恋愛+撮影美少女シム『LoveR』開発者インタビュー。売上本数や発売から5年が経つのに元気にDLCを出し続けられる理由などを開発スタッフに訊く

恋愛シム『LoveR』(ラヴアール)。2024年に入ってからは、ポージングを伴うアクション追加DLCも発売。開発陣が目指す場所はどこなのか。そして同シリーズを取り巻く環境はどうなっているのか。ドラガミゲームスの『LoveR』シリーズ開発スタッフ3名に話を訊いた。

恋愛シミュレーションシリーズ『LoveR』(ラヴアール)。同シリーズは、発売から5年近く経過するも、未だに開発とコミュニティは元気だ。2024年に入ってからは、ポージングを伴うアクション追加DLCも発売。新たな挑戦も始まっている。

『LoveR』は、『トゥルーラブストーリー』シリーズや『キミキス』『フォトカノ』などを手がけた杉山イチロウ氏がプロデュースする恋愛シミュレーションゲームだ。キャラクターデザインは、人気イラストレーターの箕星太朗氏が担当。主人公となるのは高校2年生の男子。彼はカメラに目覚めたことをきっかけに、さまざまな女の子と出会うようになる。『LoveR』は2019年にPS4向けに発売されたタイトルだ。その後、追加要素を加えて対応プラットフォーム向けに表現を変更し、2020年にPS4/Nintendo Switch向けにリリースされたものが『LoveR Kiss』である。発売よりアップデートとDLCが長期にわたり展開されており、精力的なサポートが続けられているのも特徴である。


2月14日には、新DLC「ストーリードレスチェンジ&桜並木と春のコーデ」が発売。同DLCでは新たなフォトスポットとして「桜並木」、そして新コスチューム「ショコラ」シリーズ(3種)、「RIRIパーカー」シリーズ(3種)を収録する。発売から5年が経とうとしているとは思えないほど元気な『LoveR』シリーズだが、開発陣が目指す場所はどこなのか。そして同シリーズを取り巻く環境はどうなっているのか。ドラガミゲームスの『LoveR』シリーズ開発スタッフ3名に話を訊いた。

──よろしくお願いいたします。2月14日『LoveR』および『LoveR Kiss』の大型アップデートやはじめてとなる新背景のDLC発売が開始となりました。昨年より掲げてこられたユーザー拡大戦略のひとつと、とらえてよいでしょうか。

安田善巳氏(エグゼクティブプロデューサー):
おっしゃる通りです。昨年は、未発表のことを含めますと、「さまざまな挑戦を行い壁にぶちあたる」という苦い経験もしました。しかし、そうした経験も糧にして、我々がこれから出来ることはまだまだあると感じています。今回のストーリードレスチェンジの導入や新背景DLCの配信開始もそのひとつです。


──壁にぶちあたるとはどのようなことが起きたのでしょうか?

安田善巳氏(エグゼクティブプロデューサー):
実は新たなユーザーに『LoveR』を届けるための施策があったのですが、それを実現するための障壁があり、苦悶しました(笑)。

──なるほど。『LoveR』および『LoveR Kiss』については、ぶっちゃけどれくらい売れているのでしょうか。

安田善巳氏(エグゼクティブプロデューサー):
『LoveR』の累計販売本数は7万本を突破したところです。同ジャンル作品の過去最高販売本数と比べますと、3分の1くらいです。が、魅力的なアップデートやほかのプラットフォームに展開することで、これからも販売本数を伸ばしていくことは可能であると考えています。


──7万本、おめでとうございます。『LoveR』はPS4版発売からなんともうすぐ5年になります。ここまで長寿タイトルになることは予想していましたか。

安田善巳氏(エグゼクティブプロデューサー):
『LoveR』は、ローンチでスタートダッシュを切ることはできませんでした。ですが、地道にアップデートを積み重ね、着実に販売本数を伸ばして来ました。カメラで写真を撮るというユニークなゲームシステムを持っていますし、開発スタッフのモチベーションにもつながっていますので、『LoveR』のアップデートをやらない手はないと考えていました。

──『LoveR』自体は、もともと角川ゲームスより生まれ、スタッフがドラガミゲームスに移り、それにあわせてIPも譲り受けられたという特殊な経緯があります。ドラガミゲームスに移っても『LoveR』シリーズのコンテンツ開発を続けるという判断は、ドラガミゲームス体制になってすぐ下されたものでしょうか。迷いはなかったですか。

安田善巳氏(エグゼクティブプロデューサー):
開発スタッフ約30名といっしょに角川ゲームスから独立する段階で、『LoveR』の権利をすべて有償で取得させて頂きました。『LoveR』というゲームコンテンツの権利も重要ですが、恋愛シミュレーションゲームのエンジンがなければ、新作を作っていくことは難しいので、まず、我々が作ったゲームエンジンを引き継ぐことを最優先で考えていました。

そして、独立後も『LoveR』の開発を続けていくことに大きな迷いはまったくなかったですね。日本で生まれた個性的なゲームジャンルである恋愛シミュレーションゲームは、これからも「ドラガミゲームス」が作っていく。当時は、そんな話題で、開発スタッフたちといっしょに熱く盛り上がっていました。


──角川ゲームスからドラガミゲームスに変わり、『LoveR』の作り方は変わりましたか。新体制になってしやすくなったことなどはありますか。

らをー氏(リードプログラマー):
「最高の恋愛シミュレーションゲームを作る!」という考えは以前より変わっておりません。ですが、ドラガミゲームスになることにより「今後も私たちが恋愛シミュレーションゲームを作っていくんだ」という想いがより強くなり、『LoveR』内の有用なコードを弊社ゲームエンジンに移植するなど、将来を見据えた改修の比重が以前より大きくなりました。それを生かし今後はより効率よく、より高品質なゲームを作っていきたいと考えております。


