Steam『カニノケンカ・ニ』開発者インタビュー。「どういうゲームなんですか」と訊いたら、「武器とメカと魔法のシミュレーター」「『アーマード・コア』みたいなアリーナがある」など謎めいた回答が返ってきた

弊社アクティブゲーミングメディアが運営するパブリッシングブランドPLAYISMと個人開発者ぬっそ氏は2月13日、『カニノケンカ・ニ』のSteam早期アクセス配信を開始した。開発者であるぬっそ氏に話を聞いた。

弊社アクティブゲーミングメディアが運営するパブリッシングブランドPLAYISMと個人開発者ぬっそ氏は2月13日、『カニノケンカ・ニ』のSteam早期アクセス配信を開始した。価格は1480円。

『カニノケンカ・ニ』は、カニアクション対戦ゲームだ。巨大な甲殻類同士が競い合う格闘競技「ファイトクラブ」が最上の娯楽として存在する異世界を舞台とし、プレイヤーは不死身の剣闘士であり究極のレスラーであるカニを操りケンカを繰り広げる。ファイトクラブにおいては、相手のカニをひっくり返して3カウント取ることでノックアウト勝利。左右のハサミに装備するブキや、ダメージを受けると溜まるカニゲージを消費することで発動できるスペル、カニをカスタマイズできるスキルを駆使して戦う。


『カニノケンカ』といえば、2020年に前作が発売され、巨大なカニが格闘バトルするゲームであるとして注目を集めていた。一方で、続編ではそれがどのようにどう進化しているか、わかりづらい点もあるだろう。そうした点を踏まえ、開発者であるぬっそ氏に話を聞いた。

──本日はよろしくお願いします。自己紹介をお願いします。

ぬっそ氏:
ぬっそと申します。日本のインディーゲーム開発者で、もう10年以上海産物をモチーフにした3Dアクションゲームを開発しています。コミックマーケットで販売する同人ゲームからはじめ、大手ゲーム会社にプログラマとして在籍していた事もあります。

──『カニノケンカ・ニ』について、ぬっそさんからご説明お願いします。

ぬっそ氏:
ヒトが巨大なカニに乗る時、究極の戦士が完成する。物理シミュレートされた30種類のカニは甲殻騎士であるあなたの操作でハサミを動かし、90種類に及ぶ武器・スペルを使いこなします。キャリアモードでは次々現れるライバルと競い、3年間のカニリーグを勝ち抜いて、カニを鍛え、あなたのファイトスタイルを構築しましょう。育成したカニはオンライン協力プレイや対戦で使用でき、さらに世界中のカニと競うことができます。5人まで遊べるルームマッチも完備、友達とのパーティゲームとしても楽しめます。


──紹介のクセの強さも『カニノケンカ』らしいですね(笑)前作はかなり話題になった印象です。どのような部分がウケたとお考えでしょうか。

ぬっそ氏:
まずはカニが格闘戦をする絵面ですよね、PVを頑張って色々なアクションを撮ったので、それがウケたと思います。自分としては動きの自由度をアピールしたつもりだったのですが、あのアクションを簡単に出来る事を期待した人が多かったように思います。

簡単さと自由度はトレードオフで、実際にやろうと思うと難しい。難しさを乗り越えられた人々にはさらに深くウケましたが、多数のプレイヤーがそれを出来るようになるまでケアして持って行く仕組みがなかったのが、特大ヒットまでは行けなかった理由かなと考えています。

──あれだけ話題になって、なお上に行こうとする姿勢、興味深いです。一方で『カニノケンカ』は、「ジャンル・カニノケンカ」としか言いようがないゲームです。が、昨今はソウルライクやローグライクなど、いろんなジャンルがあります。乱暴な括りの時もありますが、ゲーム内容を想像しやすいという利点があります。失礼を承知の上で『カニノケンカ・ニ』をあえて既存ジャンルに当てはめるとすれば、なんと呼びますか?

ぬっそ氏:
実は昔サンドロットが作っていたPS2の『ギガンティックドライブ』やニンテンドーDSの『超操縦メカMG』が遠い祖先な気がします。あれは「ロボット操縦アクション」なので、ジャンルとしては「〇〇操縦アクション」、「カニ操縦アクション」という所でしょうか。今回は人が乗ったり降りたりできますし。ちなみにソウルシリーズやローグライクの影響も受けています。


──なるほど。カニ操縦アクション、非常にわかりやすいです。そういう意味でも、『カニノケンカ』は、衝撃度の高い作品でした。しかし、作り手としてはインパクトある作品の2作目を作るのは、プレッシャーを感じるのではないでしょうか。感じたとして、どのような対処をされましたか。

