Steamにて「定価2万2000円」のゲームばかり売るパブリッシャーに疑念寄せられる。乱造され高額で売られるアセットそのまんまゲーム
インディーデベロッパーのHedeは1月4日、『GTH 3033 – Grand Theft Hunter 3033』を配信開始した。対応プラットフォームはPC(Steam)で、Steamストアページの表記によれば日本語表示に対応している。
本作の販売価格は税込2万2000円。一方でリリース記念セールにて1月11日まで40%オフ、同デベロッパーの過去作品とのバンドル購入であれば90%以上オフという破格の割引価格が用意されており、不可解な値段設定の作品だ。
『GTH 3033 – Grand Theft Hunter 3033』(以下、GTH 3033)は、斜め見下ろし視点のシューティングゲームだ。本作の舞台は、3033年という遠い未来の地球だ。架空の地球は、すでに幾度もの文明崩壊を迎えており、やがてロボットをはじめとする人ならざる生命体たちが暮らしているという。プレイヤーの目的は、ロボットの「モンスターハンター」となり、同胞であるロボットの領土を制圧していくことだ。マシンガンなどの銃火器や剣のほか、乗り物のバイクや車などが登場する。荒廃した都市部のなか、次々と襲い来るダミー人形風のロボット群を退けながら、巨大な二足歩行兵器との闘いを繰り広げていく。
本作で注目されるのはその価格設定だ。本稿執筆時点の販売価格は税込2万2000円。一方でリリース記念セールとして、1月11日までは40%OFFの税込1万3200円で販売されている。定価がかなり高い傍らで、リリース直後から破格の割引額となっている。なおゲーム市場調査組織Video Game Insightsが、2023年9月に公開した調査報告によれば、2023年時点のSteamストア平均販売価格は15.2米ドル(約2200円)とされている。また比較的高額で販売される、AAA(トリプルエー)タイトルと称される大規模開発作品でも定価は1万円前後で設定される場合が多いだろう。本作『GTH 3033』の販売価格は文字通り市場価格と比べて“桁違い”な設定といえる。一方でスクリーンショットやトレイラーから確認できるグラフィックやゲームプレイはシンプルで、値段に見合った内容を備えているようには見えない。
なお本作を手がけるデベロッパー兼パブリッシャーのHedeは、これまでに配信した複数のタイトルにおいて数万円の価格を設定しており、これらもスクリーンショットやトレイラーで確認できる内容とは不釣り合いな価格設定となっている。またその中の多くのタイトルが、リリース後に一定期間が経過すると90%以上のセール価格で販売。Hedeはこれまでの作品でも不可解な売り方を続けてきたようだ(SteamDB)。
またYouTubeチャンネル Vacantknightの上記の動画ではHedeのパブリッシングにより配信されているオブジェクト探しゲーム『Hidden』シリーズについて言及。同シリーズの多くが、購入したアセット(3Dモデルなど)にほとんど手を加えない状態で作られたゲーム、いわゆる“Asset Flip”ではないかと指摘されている。具体的には『Hidden』シリーズに登場する3Dオブジェクトには、Synty Storeにて販売されているゲーム開発者向けアセットのPOLYGON Seriesが利用されているという。
さらに『Hidden』シリーズでは、たとえば『Hidden Space Top-Down 3D』ではSteamストアのサムネイル画像まで販売アセットから流用されていることが確認できた。上記画像のように、同作のサムネイル画像はPOLYGON – Sci-Fi Space Pack販売ページに掲載された製品イメージを切り抜いたかのような画像となっており、ゲームタイトルだけが加えられているかたちだ。なお同シリーズの販売価格は『GTH 3033』同様の定価2万2000円かつ90%以上の割引でセール販売されている。アセットをそのまま流用したゲームが乱造され、不可解な高値で販売されているようである。
なお、Steamストア上には本作に限らず超高額タイトルがいくつか存在している。本稿執筆時点で購入可能なタイトルのうち、(バンドルを除く)日本円での最高販売額の作品はシングルプレイFPSゲーム『Action: Vengeance』と見られ、定価は19万7997円だ。10万円を上回るタイトルとしては、12万円の『Ascent Free-Roaming VR Experience』、10万100円の『The Official GamingTaylor Game, Great Job!』なども見られる。いずれもストアページ上から確認できるゲーム内容に釣り合わない非常に高い価格設定となっており、ゲーム自体を遊ぶために実際に進んで大枚をはたいたユーザーがいるのかは疑わしいところだ。
こうした奇妙な売り方がおこなわれている目的は不明。たとえば過去の事例では、マネーロンダリング手法に利用されているのではないか、といった疑いを向けるユーザーもみられた(関連記事)。今回配信開始された『GTH 3033』においても、本稿執筆時点の同作のSteamフォーラムにて、早くもマネーロンダリングではないかと疑うスレッドが投稿されている。
ちなみに、本作デベロッパーのHedeは、2023年12月5日に配信されたホラーゲーム『Scream or Die』の開発元でもある。『Scream or Die』の定価は1500円となっており、“正常”な販売価格設定。その約1か月後にリリースを迎えた『GTH 3033』では、再び2万円超の高価格設定に戻ってしまったかたちだ。どのような基準で価格設定がおこなわれているのか、謎は深まるばかりである。
いずれにせよSteamでは異常に高額なタイトルが時おり発売される状況にある。中には上述の『Hidden』シリーズのように販売されているアセットをそのまま使っただけで乱造されるゲームも存在。そうした不可解な値段設定の作品に、今後対処がおこなわれていくかどうかは注目されるところだろう。