『スカイリム』1年以上ぶりのアプデで「Mod有料販売」サポート進む。新たな認証クリエイター制度など登場にはメリットもあり警戒もあり
Bethesda Softworksは12月5日、『The Elder Scrolls V: Skyrim Special Edition』に向けて最新アップデートを配信開始した。Steam Deckへの正式対応のほか、各種不具合修正などが実施。さらにModサポートに関して大きな変更がおこなわれており、一部ユーザーには懸念も生じているようだ。海外メディアPC Gamerなどが伝えている。
『The Elder Scrolls V: Skyrim』はBethesda Game Studios(以下、Bethesda)が手がけ、2011年11月に発売されたオープンワールドRPGだ。舞台となるのは北方のスカイリム。名もなき囚人の主人公は処刑を免れ、ドラゴンを巡る冒険を繰り広げることになる。2016年10月にはリマスター版となる『The Elder Scrolls V: Skyrim Special Edition』が発売。2021年11月には10周年を記念した完全版『The Elder Scrolls V: Skyrim Anniversary Edition』が発売された(国内向けには2022年9月発売)。
このたび本作に向けてCreationアップデートが配信開始された。2022年9月に実施されたUpdate 1.6.640から1年以上ぶりの更新となる。さまざまな不具合修正がおこなわれたほか、PC版はSteam Deckに正式対応し、ウルトラワイドモニターにも対応を果たしている。そして大きな変更として、メインメニュー内のModとCreation Clubが一本化された「Creation」という新項目が追加されている。
従来のCreation Clubでは無料コンテンツのほか、有償通貨Creation Clubクレジットを用いて購入するコンテンツも存在。そしてCreation Clubのコンテンツは、Bethesdaおよび同社と契約を交わしたクリエイターによって制作されていた。Creation Clubは公式Modを提供する場となっていたわけだ。
一方で今後は、新たな取り組みとしてBethesda Game Studios認証クリエイタープログラム(Bethesda Game Studios Verified Creator Program)が開始。Creation Clubを拡張させたものであり、クリエイターがコンテンツの作成とリリースの両方を容易にできるようになるという。チームまたは個人で認証クリエイタープログラムに申請し、認可を受ければコンテンツの販売が許可されるとのこと。
また認証クリエイタープログラムでは、従来のCreation Clubよりもリリースの要件が緩和されているとのこと。ゲーム本編の背景設定との親和性が必要とされなかったり、ボイス付きコンテンツの制限がなかったりといった点が示されている。契約のもとでコンテンツが制作されていた従来のCreation Clubよりも、クリエイター活動に柔軟性をもたらす狙いがあるそうだ。
メニュー項目におけるModとCreation Clubが「Creation」に統合された点も、認証クリエイタープログラムの導入が背景としてありそうだ。ユーザー制作Modと公式Modの提供の場の垣根をなくす目的からだろう。Creationではさっそく新たな有料コンテンツも配信開始されている。
しかしアップデートを含む一連の動きは、一部ユーザーから懸念視されているようだ。というのも本作では過去に、Bethesda公式によってSteamワークショップでModを有料販売する施策が開始され、ユーザーの猛反発を受けてすぐさま中止となる一幕もあった。
反発を招いた背景には、お金が絡むことがModコミュニティに悪影響を及ぼすのではないかといった懸念もあるようだ。現状では知見や素材の共有など、コミュニティ全体で協力しあってMod制作がおこなわれている様子も見られる。一方Modが「売り物」になることでコミュニティの協力関係が崩れる、あるいはコンテンツやアイデアの権利を巡ってトラブルに発展するのではないか、といった懸念が生じていた。
こうした反応を受けてBethesdaはSteamワークショップでのMod有料販売サポートを断念したのち、Creation Clubという取り組みをおこなっていたわけだ。今回のアップデートや認証クリエイタープログラムの導入はCreation Clubを拡張する施策であり、SteamワークショップでのMod有料販売の際に生じていた意見と同様の懸念も見られる。
他方、これまでには一部Mod制作者がPatreonなどのクリエイター支援サイトでサブスクライブ登録者向けにModを有料公開するといった事例もみられ、権利的な観点からこうした活動を問題視する声もある。ほか、大手ModコミュニティサイトNexus Modsにおいても、3Dモデル・アニメーションの盗用が発覚してModが削除される例などはしばしばみられる。Bethesda側としては手数料による収益だけでなく、公式にModを管理・販売できる場を設けることでModを巡る権利的な懸念を解消する狙いもあるのだろう。
またゲーム内メニューから容易にModを導入できる点には、Mod利用のハードルを下げるメリットもある。PC版ではスクリプトを拡張するための非公式ツール「SKSE」を利用したModの制作・利用も盛んながら、同ツールはコンソールでは利用不可能。新たに公式Modサポートに向けた整備がおこなわれた背景には、そうした外部ツールを導入せず、PC・コンソール問わずカジュアルにModを楽しめる環境をつくる方針もありそうだ。
ちなみにBethesdaの手がける最新作『Starfield』における公式Modサポートは、2024年内に提供予定。ディレクター兼エグゼクティブプロデューサーを務めるTodd Howard氏は過去に、『Starfield』ではMod制作者たちが趣味だけでなく仕事にもできるような環境づくりを目指していると説明していた(関連記事)。今回の『The Elder Scrolls V: Skyrim Special Edition』におけるModサポートに関する変更も、そうした環境づくりに向けた動きかもしれない。
『The Elder Scrolls V: Skyrim Special Edition』はPC(Steam/Epic Gamesストア)およびPS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|Sなどに向け発売中だ。