『スーパーマリオ64』の“一方通行の開かずの扉”、ついに開け方が発見される。カギになったのはアクション動作の「コード順」か
『スーパーマリオ64』のステージ「さむいさむいマウンテン」の山の麓には小屋があり、この小屋の扉は、今まで内側からしか開ける方法がないと思われていた。しかし本作発売から28年経った今年4月22日、あるユーザーによって、ついに改造などをおこなわない“正規の手段”で外側から扉を開ける方法が発見された。
今回話題となっている「さむいさむいマウンテン」は、本作の4番目のステージだ。ステージの開放には、パワースターを3枚集め、封じられている扉を開ける必要がある。ステージ内は高低差のある雪山となっており、ステージの一部を滑り落ちるなどして攻略するのが特徴だ。高所から落ちると雪道に埋まったりするのも特徴となっている。
さむいさむいマウンテンの開かずの扉
そんな本作には“開かずの扉”が存在している。それはスター「スーパースノースライダー」などでゴール地点として設定されている、山の麓の小屋の扉だ。この扉はスライダーをゴールした後など、内側から開けて外に出ることが可能となっている。ただこの小屋に外側から入ろうとしてもドアノブはなく、扉に近づいても通常ではマリオが壁を押すモーションをとってしまう。故に小屋から出ることはできても、小屋に入り直すことはできず、“開かずの扉”だと思われていたのだ。
今回そんな“開かずの扉”がついに開かれたようだ。『スーパーマリオ64』の解析や、同作に関する動画コンテンツなどを制作しているpannenkoek2012氏は、5月12日に「SM64’s Unopenable Door Has Finally Been Opened!(『スーパーマリオ64』の“開かずの扉”がついに開いた!)」と題した動画を投稿した。
pannenkoek2012氏によれば、本作の扉には2種類あり、通過する際にロードを挟むものと挟まないものが存在しているという。いずれもオブジェクトを使って扉をすり抜けることができるものの、通過にロードを挟む扉では実際に奥のエリアに進むことができないため、ちゃんと扉を開ける必要があるという。「さむいさむいマウンテン」の“開かずの扉”も、ロードを挟む扉である。そのため、小屋に入り直すにはマリオにちゃんと扉を開けてもらう必要がある、というわけだ。
扉自体は普通なものの
pannenkoek2012氏はこの扉が開かない理由として、扉そのものが特殊なわけではないと説明。つまり扉自体はその他の扉と同様で、マリオが触れさえすればちゃんと開けることができるようだ。解析によれば、小屋の外側には見えない壁が張られており、そのために通常ではこの扉にアクセスできなくなっているとのこと。
とはいえ、今までも扉そのものに「触れる」こと自体は可能であった。山の麓の母親ペンギンを誘導し、扉の間に挟まるように入って、ペンギンに押し出してもらう、といった具合だ。しかしこの手法だと母親ペンギンに押し出してもらった後、そのまま落下してしまう。扉を開くにはマリオが歩いている状態でなければならないが、床判定がない場所に無理やり入ったマリオは歩行ができないからだ。改造を用いて見えない壁を消せば歩いて扉にアクセスできるため通常通り開くものの、正規のプレイではこの扉にアクセスできないものと思われていた。
振り向くという解決策
そんな中、4月22日に本作のファンコミュニティのDiscordサーバーにて、Alexpalix1氏が1本の動画を投稿した。その動画では、小屋の扉を外側から開けているのだ。不可能だと思われていた“開かずの扉”を開ける方法がついに見つかったことになる。
小屋に入り直す際に問題となっていたのは、マリオが扉の前で落下してしまい歩行モーションをとれないため、扉に触れても開けるモーションへと移行しないことだった。Alexpalix1氏はこの際に、あえて一度扉と逆方向の母親ペンギンの方に動いてから振り向きを挟むことによって、扉を開けるのに必要な歩行モーションを生み出したのだ。
pannenkoek2012氏によれば、本作の振り向き動作に関するコードでは、歩きモーションに関する記述より、落下モーションに関する記述の方が前にあるという。そのため、母親ペンギンに押し出されるタイミングで振り向くと、落下モーションが一瞬だけ歩きモーションで上書きされる。その結果、扉に対して歩きモーション中にアクセスすることができたようだ。このことによって、28年越しに“開かずの扉”が、改造などを伴わない正規の方法で開けられたわけだ。
なお、この裏技を用いて「スーパースノースライダー」をスキップした場合と、通常プレイでスライダーをクリアした場合のクリア時間を比較したものが動画内に収められている。外から扉を開ける方法は、子供ペンギンを連れ母親ペンギンに話しかけた後、母親ペンギンを所定の位置まで誘導する手間があるため、普通にスライダーを滑った方が早いようだ。
とはいえ、発売から28年経った今でも熱心に研究される本作において、不可能だと思われていたことがまたひとつプレイヤーの手によって解明され、実行可能となったわけだ。本作については、過去“通常取得不可”な1UPキノコを取得する方法が見つけられたり、ジャンプを使わずステージをクリアしたりといった、さまざまな研究・チャレンジがおこなわれていた(関連記事1、関連記事2)。今回の“開かずの扉”についても、本作コミュニティのユーザーの熱意や執念によって、研究や検証が進められた例のひとつといえるだろう。