人気FPS『ボーダーランズ3』のミニゲームで“人間の腸内細菌の研究”が大きく前進。パズルを解きつつ研究促進、一石二鳥プロジェクトが実を結ぶ
『ボーダーランズ3(Borderlands 3)』にて2020年4月から実装されているミニゲーム「ボーダーランズ・サイエンス」が大きな“研究成果”をあげたことが発表された。海外メディアPC Gamerが伝えている。同ミニゲームは、人間の腸内細菌の研究目的で導入されていた。
『ボーダーランズ3』は、Gearbox Softwareが手がけ2019年に発売されたシューティングRPGだ。ソロプレイおよび最大4人でのローカル・オンライン協力プレイに対応。プレイヤーは、それぞれ特徴ある戦闘スタイルをもつ4人のヴォルトハンターから選択して、惑星パンドラやそのほかの惑星へと繰り出す。ハクスラ要素を特徴とする作品であり、戦利品として膨大な種類の武器やガジェットを獲得しながらキャラクターを強化。そして、銀河最大の権力を手に入れようと目論む最凶の敵、カリプソ・ツインズを阻止することを目指す。
今回、カナダのマギル大学の研究チームは本作中のミニゲーム「ボーダーランズ・サイエンス」による研究成果を発表した。「ボーダーランズ・サイエンス」とは、本作内に2020年4月に無料実装されたミニゲーム。サンクチュアリIII内のドクター・タニスの診療所内に設置されたアーケード筐体からプレイできるパズルゲームとなっている。開発はGearbox Softwareとマギル大学、およびMassively Multiplayer Online Science、The Microsetta Initiativeが共同で手がけたという。
「ボーダーランズ・サイエンス」では、指定された絵柄のブロックを横一列に揃えることを目指し、黄色いブロックを置いて各ブロックを上に押し上げていく。絵柄を揃えてスコアを獲得し、ターゲット・スコアに到達すればステージクリアとなる。クリア時には報酬として、ゲーム内アイテムやリソースを獲得することが可能であった。
そんな「ボーダーランズ・サイエンス」は、プレイヤーたちに遊んでもらうことで人間の腸内細菌叢をマッピングする研究をサポートする目的で実装された。人間の腸内には100万種類以上のバクテリアが生息するとされ、「ボーダーランズ・サイエンス」をプレイしてもらうことでその進化的関係を追跡する狙いがあったという。ゲーム中の各ブロックはDNAのヌクレオチドを表しているといい、プレイヤーがパズルを解くことで、既存のコンピューターアルゴリズムの解析ではエラーとなっていた部分の検出に繋がっていたそうだ。
実装から約4年を経て、今回Nature Biotechnologyにて「ボーダーランズ・サイエンス」に基づく研究論文が発表された。「ボーダーランズ・サイエンス」では2020年4月のリリース以来、2023年5月時点で400万人を超えるプレイヤーがチュートリアルおよび最初のパズルをクリアしていたとのこと。また合計で1億3500万以上のパズルが解かれたという。腸内細菌叢の研究を大きく促進しただけでなく、収集されたデータは今後研究に使用されるAIプログラムの改良にも役立てられるそうだ。
また「ボーダーランズ・サイエンス」では、既存の人気ゲーム内に市民科学(Citizen Science)としてのミニゲームを導入し、膨大な人的リソースを活用できることを示す事例にもなったとされる。ただ、論文では人気ゲームに市民科学ミニゲームを導入する際のリスクも説明されている。「ボーダーランズ・サイエンス」の実装にあたっては、市民科学の実験がそのままゲーム内に登場すると場違いな要素となりゲームの没入感を損なう可能性も検討されたという。そのため登場キャラクターと関連付けたり、世界観にあわせたりといった配慮もおこなわれたそうだ。また先述のとおり、報酬としてゲーム内アイテムも獲得可能。そうした点も実を結び、「ボーダーランズ・サイエンス」は自然と多数のプレイヤーに遊ばれたかたちだろう。
『ボーダーランズ3』内に研究目的のミニゲームとして実装されていた「ボーダーランズ・サイエンス」。一風変わった試みながら、大きな成果をあげていたようだ。今後も別の人気ゲームで、同様の施策がおこなわれるかどうかは注目されるところだろう。
『ボーダーランズ3』は、PC/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S向けに発売中だ。すべての追加コンテンツを収録する「アルティメット・エディション」もリリースされており、同エディションはNintendo Switch向けにも発売されている。また『ボーダーランズ』シリーズは最新作が開発中(関連記事)。