都市開発シム『Cities: Skylines II』に「市民を歯の一本一本まで描画してるから重い説」浮上。開発元は一部を認め改善を約束
『Cities: Skylines II』は10月25日のPC版発売以来、最適化不足によるパフォーマンス問題が課題として指摘されている。そうした中、あるユーザーが独自検証によりパフォーマンス問題の原因を推察。距離に関わらず市民一人ひとりが「歯」に至るまで詳細に描画されるとの見解を投じ、波紋を広げている。
この状況を受けて開発元は海外メディアを通じて声明を発表。距離に関わらず詳細に描画される市民がパフォーマンスに影響を与えている点について認め、現在改善を進めていると明かした。
『Cities: Skylines II』は、高い評価を得た都市開発シミュレーションゲーム『Cities: Skylines(シティーズ:スカイライン)』の続編だ。プレイヤーは居住区やインフラなどを整備し、さらに産業を活性化させながら街を一から建設。市民の生活や経済などが複雑にシミュレーションされ、それらのニーズや状況変化に対応しながら街を発展させていく。
本作では交通AIの進化など、さまざまな要素が強化。なかでも市民には、それぞれがどのような人生を送ってきたかといったライフパスが記録されるシステムが導入された(関連記事)。また市民のデザインの際には、Didimoとの提携により同社の手がけるAIによるキャラクターモデル生成システム「Popul8」を活用。開発リソースを抑えつつ、季節・年齢層・職業などでグループ分けされたバリエーション豊かなキャラがゲーム内に実装されているという。
なお開発元Colossal Orderは発売前に本作の最低/推奨システム要件を引き上げていた。また、その後「目標とするベンチマークに達しないまま」PC版が発売されると告知。スタジオは本作の開発プロジェクトを長期的なビジョンで見据えており、PC版を予定どおり発売することが正しいステップになるだろうとしていた。結果として本作は最適化不足という課題を抱えたままのスタートとなり、発売後には推奨システム要件を満たしていても快適にプレイできないといった報告も寄せられている(関連記事)。
こうした状況下でRedditユーザーのHexcoder0氏は、本作のパフォーマンス問題の原因を独自調査に基づき推察。同氏はNVIDIAの提供するプロファイラ「Nsight Systems」を利用して本作プレイ中の動作状況を検証したという。結果、ゲーム中の市民一人ひとりの歯が、視点からの距離に関わらず描画されるといった動作が見られたという。
ゲームでは描画にかかる処理を軽減させる仕組みとして、距離によって描画を変化させる手法が用いられることがある。「LOD(Level of Detail)」と呼ばれる手法が代表的だろう。LODは簡単に説明すると、プレイヤーの視点から遠くにあるオブジェクトは粗めに、近くにあるオブジェクトは詳細に描画する仕組みだ。
Hexcoder0氏は検証から、本作では車などにはLODが適用されているものの、市民や細かなオブジェクトにはLODが用いられていないとの見解を示している。そのため視点から離れた市民であっても、歯のような詳細なモデルまで解像度を下げることなく描画されているのだという。
またHexcoder0氏は、画面内に市民たちが描画されたシーンのNsight Systemsでのプロファイリングを下記投稿にて紹介。画像の「Program Ranges」のタイムラインにおける、「Didimo/HDRP」と記載された青いブロックが市民の描画に費やされたフレーム数だとしている。先述のDidimoのPopul8が利用されたモデルの描画を指しているわけだろう。そして画像では、青いブロックのフレーム数が多くを占めている。つまり、少なくとも同氏が紹介したシーンにおいては、市民の描画にほかの要素の描画よりも長い時間が費やされたと見られる。
一連の検証からHexcoder0氏は、市民の描画にかかる負荷が大きい傾向があると推察しているようだ。なおそうした検証はすべて一ユーザーによっておこなわれたものである点には留意したい。同氏も先述した投稿にて趣味的な知識(my hobbyist knowledge)による見解である点を強調している。
とはいえ、Hexcoder0氏の投じたスレッドは大きな注目を集めることになった。本作のゲームプレイは、現時点ではあくまで都市開発が主体。基本的に都市や地区を鳥瞰視点でプレイすることになり、現状では市民一人ひとりの細かな描画を気にする場面は少ないだろう。そのためパフォーマンス問題の一因が、ゲームプレイに関わらない細かい描画にある可能性が示されたことで開発元を批判するユーザーも見られた。また市民一人ひとりの描画という点に関連してか、市民のライフパスを記録するシステムに問題があるのではないかといった憶測も呼んでいた。
こうした事態を受けて、開発元のColossal OrderはPC Gamerなど海外メディアを通じて声明を発表。同スタジオはキャラの歯が描画されていることを認めたものの、「パフォーマンスには重大な影響を及ぼしていない」としている。一方で本作ではキャラクターのLODが不十分であり、パフォーマンスに影響する部分があることを認めている。上述の指摘のように、キャラクターの描画が影響を与えている側面はあるようだ。開発元ではこうした問題への対処も含め、すべてのゲーム内アセット(オブジェクト)にわたる広範なLOD改善に向けた取り組みが進められているという。
【UPDATE 2023/11/3 9:30】
PC Gamerの報道に基づき記述を調整
また声明においてはキャラクターが現時点でのゲームプレイに一見不要に見えるほどディテールを備えている点にも言及。将来的にはこのディテールが活かされることが示唆された。なお声明では、市民のライフパスはキャラクターの描画と無関係であり、パフォーマンスに影響していないことが明言されている。
なお開発元は本作のパフォーマンスの問題はゲームの根幹に起因する問題ではなく、将来のアップデートでの改善が十分に期待できると伝えている。10月26日には本作に向けた初のパッチがSteam向けにリリース。最適化やパフォーマンスの安定化を狙いとした変更がほどこされた。今後もアップデートによる改善が進められると見られ、今回声明にて伝えられたような問題への対処もおこなわれることだろう。
『Cities: Skylines II』は、PC(Steam/Microsoft Store)向けに発売中。PC Game Pass向けにも提供されている。またPS5/Xbox Series X|S向けには来年春発売予定だ。