『League of Legends』欧米プロシーンはいよいよリーグ最終週へ。世界大会代表の座に近づくのはどのチームか?

春・夏と半期ずつ開催されてきたLCSだが、Summer Splitは先週のWeek 8終了をもっていよいよ最終週に突入した。今回の記事では、最後の2試合を残しての各チームの勝ち点状況と、プレイオフや降格圏を見越した予想を解説していく。

LCSとは「League of Legends Championship Series」の頭文字を取った略称であり、欧米の2シーンで行われているRiot Games公式運営トップリーグを指す。ヨーロッパリーグが「EU LCS」、北米リーグが「NA LCS」と呼ばれている。これら2リーグは韓国・中国・台湾の3地域のリーグと合わせて、勝ち抜くことで世界大会「World Championship」への地域代表参加資格を直接獲得することのできる、まさしく地域トップのリーグとなっている。春・夏と半期ずつ開催されてきたLCSだが、Summer Splitは先週のWeek 8終了をもっていよいよ最終週に突入した。今回の記事では、最後の2試合を残しての各チームの勝ち点状況と、プレイオフや降格圏を見越した予想を解説していく。

 

EU LCS

2016シーズン EU LCS特集

EUエクソダス、新星の隆盛、新編成のチームの戦い、苦しい春を乗り越え開花したチームと、LCSへと足を踏み入れたものの厳しい洗礼を浴びたチーム。さまざまなドラマを内包したEU LCSも残りわずか。Bo2形式(1枚の対戦カードにつき最大2試合)となったため、引き分けが多く勝ちきれていないチームは最終週も気が抜けないことだろう。

EU LCS Week 8終了時の順位表。緑がプレイオフ準決勝シード確保、青がプレイオフ出場決定、赤がプレイオフ脱落を示している。 画像出典: @lolesports
EU LCS Week 8終了時の順位表。緑がプレイオフ準決勝シード確保、青がプレイオフ出場決定、赤がプレイオフ脱落を示している。
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トップグループ

昨年夏のレギュラーシーズンは「無敗」を達成したFnaticだが、今年はそこまでの暴威を振るっているわけではない。とはいえ依然としてヨーロッパのトップチームのひとつである。 画像出典: Riot esports Flickr
昨年夏のレギュラーシーズンは「無敗」を達成したFnaticだが、今年はそこまでの暴威を振るっているわけではない。とはいえ依然としてヨーロッパのトップチームのひとつである。
画像出典: Riot esports Flickr

トップグループを走るのは負けなしで春夏ともその強さを見せつけているG2 e-Sports(勝ち点34)、春の苦闘を乗り越え一気に上り詰めてきたSplyce(勝ち点30)、終盤に選手を変えて世界を見据えるFnatic(勝ち点26)だ。この3チームはレギュラーシーズンを1位ないし2位で終える可能性がある。上位2位のチームはプレイオフトーナメントでシード権が与えられるため、できるのであれば2位以上に入っておきたい。とはいえ、残りの日程においてこの3チームの直接対決はG2 vs Fnaticのみとなっている。ここでFnaticが勝利しても勝ち点差でG2を逆転することは不可能だ。Splyceの失速とあわせてはじめて、Fnaticが2位につける可能性がわずかに残っている。

プレイオフ確定組

現在4位につけているGiants Gaming(勝ち点23)は7位のTeam Vitality(勝ち点16)と7点以上の勝ち点差が開いたため、プレイオフ出場が確定している。一方で2位との勝ち点差も同様に7点差となったので、今週の試合結果はプレイオフそのものには影響しないことになりそうだ。チームの新戦術を伏せてプレイオフに向けた消化試合になる可能性もある。

プレイオフ出場圏(未確定)

現在5位のH2k Gaming(勝ち点21)および6位のUnicorns of Love(勝ち点20)は、現時点ではプレイオフ参加権を得ているが、今週末の結果次第では7位まで叩き落とされる可能性が残っている。現在勝ち点16のチームが2勝すると22点となるためだ。しかし、彼らには幸か不幸か直接対決が残っている。Week 9 Day1の最終試合であるUoL vs H2kで勝利できれば、7位以下のチームに対して確実な勝ち点差を作ってプレイオフ進出を確実にできる。彼らにとってはレギュラーシーズンの天王山と呼んでも良い試合になるだろう。

混迷の降格圏争い

現在7位から10位のチームはTeam Vitality(勝ち点16)、FC Scalke 04(勝ち点16)、Origen(勝ち点14)、Team ROCCAT(勝ち点11)という状態だ。最も可能性が高いのは、勝ち点が高い2チームの直接対決、すなわちVitality vs SC04の勝利者が7位となって降格圏を脱出するシナリオだ。この意味でWeek 9 Day 2における最大の見どころがこのカードだろう。仮に彼らの勝ち点が並んだ場合は、過去の対戦結果で順位が定まる。もしかすると追加の試合(タイブレーク)が行われるかもしれない。