ぬっそ氏:
前作は最終的にどんなゲームになるか分からずに作っていたところがあったため、今振り返ると直したいところが沢山あるんです。でもあれはあれで独自の競技性やバランスができてしまったので壊せない。となると、2作目を作るしかない。

プレッシャーというより、今ならもっと上手く作れるという自負はあります。インパクトは、もうクオリティを上げた上で、新しくできる事をアピールするしかないと思っています。羽を生やしたり、人間を乗せたり、人々を吹き飛ばしたり。パンジャンドラムを転がしたり。アクション映画も、人間にどうインパクトのあるアクションをさせるか頭を捻っていると思います、カニも同じ事でしょう。たとえば最近、中国武術の六合大槍の動画に感銘をうけて『カニノケンカ・二』に実装したりもしました。そうした現実にある優れたものを取り入れて対処していきます。


──『カニノケンカ・ニ』について、「結局前作とどう違うのか」と思われているユーザーもいるのではないかと思います。前作との違いについて、端的に回答いただけますか。

ぬっそ氏:
前作がコンセプトを素朴に形にしたものだとすれば、本作は現代的なゲームとしての完成を目指しています。まず操作が特異すぎましたので、スティック移動できるモダン操作を用意しました。ジャンプも駆使すると以前よりかなり快適だと思います。UIもほぼ全部作り直してガイドも充実させ分かりやすくしています。ネットワーク機能もランダムマッチとルームマッチでそれぞれに適したシステムに改善しました。

オンライン戦で負けながら成長するのは難しいことも承知しておりますので、ソロモードの敵に前作プレイヤーが使用していたテクニックをプログラミングしており、1人でも対人戦のエッセンスを楽しめます。あまりそういったものに興味がない人の為にも次々に敵を倒しタイムやスコアを競うことに最適化されたモードも用意しています。

ゲームバランス面でもコスト制の導入により、弱い武器にも使い道が生まれています。VRMにも対応し、アバターが自由に動き回れますから自キャラをカニと一緒に愛でることもできます。挙げるときりないですが、『3』を出す気はないので、カニノケンカのシステムでやれる面白そうな事は全部やるつもりです。前作が、人間が能動的にカニになる必要があるゲームだとすれば、本作は遊んでいるうちにヒトをいつのまにかカニのエキスパートにしてしまう、カニ化(Carcinization)を目的としたゲームといえるでしょう。

──な、なるほど。わかったような、わからないような。ともかく、理解しました。『カニノケンカ・ニ』だからこそ得られるプレイ体験があるとして、それはなんだと思いますか。

ぬっそ氏:
操作するのはカニですが、あらゆる武器とメカと魔法のシミュレーターでもあるという事ですね。たとえばゲーム的な強さは無視して、剣と盾だけ持って戦い合っても、それはそれで剣を自由に振れるチャンバラごっこなので結構面白いですし、かと思えばハサミにジェットエンジンをつけて飛ばすことだけを生きがいにしているプレイヤーもいます。

今作では「スペル」というものを導入して火を噴いたり、トラップをしかけたりできますし、その人ごとの楽しみを見出せるゲームですね。最近ですと、「タカアシガニを三輪車に乗せてバーベルを持たせると強い!」という事実が発見されました。これは私も予想できませんでした。そういった訳の分からない事を試して、ゲーム的な数値だけでなく物理的な挙動として体験できるのはこのゲームならではだと思います。

──なるほど。内容もそうですがぬっそさんの強烈な言語化能力がインパクト強いです。ちなみにぬっそさんは『カニノケンカ・ニ』の実況などは拝見されますか。される場合、差し支えなければどなたのどういうプレイに胸が熱くなりましたか。

以下、回答します。

にじさんじ/加賀美ハヤトさん

最大のザリガニのタスマニアオオザリガニと脚最長の甲殻類タカアシガニの一騎打ち、迫力の殴り合いのなか、最後は必殺技のカニタマで決めてくれたのはアツい

兎鞠まりさん

オフラインリーグ上位のネオ・クオンタムに諦めず何度も挑み、劣勢から勝利を掴んでくれたのは嬉しかったですね

ちなみにこのバージョンではVRMの読み込みで揺れモノが逆立ってしまう不具合がありましたが、現在は修正されているので好きなモデルが使えると思います。

ちなみに前作の話になりますが、『カニノケンカ・ニ』が発表された後にユーザー大会で『終代世杯』というものが行われたのですが、優勝したシャコにフルセットまで持ち込んだタラバガニがいてどっちが勝ってもおかしくなかったんです、最後2ラウンド連続で落としてますが、どちらもゲージが溜まる寸前にノックアウトしていて、もうほんの少し耐えていれば逆転していたかもしれない。