──本作は、恋愛ゲームと撮影ゲームの両方の側面をもっていますが、恋愛ゲームと撮影ゲームどちらの楽しみ方をしている人が多い印象でしょうか。

らをー氏(リードプログラマー):
強いていえば恋愛ゲームでしょうか。撮影はハマりだすと時間を忘れてしまうゲームですが、その動機は意中のキャラクターの魅力をより感じたいとか、様々な表情やしぐさに触れてみたいとか、ある意味ユーザー自身がキャラクターに恋をしているかのように楽しめるコンテンツです。そういう意味で、撮影ゲームも恋愛ゲームの一部なのかなと思っています。


──僕も同じ温度感で遊んでいます。安心しました。ちなみに本作のユーザーはかなりアクティブな印象があります。1ユーザーにつき、どのくらいDLCを購入しているなどのデータはありますか。またどのDLCが人気かなど教えていただけますでしょうか。

安田善巳氏(エグゼクティブプロデューサー):
1ユーザーあたりのデータはないのですが、両機種合わせたDLCの売上げでいいますと、大変ありがたいことに、どのDLCもコンスタントに3000本以上売れています。特に不人気のDLCはなく、すべて好評いただいております。おそらく『LoveR』の熱心なユーザーは、すべてのDLCをお買い上げ頂いているのではないかと見ています。

──すべてのDLCを……それは熱心ですね。売れ行き的に人気のあったDLC(あるいはセット)を3つ教えてください。

九印-quin-氏(アートディレクター):
直近で配信された「魅惑のコスチューム5種セット」、「青春!スクール衣装セット」、「ドキドキ☆8種のサマーコスチュームセット」は人気がありますね。


今では手に入りにくい衣装のカラーチェンジという内容なので、今回初めてヒロイン達に着せられたという方も多かったのではないかと思います。個性的なデザインからクラシックなデザインまで幅広く収録した3セットなので、『LoveR』を最近プレイし始めたという方にもオススメです。

「魅惑のコスチューム5種セット」

「青春!スクール衣装セット」

「ドキドキ☆8種のサマーコスチュームセット」


──キャラクターやコスチュームのデザインにはファンの想いなども反映されていますよね。

九印-quin-氏(アートディレクター):
はい。コスチュームなどのデザインをはじめゲームのいろいろな所でファンの皆様の声を反映させています。DLCとして配信された「スノーファーコート」は冬でもヒロイン達を寒くない格好で撮影したいというファンの皆様の声から生まれました。個人的にもオシャレで可愛い私服は欲しいと思っていたので、この機会に作成できて良かったなと思っています。


──『LoveR』シリーズは特にファンコミュニティを大事にしている印象です。コミュニティとの関わりにおいて、大事にしているモットーやテーマはありますか。

九印-quin-氏(アートディレクター):
ファンの皆様がヒロイン達を愛してくれる限り、『LoveR』という作品は生き続ける事ができます。応援して下さる皆様の生活に少しでも豊かさをプラスしたい、そんな想いでコミュニティを盛り上げられる様努めています。また自分の作品を他のユーザーに見てもらえる機会を増やす事で、ファンの皆様同士の繋がりをつくる事も大切にしています。

X(旧Twitter)に投稿して頂いた作品を公式アカウントがリポストしたり、コンテストの
開催など、気軽にご参加頂ける場を提供しております。コンテストでは公式VTuberのマジカルユミナが参加者それぞれに書いたお手紙やイラスト入りカレンダーをプレゼントしています。ヒロイン達をより身近に感じて頂けたら嬉しいです。


──では直近のお話をさせてください。本日、アップデートされた「ストーリードレスチェンジ」について教えていただけますか

らをー氏(リードプログラマー):
ストーリードレスチェンジとは、サマーデイズにて彼女たちの衣装を別の衣装に変更(ドレスチェンジ)してもらうシステムです。今までもラヴァーズデイズ等では色々な衣装を着てもらうことが可能でしたが、「サマーデイズ中でも彼女たちに色々な衣装を着てもらいたい!」という強い想いがあり、今回追加のシステムとして実装させていただきました。このシステムにより、是非皆さんにも彼女たちの色々な魅力を発見してもらえればと思っています。

──これからの『LoveR』展開について聞かせてください。

安田善巳氏(エグゼクティブプロデューサー):
今回の日本版で追加した新機能を、アジアのユーザーにもお届けできるように準備を進めています。同時に、『LoveR』をより多くのユーザーに楽しんでいただけるよう、新規ユーザー向けの商品企画も進めてまいります。そして、もちろんコンスタントに新衣装のリリースをしていきたいですね。

──ありがとうございます。今後を楽しみにしています。では最後にこの質問を。Sweet Oneで新作はつくられているのでしょうか。気になります!

九印-quin-氏(アートディレクター):
『ロリポップチェーンソーRePOP』や未発表新作タイトルの開発が終了してからになると思いますが、我々、開発スタッフが続編や完全新作を作るチャンスが欲しいですね。もちろん我々も事業としてやっていますので、そのためには、『LoveR』に対して説得力のある実績が求められています。

ストーリードレスチェンジや背景の配信は、そのための重要なチャレンジのひとつであり、ユーザーの皆様もぜひ応援してください。よろしくお願いいたします。


──ありがとうございました。

『LoveR Kiss』は、PS4/Nintendo Switch向けに発売中である。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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