しかし、ここに前代未聞の状況が訪れるシナリオが一つだけ残っている。実現する可能性は限りなく低いが、以下の条件を全て満たすと、勝ち点17のチームが4チーム並び立つ状況が発生する。

  • ROCCATがFnaticおよびGiantsに勝利する(勝ち点+6、昨年の Copenhagen Wolvesの再現!)
  • VitalityはG2に敗北、SC04との直接対決に引き分ける。(勝ち点+1)
  • SC04はGiantsに敗北、Vitalityとの直接対決に引き分ける。(勝ち点+1)
  • Origenが1勝1敗で勝ち点3を獲得する。(勝ち点+3)

以上を満たした時、勝ち点17のチームが4チーム並び立つという、EU LCS史上類を見ない状況が発生する。上下を決定するのにどれほどのタイブレーク戦が行われるのか、たった一つの安定した来季出場権を賭けた戦いが繰り広げられるのかもしれない。

 

NA LCS

2016シーズン NA LCS特集

春夏間に行われた国際大会「Mid Season Invitational」におけるCounter Logic Gaming(CLG)の予想外の健闘により、その復権を高らかに世界に向けて発信した北米シーン。各チームの現在の順位と、プレイオフおよび入れ替え戦を見据えた状況を見ていこう。なおNA LCSはBo3形式(2本先取)のため、EU LCSとはちがい引き分けは存在せず純粋に勝利数のみで順位が決まっている。

NA LCS Week 8終了時の順位表。緑がプレイオフ準決勝シード確保、青がプレイオフ出場決定、赤がプレイオフ脱落を示している。 画像出典: @lolesports
NA LCS Week 8終了時の順位表。緑がプレイオフ準決勝シード確保、青がプレイオフ出場決定、赤がプレイオフ脱落を示している。
画像出典: @lolesports

トップグループ

ImmortalsとTeam SoloMid(TSM)が3位以下のチームを圧倒的に引き離しており、Week 9の結果がどうあれ彼らはプレイオフのシード権が確定している。どちらかと言えば挑戦的で新しいプレイの実験、あるいは逆に手札を伏せた消化試合となるかもしれない。

プレイオフ確定組

現在10勝で3位のCloud9、9勝で4位および5位のTeam LiquidとCLGはそれぞれプレイオフ出場確定となる。7位のApex Gamingが6勝なので、6位以上は確定なのだ。世界大会に向けては、プレイオフでの結果と、地域選抜への出場権を賭けたChampionship Point獲得点が問題となるだろう。

プレイオフ出場圏(未確定)

現在当落ライン上にいるのがTeam EnvyとApex Gamingとなる。直接対決こそ残っていないものの、勝利数が1差のため、Envyがマッチを落とすと並ばれる可能性も少なくないのだ。過去の直接対決の結果からはEnvyが有利だが、それでも油断は禁物だ。

降格圏チームの戦い

強豪TSMに勝利し笑顔でファンと触れ合うP1の選手たち。彼らはこれまでLCSで燃え尽きていったチームの灰から蘇った不死鳥である。 画像出典: Riot esports Flickr
強豪TSMに勝利し笑顔でファンと触れ合うP1の選手たち。彼らはこれまでLCSで燃え尽きていったチームの灰から蘇った不死鳥である。
画像出典: Riot esports Flickr

現在降格圏の脱出を目指せるチームはNRG e-SportsとPhoenix1(P1)の2チームだ。いずれも4勝12敗で7位のApexとの勝ち数差は2と厳しい状況ではある。しかしApexの残っている試合はLiquidおよびCLGと、いずれもかなり厳しい戦いが予想されるカードとなっている。NRGの残り試合は対CLGおよびTSM、P1の残り試合はImmortalsおよびEnvyが相手と、これまたApexに劣らぬ厳しい状況なのだが、それでも一握の希望は残っている。特にP1はWeek 8においてTSMを破るという快挙を成し遂げており、チーム状況が上向いてきている。まだ全てを諦めるには早いのではないだろうか。現在最下位のEcho Foxは、残念ながら最下位確定である。残り2試合と入れ替え戦での健闘に期待したい。

 

レギュラーシーズン後の天国と地獄

2か月間にわたって繰り広げられたレギュラーシーズンだが、順位が決まってもまだまだ各地域のプロシーンは終わらない。世界大会に向けて用意された椅子は、各地区に3つずつ。これを争う戦いが幕を開けるのだ。