このシャコは3カウントによるノックアウトをブキで体を浮かせる事により拒否するという、ゲームデザインの想定外の挙動をしていて、一見どうしようもないように見えますが、鎖鎌を使ってブキをはぎとったり、物理的に地面に押し付ける事で倒せるという謎のバランスが存在します。流石に分かりにくすぎるので、『カニノケンカ・ニ』ではこのシャコのテクニックは機能しなくなっています。

──ちなみにぬっそさんは、セガの龍が如くスタジオで5年働かれていました。最近の『龍が如く』シリーズではロブスターが出てきて活躍します。このロブスターについて、どのように思われましたか。技術的な感想をいただければ嬉しいです

ぬっそ氏:
ナンシーの事ですかね?横浜の川にいるザリガニです。すごく知能が高いですね。造形的な話でいえば、ハサミが地面に対してベタっと寝ていて、左右に開閉するような動きをしていますが、もうちょっと上下方向に角度がついていたほうがザリガニらしいかな……つまり誤解されているようにハサミの付き方がロブスターっぽいんです。あとよく飛び跳ねるけど、あんまりちゃんと歩いてるシーンを見たことがないような……龍が如くスタジオとはいえザリガニのモーションキャプチャはないと思うので、10脚のアニメーション作るのは大変でしょうから仕方ないですね。あとザリガニに毒はないと思います(ドブ川の衛生面的な意味かもしれませんが)ちなみにカニノケンカ・ニには世界最大のタスマニアオオザリガニが登場します。


──めちゃくちゃ早口な回答ありがとうございます。もう少し突っ込んだことを聞かせてください。『ネオアクアリウム』に『エースオブシーフード』、そして『カニノケンカ』ときて、『カニノケンカ』は珍しく続編に着手されたわけですが、なぜにカニノケンカだけ続編をつくろうと思われましたか?『エースオブシーフード』の続編を遊びたいというユーザーも実はチラホラ見かけます!

ぬっそ氏:
『カニノケンカ』に関してはプレイヤーのやり込みにゲームの拡張性が追いつかなくなった事と、新規プレイヤーをそのレベルに成長させるための仕組みが無いため、熱量のあるうちに続編を作る必要があると感じておりました。実際多くのユーザーフィードバックを活かして開発しているので、このタイミングでしか作れないものだと思っています。『エースオブシーフード』も操作性の面で影響を受けた『アーマード・コア』の新作が出てヒットした事もあり、今ならもっと楽しめる人が多いのではないかと新作の気運はあります。でも体は一つなので順番に。

──以前ぬっそさんはあるゲームのアワードに輝いた際に、「カニの形状がそのままプレイキャラとしての個性につながる」とプレゼンされていました。ぬっそさんが思う最強のカニは何ですか。

ぬっそ氏:
物理的にはタスマニアオオザリガニですけど、今は日本人になじみ深い可愛いアカテガニが強いと評判です。体格差を覆せるのはゲームならではの夢ですね。ハナサキガニは自分で料理した記憶が強く、お気に入りなので今回は使っていて楽しいカニに調整しています。好きなカニを楽しく使えるのが一番ですから、相性はあっても「カニに強い弱いの概念はない」状態が理想ではあります。

──前作でもシングルプレイはありましたが、『カニノケンカ・ニ』ではシングルプレイとしてキャリアモードを新たにつくられました。なぜ前作と異なるシングルプレイを追加しようと考えられましたか。

ぬっそ氏:
前作はキャンペーンとバーサスで完全にモードが分かれていたんです。基本的にキャンペーンをすべてクリアしたら対戦か縛りプレイかRTAしかやる事が無いんです。今回はカニを育てるという設定にしてシングルプレイからスムーズに対戦や協力プレイへと接続できるようにしました。昨今のローグライクゲームを参考に3択ドロップシステムにして、お金稼ぎをしなくてもいろいろなブキやスペルを試せるようにしましたし、レベルアップもテンポよく行われるようになりました。


また前作はベルトスクロールゲーム的な次々と倒していく楽しさがありましたが、そうした戦いも残しつつ、『アーマード・コア』のアリーナのような1on1も用意しました。人によって好みが違いますから、どっちをメインに遊んでも先に進めます。そしてクリア後も強くなったカニを使って対戦や協力プレイ、スコアアタック、タイムアタックができる。継承して二週目もできるし、キャリアモードにもランキングが存在し、高難易度に挑戦すればスコアも上がります。ランキングに載っているカニとは非同期対戦も出来て、理想のカニを作るモチベーションになる。そうしたゲームループを想定しています。

──今は早期アクセスということで、今後の進化も楽しみにしております。ありがとうございました。

『カニノケンカ・ニ』は、PC(Steam)にて早期アクセス配信中だ。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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