AutodeskがAIによる3Dモデル生成新技術を発表するも、「ポリゴン数多すぎ」として実用性に疑問集まる。開発初期段階ゆえか盛り盛りポリゴン

Autodeskは5月8日、AIを利用した3Dモデル生成技術を開発する「Project Bernini」を発表した。大きな注目を集める一方で、実用性について疑問を呈する声も寄せられている。

図面作成ソフトウェアなどを手がけるAutodeskは5月8日、AIを利用した3Dモデル生成技術を開発する「Project Bernini」を発表した。大きな注目を集める一方で、実用性について疑問を呈する声も寄せられており、厳しい見方もあるようだ。

「Project Bernini」は、デザイン産業や製造業のための生成AI開発に焦点を置く研究プロジェクトだ。現時点では初期の実験段階だというBerniniモデルでは、すでに2D画像やテキスト、ボクセルや点群データなどさまざまな入力から機能的な3Dモデル(3D shapes)を素早く生成可能とされている。


発表動画では実際に、水差し(pitcher)の2D画像から3Dモデルの生成がおこなわれている様子も紹介されている。Berniniではモデルとテクスチャが別々に生成されるといい、水差しでは内部がちゃんと空洞になったモデルが生成される点もアピールされている。

一方、紹介された水差しの3Dモデルには“実用性”を疑問視する見方も寄せられている。たとえばグラフィックデザインや3Dアートを手がけているというアーティストのSennことGabriel Eduardo氏は紹介動画の途中に見られたポリゴンがびっしりと敷き詰められた3Dモデルのメッシュとともに、ポリゴン数が非常に多いとして批判。ただし動画ではこの後比較的シンプルなメッシュも登場しており、おびただしいポリゴン数をもつメッシュは生成や出力の途中といった可能性もある。なおあわせて同氏は、水差しのような曲線形のシルエットをもつ3Dモデルとして、約50年前に作られた「ユタ・ティーポット」の方がもっとシンプルかつ的確にモデリングされているとの意見を述べている。


ユタ・ティーポットは1975年にユタ大学のMartin Newell氏が制作したとされる3Dモデル。Newell氏がモデリングの数値データを公開したことから、当時のCG研究者たちを中心に幅広く利用されたようだ。当時からの慣習として、現在でも技術デモでティーポットなどが用いられる場合は見られる。今回Berniniの生成デモとして水差しが選ばれたのも、そうした流れにちなんでいるのだろう。

そんなユタ・ティーポットは、伝統的なモデルにおいて三角ポリゴンにて4060ポリゴンで滑らかに構築されているとされる。対するBerniniの水差しのポリゴン数は不明ながら、動画では先述のとおりおびただしいポリゴン数で構成されたメッシュのほか、比較的にシンプルなメッシュの3Dモデルも登場する。後者のメッシュでも、水差しの内外が多数の四角ポリゴンにて構築されているようだ。


Senn氏はシンプルな方のメッシュの一部を指摘しつつ、該当箇所はもともと多角形のポリゴンだったのではないかと推察。自動リトポロジープラグインである「Quad Remesher」などを用いて四角ポリゴンに調整し、紹介動画での体裁を整えるため誤魔化したのではないかとの考えを述べている。現状のBerniniでは生成されたモデルを実用化するために、そうしたプラグインとの併用も必要になるのかもしれない。

このほかAutodeskの発表ポストにも3Dアーティストなどから実用性を疑問視する反応も寄せられている。先述のとおり「Project Bernini」は初期の実験段階とされていることもあり、業界によってはまだまだ実用的な技術として見られていない状況もあるようだ。たとえばゲーム開発であれば、ポリゴン数の多すぎるモデルが生成された場合、むしろ最適化の手間が必要になる場合も考えられるだろう。


一方現状では実用性が疑われる開発初期段階とはいえ、今後Berniniあるいは同様の技術がすぐに実用化されるだろうといった反応も見られる。ほかの分野でAIを利用する技術がここ数年で一気に隆盛を見せていることもあり、3Dモデルの生成においても同様と見る向きはあるようだ。またもし実用化に至ったとして、ほかの分野でのAIを用いた生成技術と同じく、クリエイターの雇用の機会を奪いうる点や学習データの権利問題への懸念も寄せられている。

AIを利用する新たな3Dモデル生成技術として発表された「Project Bernini」。実績あるAutodeskが手がけることもあり大きな注目を集めているものの、開発初期段階ということで実用性を巡る意見などさまざまな反応も寄せられているようだ。いずれにせよ今後さまざまな課題や懸念をクリアしつつ、Berniniや同様の技術が実用化に至るかどうかは注目されるところだろう。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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