欧米で人気過熱中の『No Man’s Sky』。ユーザーを魅力する“ミステリアスさ”が生み出すネタバレのせめぎあい

 

No Man’s Sky』の発売日が刻々と迫っている。数回の延期を経て、PC版は8月13日、PlayStation 4版は北米向けに8月9日(国内向けには25日)にリリースが予定されている。本作は、広大な宇宙を舞台とし、スペースシップに搭乗しての冒険はもちろんこと、さまざまな惑星をめぐりながら新たな生物を発見したり、資源を採掘しお金を稼いだりするなど幅広い楽しみ方が可能だ。ゲーム内には自動生成された膨大な惑星が存在しており、その数約1844京個とも言われている。

そういったスケールの大きさから期待値も高く、国内外で多くのファンがリリースを待ちわびている。、ファンの熱は発売日に近付くにつれて上昇する一方であり、NeoGAFやredditといったコミュニティでは「『No Man’s Sky』の発売まであと1週間」といったスレッドがにぎわいを見せている。しかし、ここまでのフィーバーを引き起こしているのは、ゲームへの期待のみならず、ゲームから漂う“ミステリアスさ”がユーザーを惹きつけているからなのかもしれない。

宇宙と惑星を包む神秘性

通例では、ゲームが発売日に近付くと、大手メディアがレビューやプレビューといった手法でゲームの断片的な情報を掲載することが多い。しかし各メディアのレビューを集積するOpen Criticは、『No Man’s Sky』は『DOOM』のように事前にROMがメディア向けに配布されていないと報告している。発売前にROMは配られるようだが週末になるとのことで、あくまでHello Gamesは発売直前まで製品版の情報の解禁を許さない姿勢を見せている。興味深いのは、こういった情報が出ない状態がユーザーに熱を与えている点だ。

その加熱を実証するように、7月29日には『No Man’s Sky』の事前ROMを1300ドルかけて購入した男がredditに現れた。daymeeuhnと名乗るこの男は、eBayを経由し購入したPlayStation 4版のゲームディスクやパッケージを画像サイトにアップし、自慢し始めた。そして、このゲームの購入に1300ドルを費やしたことがいかに有意義であるかを雄弁に語り、少しでもゲームの情報を見たいというユーザーの反応に気を良くしたdaymeeuhn氏は、インプレッションをペラペラと話し始めた。それに加え、dailymotionなど序盤のプレイ動画をアップするなど数々のネタバレも始めた。もちろん、こういったネタバレや自慢を繰り返すdaymeeuhn氏が万人に好かれるはずもなく、数多くのユーザーが自重を求め批判を始めたが、当人はどこ吹く風。自慢と感想を交えたプレイ記録を日々redditに投稿し続けた。

そして、日を追うごとに、悪意があってかはわからないが、ネタバレ情報を書き込むユーザーはdaymeeuhn氏以外にも増え始め、今やあらゆるフォーラムに『No Man’s Sky』のリーク情報が拡散されつつある。このような展開は、情報を懸命にコントロールしてきたHello Gamesにとって喜ばしいはずもない。CEOのSean Murray氏はこの事態を重くみたのか、Twitterで「僕らは『No Man’s Sky』に驚きを詰めるために数年を費やしてきたし、君たちは待つために数年を費やしてきた。どうか自分のためにネタバレをするのはやめてほしい。」とユーザーに警告を促した。

どうせいつかはネタバレを食らう

この発言にdaymeeuhn氏はすぐさま反応。リーク映像をアップしたことは適切ではなかったと認め、Murray氏を傷つけてしまったことに少しだけ罪悪感を抱いているとKotakuに話した。反省を見せたかと思ったdaymeeuhn氏だが、自身のsubredditを編集し、「後悔はしていない。ネタバレに対しガッカリする人が出ることはわかっていたが、ネタバレはいつか誰かから食らうものであり、自分はただゲームのすばらしさを伝えたかっただけだ」と開き直りの言葉を洩らしている。その後もネタバレ専用のsubredditにこもりつつ、時に反応欲しさにそれ以外の場所にも出現し「中央についた!これ以上は秘密さ。どこの中央かはそのうちわかるよ、あ、やっぱり中央じゃなかった」と思わせぶりな発言を繰り返し、ネタバレを嫌うユーザーのひんしゅくを買っている。

このように、そのミステリアスさから意外なところで騒動を引き起こしている『No Man’s Sky』。謎の多さは、ゲームの内容に自信がないために生まれているのではないかという声も存在するが、はっきりとさせておきたいのは、Hello Gamesは十分な情報公開をおこなっているということだ。「宇宙の冒険」「惑星の探索」「資源の回収」といったサイクルを中心にゲームが展開されていくことはすでに述べており、映像による情報露出にも精力的だ。交易を紹介するトレイラーではクラフティングの手順や交易の方法などを垣間見ることができ、サバイバルを紹介するトレイラーでは生き残るために気候や装備に合わせて立ち回りを変えなければいけないことがわかる。『No Man’s Sky』はほかにも数多くのトレイラーが公開されており、ゲームの一端が理解できるようになっている。

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ほかにも、PCgamerは「気になる10の疑問」と題しHello Gamesに質問を投げかけ回答を得ている。『No Man’s Sky』はMMOではないが、マルチプレイに対応している。しかし、惑星はあまりに多いので出会うことは少ないといった回答や、DLCの予定はないが発売後も精力的なアップデートをおこなうという話なども掲載されている。さらに、『Elite: Dangerous』のように惑星から資源を採取し、お金を稼いでいくことが基本の流れとなることやオフラインでのプレイも可能であるなどさまざまな事実を確認することができる。また、製品版のプレイ情報ではないが、複数のメディアがプレビューを掲載しており、どのような体験ができるのかを知ることができる。どんなゲームかわからないというのは、結局のところプレイしてみないとイメージが湧きにくいというデザインによるもので、Hello Gamesが情報をコントロールしていることとは強く結びつけにくい。

リリースにたどり着くまでの苦労が多かっただけに、Hello Gamesが慎重になってしまうのも無理はない。2014年には洪水でスタジオが半壊状態に陥り、さらに「sky」をめぐるいくつもの商標問題に悩まされてきた15人のデベロッパーにとっては、まさに待望のリリースとなるだろう。とにかく話題の尽きない『No Man’s Sky』も、来週には順次販売が開始されていく。前夜祭は十分盛り上がったが、後夜祭の方も盛り上がることを期待しておこう。