『Overwatch』謎の人物Sombraの正体とは、メキシコ出身のステルス系キャラクターの可能性が浮上
チーム対戦型FPS『Overwatch』(オーバーウォッチ)の新キャラクターをめぐって、これまでフォーラムサイトを中心に幾度となく議論されてきた「Sombra」という謎の存在。スペイン語で“影”を意味する人物の正体を暴くことは、いまや運営元であるBlizzard Entertainment(以下、Blizzard)とユーザーたちが繰り広げる代替現実ゲームとして、そのプロセス自体が楽しまれている。一時期は、先日追加されたばかりのサポートヒーロー「アナ」のことかと思われたが、どうやら違うようだ。ゲーム内のマップに散りばめられたヒントや、データマイニングにより発掘された未使用の音声ファイルから、その正体はメキシコ出身のステルス系キャラクターではないかとの仮説が浮上している。全てが謎につつまれた“影”の存在を紐解いていく。
「Sombra」が仕込んだ暗号メッセージ
『Overwatch』は、6人ずつのチームに分かれて計12人でオンライン対戦が楽しめる一人称視点のMOBA系アクション・シューティング。BlizzardがWindows/PlayStation 4/Xbox One向けにリリースした十数年ぶりの完全新規タイトルである。未来の地球を舞台に、多種多様な武器や装備、特殊能力を操るヒーローが登場するのが特徴で、キャラクターによって得意分野や役割分担が大きく異なる。先日のアップデートにて、ストーリー上で故人だと思われていた「ファラ」の母親、「アナ」が新キャラクターとして追加された。その際にも、「アナ」の過去を解き明かすストーリー動画の中に、何らかのヒントと思われる暗号が隠されていた。16進数を使った暗号の解読文がスペイン語であることから、「Sombra」にまつわる新たなヒントとも考えられるが、今のところ真相を知る術はない。
一つ確かなことは、「Sombra」と「アナ」は同一人物ではないという事実が明確になった点だ。『Overwatch』のゲームディレクターを務めるJeff Kaplan氏が、業界メディアKotakuのインタビューに対して、次のようにコメントしている。「Sombraについては、随分と長い間存在を匂わせてきた。面白いのは、私たちがTemple of Anubisにアナに関するヒントを残した時、人々はSombraの痕跡を見つけることに夢中で、それがアナではなくSombraのティザーだと思い込んでしまったことだね。ユーザーの反応をうかがう上で実に興味深い部分だった。時に人は、足あとに囚われるがあまり視野が狭くなりすぎてしまう。(中略)2人のキャラクターを混同させようとしたわけではないんだ。気の利いた回答はSombraの役目かな。Sombraが自身のことをもっと知ってほしいと感じた時、きっと自分から教えてくれるだろうね。彼女の得意分野だから」。この言葉が示すとおり、“影”の存在を匂わせる暗号は他にもある。
先日、「アナ」について語ったデベロッパーの解説動画が公開された際、ノイズのように連続したバーコードが終了間際の一瞬に仕込まれていた。コードの解析に参加したRedditユーザーが解読プロセスを説明している。まず、この画像を単体のバーコードに切り分けて、それぞれを2進数の文字列に変換する。次に、n行目の数字がn列目にくるように並べ替え、最後の行を右端にそろえて全体を3列に分割。2列目を1列目の下に、3列目を2列目の下にそれぞれ繋げる。最後に、全てをグリッドで区切って1の欄を黒色、0の欄を白色で塗りつぶすとQRコードが完成するというわけだ。現れたメッセージは、“¿Estuvo eso facilito? Ahora que tengo su atención, déjenme se las pongo más difícil”。スペイン語で、「簡単だったかな? ようやく気付いてもらえたことだし、今度はもっと難しくしていこうか」を意味する。もしかしたら、「Sombra」からのメッセージかもしれない。
「Sombra」とはいったい何者なのか
最初に「Sombra」の存在が確認されたのは、『Overwatch』がまだクローズドベータテスト期間中だった昨年11月。メキシコを舞台にしたマップ「Dorado」において、「ソルジャー76」「Jack Morrison」(オーバーウォッチの元司令官、後のソルジャー76)、そして「Sombra」と書かれた機密フォルダが見つかった。また、同マップにある発電施設のコンソールパネルには、「Sombraプロトコルによりアクセス不能」とスペイン語で表示されている。今年の春に新マップが追加された際には、フードを被りマスクを装着した謎の人物の写真や、「Sombra」について言及した記事が、「Route 66」をはじめ複数のステージで発見された。なお、新ヒーローのティザー情報がゲーム内に散りばめられたのは、これが初めてではない。以前にも、「D.Va」がまだリリースされていなかった頃、「Hanamura」のアーケード内に彼女のポスターが貼られたことがある。
この人物が未発表の新キャラクターであるという噂は、この頃から現実味を帯びていく。きわめつけは、今年4月にGameSpotが公開した『Overwatch』開発チームのドキュメンタリー映像(問題のシーンは15分25秒から)だ。スタジオの制作風景を映したシーンで、テストプレイ中と思われるスタッフのヒーロー選択画面に、カメラは見慣れないスナイパーの姿を捉えていたのだ。今となっては、これが「アナ」であったことは明白だが、この時はまだ彼女に関する具体的な情報はほどんどなく、一部では謎の人物「Sombra」こそが先の戦いで死亡したはずの「ファラ」の母親だと思われていた。ちなみに、「Sombraプロトコル」に関しては諸説ある。「ソルジャー76」がオーバーウォッチ凋落の背後に隠された真実を暴くために、黒い噂の絶えない企業や金融機関を襲撃していることを考えれば、電力施設の端末に残された謎のプロトコルが「Sombra」の関与を示唆しているとも受け取れる。もしかしたら「Sombra」もまた、「アナ」同様にオーバーウォッチ設立メンバーの一人だったのかもしれない。当時の集合写真には、いまだ正体が明かされていない女性キャラクターが一人だけいるからだ。
本当に「Sombra」は次に登場する新キャラクターなのか。その答えを知るには些か決め手に欠けるが、PTR(Public Test Regionの略、パブリックテストサーバーのこと)のデータマイニングで発見された未使用の音声ファイルから、彼女の正体について一つの仮説が浮上した。PTRには、「姿は見えないが、そこにいるのは分かっている」や「どこに隠れているの」といった各キャラクターの台詞がすでに収録されており、ステルス能力を有したキャラクターの追加が予想できる。実際に登場するとなれば、スペイン語で“影”を意味する「Sombra」の人物像にぴったりの能力だ。このことから「Sombra」の正体は、メキシコを拠点に活動するステルス系のキャラクターであるとの見方が強い。もちろん、「Sombra」の存在そのものが、Blizzardによって半分、ファンによって半分仕込まれた“壮大な釣り”ではないかとの一部の意見も否めない。いずれにせよ、“影”は常に存在している。