
そうですね。ただ、ゲームの進め方はユーザーによって自由に選ぶことができるようになっています。出会ったキャラクターによってシナリオが始まるので、どのような順番で進めていってもシナリオは進んでいきます。

神崎:
全体のバランスとしては参考にしている作品はありませんが、パズルについては気持ちよさを重視し、2マッチパズルを参考に落とし込んでいます。バトルは似たような作品を探すのが難しいのですが、強いていうなら属性を重視したバトルシステムになっていますね。クラフトやシナリオについては石井の言った通りです。

――とてもワクワクする内容です。ただ、デバッグやまとめの作業が大変そうですよね。

神崎:
開発チーム一丸となって現在まとめています。お客様のご期待を裏切らないように仕上げているところですので楽しみにしていてください。

石井:
キャラクターに各シナリオが紐づいているので、あまり複雑な条件にはなっていないんですよ。街や地方でのイベント発生タイミングや発生季節はすべて仕様化されているので、デバッグはそこまで大変ではないと思っていますが、ボリュームが多いのでそこは時間がかかるのではないかと……。

神崎:
前提として、「修復者」である主人公がバラバラになった世界を取り戻すという一本道のストーリーラインを中心にまとめられています。そのうえで、各地が抱えている問題を修復者の力と各地方独自の力をあわせて解決していくというのが基本的な流れになっています。いまはそれにあわせてゲームバランスの設計をまとめているところですね。


――わかりやすく説明していただいたのですが、やっぱり大変そうだなという印象は変わりませんでした(笑)

フリーシナリオ性を採用しているとのことだったのですが、具体的な自由度についてなど、もう少し詳しくお聞かせください。

石井:
攻略順序についてはとくに制限はありません。今配信されている体験版だと一本道のように感じられるかもしれませんが、ゲームシステムの説明をするためにそうなっているんです。チュートリアルが一通り終わったら、あとは好きなように冒険できるようになりますよ。

――個人的には自由な進行ができるゲームが好みなので、とても楽しみです。パズルについてですが、体験版では爽快感のあるシンプルなパズルという印象でした。ゲームの進行によって解放される要素などはあるのでしょうか。

神崎:
パズルは新しいブロックや邪魔するブロックが出てくるなど、ゲームが進むにつれてルールも増え、組み方も複雑になり、難易度がどんどん上がっていきます。パズル好きの方にも満足していただける内容でお届けできると思いますよ。パズルを補助するスキルも用意されているため、パズルが苦手な方も安心してください。


――パズルが得意であれば楽しみながら自力でクリアでき、苦手でもスキルで補えるバランスになっているというわけですね。街づくりについてなのですが、街にはどういった機能が用意されているのでしょうか。

石井:
街の基本的な機能としては、冒険に必要となる食料の補給やアイテムの購入といったことが行えます。また、街を作る地方によって会話が変化する街独自のNPCが生成され、クエストが発生するといった要素も存在しています。街を作ることで必ず冒険の役に立つようになっているんです。

神崎:
ほかにも街の機能として、生産素材が産出されるというものがあります。地域によって土壌や気候が設定されており、麦や鉱石など採れる素材も異なるため、色々な地域に街を作ることが重要になってきます。また重要な機能として、街同士の交易が行われるというシステムがあります。街AとBを繋げて物流を発生させる、といった具合ですね。詳しくは今後お伝えしていきたいと思いますが、とても奥深いものになっていますよ。

 


――街づくり要素も充実して楽しめそうです。かなり野心的な内容の本作ですが、何度も作り直しをしていると伺っています。現在の方向性に定まったきっかけはなんだったのでしょうか。

神崎:
特に野心があったわけではないですが(笑)はじめから計算して作り始めたというわけではなく、真面目に考察し、真面目に作り込んでいった結果、このような作品になったというのが正しいんじゃないでしょうか。

石井:
世界観資料を忠実にゲームに落とし込み、ユーザーに体験として伝えるためにはどのような要素が必要なのか。また、ユーザーが楽しみながら進行するためにはどのような工夫が必要なのか。そういったことをとにかく考察していきました。たとえば、いろんなところに街を作って楽しんでもらえるよう地域ごとに固有のNPCが生成されるようにするといった具合ですね。