ひとつめの椅子は、各リーグの上位6チームが出場する「プレイオフ」の優勝チームに与えられる。プレイオフは8月に開催されるBo5方式(3本先取)でのトーナメントであり、Summer Splitの頂点に立つチームを決定する大会となる。レギュラーシーズンを1位・2位で抜けたチームは、プレイオフ準決勝のシードを得ることができるのでいっそう有利となる。プレイオフ優勝チームは無条件で世界大会への参加資格を獲得する。各プレイオフの準々決勝・準決勝はいつもの配信スタジオで行われるが、3位決定戦以降は会場が変わり、EU LCS Finalsはポーランドのクラコフで、NA LCS Finalsはカナダのトロントで、8月27~28日に開催されることになっている。

ふたつめの椅子は、春夏で獲得したChampionship Pointの合計が1位となったチームに与えられる。Championship Pointは各Splitのプレイオフ出場を果たせば獲得できるため、Summer Splitのプレイオフの結果でも変動する。またChampionship Point合計1位とSummer Splitプレイオフ1位が同一チームだった場合、椅子はChampionship Point 2位のチームへと移動する。

最後に残ったみっつめの椅子は「Regional Finals(地域代表決定戦)」で競われる。この大会は、プレイオフ優勝でもChampionship Point 1位でも世界大会出場権を獲得できなかった、Championship Point上位4チームが争うトーナメントだ。この大会は獲得ポイントによってシードが決まっており、ポイントが多いチームほど勝ち上がりに必要な試合数が少なくなっている。昨年のNA Regionalsでは、レギュラーシーズンに不調でポイントが稼げなかったCloud9が一番下から全ての対戦を勝ち抜き、みごと北米代表の椅子をもぎ取るという展開が見られ、北米ファンを大いに湧かせた。今年もこういったどんでん返しは起こるだろうか。

ここまでがレギュラーシーズン後の「天国」なら、ここから言及するのは「地獄」となる。LCSの最下層チームにとって「残留戦」となる「プロモーション」は、LCSへの昇格を目指すChallengerチームにとっては「昇格戦」であり、チームの実力がLCSにふさわしいかを測る「入れ替え戦」だ。LCSでプレイオフに出場できなかった8~10位の最下位チームは、プロを目指してChallenger Series(CS)を勝ち上がってきたチームとの入れ替えを賭け、戦わねばならない。昨年は最下位チームが「自動降格」となり、CS優勝チームが「自動昇格」するシステムだったのだが、今年はこのシステムはなくなり、最下位の3チームが全て入れ替え戦に臨むことになっている。LCSチームはここで踏ん張らねば来年春のLCSには出場できず、CSチームはここで勝利をもぎ取りさえすれば来年春から晴れてLCSチームとなることができる。EU LCSの降格圏は未だ混迷の中にあり、NA LCSもEcho Fox以外はどのチームが降格圏となるかは決まっていない。昨年同様のスケジュールであれば、プロモーションは世界大会前の9月に行われるはずだ。来シーズンの動向を測る戦いがすぐそこに迫っている。

来る10月にはいよいよ世界大会、World Championship(Worlds)が約1か月間をかけて開催される。アジアをめぐった2014年、ヨーロッパをめぐった2015年につづき、2016年のWorldsは北米へと回帰。グループステージはサンフランシスコ。ノックアウトステージ準々決勝はシカゴ。準決勝はニューヨーク。そして決勝戦はRiot Gamesのお膝元であるロサンゼルス。既に現地観戦チケットが販売中だが、もちろんネット配信でも観戦することができる。今年の世界王者は一体どの地域の、どのチームになるのだろうか。プロたちが繰り広げる華麗な戦いに期待してゆきたい。

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昨年の世界王者「SK Telecom T1」の優勝記念スキンもつい先日に発表された。世界王者となったチームはこのように、優勝を記念したスキンが毎年制作されるのが恒例だ。スキン制作の対象となるのは、もちろん世界大会で優勝チームが使用したチャンピオンとなる。今年はどのようなチャンピオンが世界大会で活躍することになるのだろうか。

[執筆協力: ユラガワ@Wired-Lynx]

Sawako Yamaguchi
Sawako Yamaguchi

雑食性のライトゲーマー。幼少の頃からテレビゲームに親しむが、プレイの腕前は下の下。一時期国内外のTRPGに親しんでいたこともあり、あらゆるゲームは人を楽しませるだけでなく、そのものが出発点となって人と人を結びつけ、新しい物語を作る力を持っていると信じている。2012年から始めた『League of Legends』について、個人ブログやTwitterにて日本語で情報発信を続けている。

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