Nintendo Switchの“Joy-Conドリフト問題”、米国での集団訴訟2件が取り下げ。提起から約5年を経て、原告と米国任天堂が合意
Nintendo Switch用コントローラーであるJoy-Conを巡る米国での集団訴訟2件について、それぞれの原告と米国任天堂が5月10日に、訴えを取り下げることで合意していたことが明らかになった。海外メディアGame Fileが報じている。
両訴訟は、いわゆる“Joy-Conドリフト”を巡って2019年および2020年に提起。Joy-Conドリフトとは、Joy-Conのアナログスティックに触れていないのに勝手に操作がおこなわれる、以下の映像のような現象のことだ。内部パーツの何らかの不具合が原因だと考えられている。
原告代表となったMaria Carbajal氏およびRyan Diaz氏は、Joy-Conドリフト現象は製品としての欠陥にあたると主張。また、こうした問題は発売前のテストにて認識できたはずであり、米国任天堂はそれを消費者に知らせることなく宣伝・販売を続けてきたとして、クラスアクション制度に基づく集団訴訟を、米国ワシントン西部地区連邦地方裁判所にてそれぞれ提起していた。
この間、Maria Carbajal氏による訴訟では、技術者の協力を得てJoy-Conドリフトの原因を調査し、訴状を通じて報告。アナログスティックの入力を検知する内部パーツの表面硬度の違いから導電性パッドが摩耗し、電気抵抗が変化すると指摘したほか、削れて発生した粉がブラシパーツに付着することでパッドの摩耗を悪化させているとし、パーツの電子顕微鏡写真を添えて報告していた(関連記事)。
一方の米国任天堂は、訴えの棄却もしくは仲裁を裁判所に要求。そしてRyan Diaz氏の訴訟については2020年3月、裁判所は集団訴訟の認定を却下したうえで、和解に向けた仲裁手続をとるよう両者に勧告している(関連記事)。
結果的に、両原告と米国任天堂は今年5月10日、訴訟を取り下げることで合意。訴訟にかかった費用は、それぞれが自ら負担するとされた。これまでに両者でどのようなやり取りがあり、訴訟提起から4〜5年を経てこの結論に至ったのかは不明だが、原告も和解を選んだということなのだろう。
Joy-Conドリフトを巡る集団訴訟は、本件以外にも欧米にていくつか提起されてきたが、その多くが和解や棄却となっているようだ。一方で、こうした集団訴訟が提起され始めたのち任天堂は、北米や欧州にてサポート対応を変更。ドリフトの症状が発生した場合、そのJoy-Conが保証期間内か否かに関わらず一律無料で修理するようになった(日本では保証期間外なら基本的に有償・関連記事)。こうしたサポート体制も、訴訟の行方に影響したかもしれない。
また別の動きとして、周辺機器メーカーからは「ドリフトしない」ことを売りにするコントローラー製品が続々登場するように。こうした製品では、アナログスティックの入力検知にパーツの物理的な接触を伴わないホールセンサーが採用されている。これもまた、Joy-Conドリフトの問題が広まったことで生まれた変化だといえるだろう。