神崎:
北の国と南の国だと当然気温も気候も食べているものも着ているものも違うじゃないですか。そういう部分を真面目に考えていくなかで機能が生まれていきました。

石井:
本作は広大なワールドを冒険するというオープンワールド的な要素も含んでいるのですが、探索しがいのないエリアは作りたくなかったんですよ。そうなると必然的に、細部にいたるまで設定を落とし込む必要が出てきたというのもあります。現在高く評価されているオープンワールドゲームというのは、探索したら必ずなにかしら報酬が得られるようなものが多いですよね。

――つまり、作り直したというよりかは方向性を見定めるのに時間がかかったのでしょうか。

石井:
いえ、実際に作り直しは行っています。

神崎:
特にバトルとマップは納得できるまで何度も作り直しをしてきました。現在はこちらの伝えた要件を「マナバトル」というかたちで開発チームがうまく落とし込んでくださったので、納得のいくものになっています。また、『東京魔人學園』などで知られる今井秋芳さんがディレクターとして携わっていただいており、今井さんの力もあって考察から生まれたさまざまなアイディアの実現がすすんできているという状況です。理想の形をうまく表現してくださっていますね。

石井:
今井さんは妥協しない方なので、「これを作るのであれば、これはどうして生まれたのか」「街を作ったなら交易ができて当たり前だよね」と話が進んでいき、さまざまな要素を入れざるを得なくなっていきましたね(笑)

神崎:
マップ自体ももともとは現在の9分の1のサイズでした。これは石井のアイディアだったんですが、冒険するにはマップが狭いから3倍に増やすと言い出して(笑)その後、海を大航海したいからとさらに3倍に増やし、結果的に9倍の広さになりました。

石井:
拠点として街を作り、食料を補給しながら未開拓エリアを探索し、また拠点を作って…というのが基本的なゲームサイクルになるのですが、マップが広くないとすぐに終わってしまうじゃないですか。なので、マップを広げることを提案しました。


――難しい質問かもしれないのですが、プレイ時間はどれくらいになると想定していますか。

神崎:
我々の想定としては、ストーリーを真っすぐ進めると60時間以上は超えるのではないかと思っています。横道に逸れていった場合は計測不能で、心ゆくまで遊んでいただけると思います。

石井:
クエストに関しては、キャラクターや街で発生する特殊なクエストまで含めると、300近くのクエストが存在しています。どれだけプレイするかによってクリア時間は変わってくるのですが、全てクリアしようとすると100時間を超えるようなボリュームになっているんじゃないでしょうか。シナリオに関係のないダンジョンも用意されているので、そちらを楽しんでいただくこともできます。

――どうまとまっていくのか、ユーザーとして今後も楽しみです。率直に言って『神箱』は完成させられそうですか。

神崎:
開発に関してはあまり心配していません。各要素をいかにつなぎ合わせ、どのようなレベルデザインにするのかが重要で、現在それらに着手しているところです。発売日も決まりましたし、ご心配いただかなくても大丈夫かと思います。

石井:
やりたいことが多すぎて、なにかしら要素を削らざるを得ないときが一番つらかったですね。それでも100時間は遊べるくらいのボリュームにはできたと思います。

――安心しました。本作は自由度が高くやり込みがいのある挑戦的なタイトルだと思っているのですが、どのようなユーザーに遊んでもらいたいですか。

神崎:
パズルが好きな人にはパズルを、冒険が好きな人にはフィールド探索を、RPGが好きな人にはシナリオやバトルを、クラフトが好きな人は街づくりをといった具合で、『神箱』に少しでも好きな要素があれば楽しんでもらえると思っています。みんなが遊べる『神箱』ですね。

――ありがとうございました。

神箱- Mythology of Cube –』は、PC(Steam)/PS4/PS5/Nintendo Switch向けに8月29に日本先行発売予定。パッケージ版の発売も予定している。パッケージ版初回特典には、劇中曲を収録した『神箱 – Mythology of Cube – オリジナル・サウンドトラック』が付属する。6月10日には公開中の体験版がアップデートされ、ボイスの追加や製品版に近い内容となっている。一度プレイした人もぜひアップデートされた体験版でも遊んでほしい。

Sou Matsubara
Sou Matsubara

机上で対戦ゲームについてあれこれ考えている時が一番幸せです。
得意なジャンルは2D格闘ゲームです。

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