『聖剣伝説 VISIONS of MANA』先行プレイ感想。原点回帰を志す17年ぶりの新作は、本当にシリーズたりえるのか。『聖剣伝説』らしさのありか

『聖剣伝説 VISIONS of MANA』は、2024年夏に発売予定の約17年ぶりとなるシリーズ完全新作だ。本稿では前作にあたる『聖剣伝説3 TRIALS of MANA』との比較を中心に、『聖剣伝説 VoM』はシリーズの新作たりえるのかを考えていきたい。

聖剣伝説 VISIONS of MANA(以下、聖剣伝説 VoM)』はスクウェア・エニックスより、2024年夏に発売予定の約17年ぶりとなるシリーズ完全新作だ。17年ぶりとなると、その「らしさ」が継承されているかが気になるところ。そもそも『聖剣伝説』は、何をもって『聖剣伝説』なのか。シンプルで手触りの良いアクションなのか、キャラクターの魅力を引き立てる演出とストーリーなのか。あるいは、冒険の楽しさを引き立てる多彩なロケーションなどが思い浮かぶ方も多いだろう。

『聖剣伝説 VoM』と同じく原点回帰を謳い、『聖剣伝説3』から11年ぶりのナンバリングとして2006年にリリースされた『聖剣伝説4』は、ファンの期待に応えられたタイトルとは言えなかったと、筆者は考えている。だからこそ筆者を含む『聖剣伝説』の歴史を知る者のなかには、本作のような新作の存在を手放しで喜ぶのではなく、期待半分不安半分という方も多いのではないだろうか。そして、その中に『聖剣伝説』らしさはあるのか、気になるところもあるだろう。

今回は2024年3月に実施されたメディア向けの試遊にて、発売に先駆けて本作に触れる機会を得た。プレイ内容としては「ファルロー大草原」、「フーラ山」という2つのエリアで、合計1時間ほどそれぞれ探索とバトルに焦点を当てて体験できた。本稿では前作にあたる『聖剣伝説3 TRIALS of MANA(以下、聖剣伝説3 ToM)』との比較を中心に、本作における『聖剣伝説』らしさのありかを探り、『聖剣伝説 VoM』はシリーズの新作たりえるのかを考えていきたい。なお開発中のタイトルのため、製品版では細部が変更になる可能性がある点に留意してほしい。

ギミック要素から伝える『聖剣伝説』らしさ

『聖剣伝説 VoM』は「セミオープンフィールド」と銘打たれ、大小さまざまなエリアが組み合わされた構成が特徴。フィールド自体に目的地の星マークの方向と距離が表示されるようになり、何度もマップを開いて確認しなくてもよいため、多彩なロケーションを楽しみながら冒険できる。前作に存在しなかったファストトラベルも実装されているが、歩いているだけでもワクワクするため、まずは自らの足でフィールドを歩いてみたいと思わせることに成功している。


探索面は、遊びやすさを意識した新システムが導入されており、ストレスはほぼ感じなかった。たとえば通貨「ルク」や消費アイテムなどを示す黄色い光は、『聖剣伝説3 ToM』では立ち止まって調べなければならなかったが、自動で回収されるように変更。またゲーム内に配置された宝箱は、近づくと場所がミニマップに表示されるようになった。

ただし遊びやすくなったからといってやりごたえがなくなったという訳ではない。本作では小高い丘や塔など縦方向に入り組んだ構造も増えている印象を受ける。そのフィールドのおかげで、おおよその位置が予想できていたとしても「あんなところに宝箱があった」という驚きと喜びも健在。なにより隅から隅まで探索したにも関わらず、取り逃す事態が防ぎやすいのはうれしい。


マップ上には青い二重円アイコンが点在しているが、こちらはセーブやファストトラベルが行えるポイントなどのオブジェクトの位置を示している。そのため広大なエリアを巡っていても、「〇〇に向かう」という目標が立てやすく、短いサイクルで発見と起伏が生まれていた。

また本作ならではの要素として、精霊の力を宿した道具「精霊器」を使用したギミックがある。試遊は2つの精霊器を手に入れた状態でスタートしたが、風の精霊器では周囲に上昇気流を生み出してジャンプして山の頂上に登ったり、岩を浮かせてプラットフォームアクションのように足場を渡ったりするギミックがあった。もう1つの月の精霊器は、時間にまつわる能力を持ち、フィールド上で既に開けられて空っぽだった宝箱の時間を巻き戻し、中身が入っている状態に戻すことができる。


これらの要素は、究極的に必要があるかといえば、そうではないかもしれない。自分から岩を浮かせずとも最初から岩が浮いていたり、そもそも空っぽな宝箱を作らずすべての宝箱に中身が入っていたりしておくことも可能だっただろう。だが冒険の途中で精霊器を使うというインタラクションを実装することにより、『聖剣伝説』らしい精霊という存在との繋がりを実感でき、シリーズ最新作という説得力が感じられたポイントだ。

またエリアにはじめて訪れた時点では、対応する精霊器を所持しておらず起動できないギミックや、到底倒すことができない雑魚敵(主人公が10レベル程度の時点で50レベル以上)も存在。ストーリーを進めたりレベルを上げたりしたいというモチベーションになると同時に、エリアへの再訪を自然に促しつつ、踏破した場所を再び探索するときの新鮮さを担保し、世界の奥深さを表現できている。

精霊器の存在で戦略性の高いバトルが実現


バトルの基本は『聖剣伝説3 ToM』を踏襲したアクションで、地面に赤く表示される予兆を避けながら、通常攻撃と特殊攻撃を組み合わせたコンボや特技で敵を倒していく。攻撃のテンポや回避のスピードが向上しており、シンプルでありながら公式が謳う「スピード感のあるバトル」を実現している。

そして二段ジャンプも可能になっており、空中戦が強化。空を飛び回る敵にも対応しやすくなり、ダイナミックに戦場を駆けまわることができる。さらに大きな変化として、必殺技発動に必要なSPゲージがパーティー全体での共有になった。そのため必殺技でゴリ押しする手段が使いにくくなっており、どの局面でどのキャラクターで使用するかという戦略性に寄与している。

『聖剣伝説3 ToM』ではクラスチェンジごとに攻撃のコンボ数は増加するが、武器モーションは同一で変わりばえがしないという点があった。しかし本作のバトルモーションは格段に増えている。クラスチェンジはメニュー画面で精霊器を装備することで可能だが、なんとクラスによって武器が変化するのだ。たとえば試遊範囲の主人公ヴァルだけでも片手剣に大剣、ランスという3種類のバリエーションがあった。これはストーリーが進み精霊器を手に入れるごとにパーティー全員の新たな操作が増えるということで、アクションゲームにおける戦闘の飽きが最後まで起こりにくいだろう。


精霊器の装備は1人1個までで、パーティー間で同時に共有することはできない。アビリティはクラスによって異なり、特技なども含めるとカスタマイズの自由度が広いため、誰に何を装備するかという振り分けが悩ましくも楽しい。そしてバトル中に「敵を一定時間拘束する」「敵の動きをスローにする」などの効果を発揮するのだ。

これは探索時同様、精霊の存在を近くに感じることができ、たとえば「あのボスに〇〇の精霊器が刺さった」と個々の精霊への思い入れができる。そして仲間たちはプレイヤーが指示しなくても、装備していればバトル中に精霊器を使用してくれる(設定で頻度を変更可能)。そのおかげでパーティーメンバーとの共闘感が増しており、試遊ではあと少しでボスに勝てそうだから隙を作ってラッシュを叩き込みたいという場面で、タイミングよく動きをスローにしてくれたときは、思わず「よくやった!」とハイタッチしたい思いに駆られた。


試遊ではストーリーのカットシーンや、キャラクター同士の会話はほとんど体験できなかったが、開発曰くキャラクターも個性豊かで興味がひかれるように仕上がっているとのこと。カリナと言う少女が関西弁でコミカルな印象だったり、そのカリナにつきそう「ラムコ」という聖獣の子供がシリーズお馴染みの「フラミー」を彷彿とさせたりなど、その一端を感じることができる。


『聖剣伝説』らしさとはなにか。筆者の考えを言語化するならば、『聖剣伝説』らしさとは、「自然や精霊との繋がりを感じられる」ということだ。それは世界観的なモノでもあり、システム的なモノでもある。本稿ではじめに問いかけた『聖剣伝説』らしさは、本作『聖剣伝説 VoM』のなかでたしかに息づいていた。探索やバトルにおける精霊との交流にフォーカスしたシステムで、シリーズの特徴を表現。さらに『聖剣伝説3 ToM』をブラッシュアップした、現代的なアクションゲームとしても楽しめる。まさしく原点回帰を志しながらシリーズとして進化している本作を、『聖剣伝説』の新作だと言わずして何だというのだろうか。そう思えるような体験をすることができた。

ただし、筆者が遊んだのは一部分である。『聖剣伝説』新作としてたりえるかだけでなく、アクションRPGとしてどうかなど、全貌が紐解かれるにあたって、より多角的な面で本作の性質を分析していきたいところだ。

『聖剣伝説 VISIONS of MANA』は、PS5/PS4/Xbox Series X|S/PC(Windows/Steam)向けに2024年夏に発売予定だ。

© SQUARE ENIX
※記事内の画面は開発中のものです。

Yuuki Inoue
Yuuki Inoue

RPGとADVが好きなフリーのゲームライター。同人ノベルゲームは昔から追っているのでそこそこ詳しい。面白ければジャンル問わずなんでもプレイするのが信条。

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