プレミアリーグの雄、マンチェスター・シティFCが『FIFA』若手プロと契約。スポルティングCPも続いてe-Sports参入か

イングランド・プレミアリーグに加盟中のプロサッカークラブ「マンチェスター・シティFC」は7月6日、『FIFA 16 ワールドクラスサッカー』プレイヤーのKieran ‘Kez’ Brown選手との契約を発表した。同クラブがe-Sports選手と契約するのは初。

【UPDATE 2016/7/26 13:30】 ポルトガルのプロサッカークラブであるスポルティングCPは7月21日、『FIFA』プロ選手であるFrancisco “Quinzas” Cruz選手との契約を発表。 Quinzas選手は過去に行われた『FIFA』世界大会での優勝経験のあるポルトガル人選手。また来月には「Lion Gaming」と題した『FIFA』大会を主催し、大会優勝者をQuinzas選手とともにスポルティングCP所属のプロ選手としてスカウトするとのこと。

 

イングランド・プレミアリーグに加盟中のプロサッカークラブ「マンチェスター・シティFC」は7月6日、『FIFA 16 ワールドクラスサッカー』プレイヤーのKieran ‘Kez’ Brown選手との契約を発表した。同クラブがe-Sports選手と契約するのは初。またリスボンに本拠地を置く「スポルティング・クルーベ・デ・ポルトゥガル(スポルティングCP)」についても、『FIFA』および『League of Legends』の選手・チームを獲得してe-Sportsに参入する見込みという報道がなされている。

Kez選手は18歳と若手ながらも、既に「Gfinity Cups」といったトーナメントで好成績を残している。契約にあたり「とても興奮しています。クラブにとっても自分にとっても新しいことです。今後はTwitchでの生配信、マンチェスター・シティ公式YouTubeチャンネルでの動画公開、ファンとの交流プレイ、シティの代表としてのトーナメント出場などを予定しています。どれも楽しみです。なかなかない機会ですので、盛り上げていければと思います」とコメントしている。

マンチェスター・シティFCのメディアおよびイノベーション・マーケティング部門常務であるDiego Gigliani氏は「これはマンチェスター・シティにとって当然の進歩です。しばらく前から、パートナーであるEAスポーツやFIFAフランチャイズとは密な連携を継続しています」と表明。「e-Sportsが成長し続けるのであれば、クラブがそこに参入し、『FIFA』をプレイするマンチェスター・シティのファンに寄り添うのは理にかなったことです。ゲームのトーナメントでより大きな存在感を示し、デジタルチャンネルに配信するコンテンツを増やします。私たちはクラブイベントでもっと多くのファンを沸かせることになるでしょう」とe-Sports参入の動機をも語っている。Kez選手を選んだ理由については「e-Sports選手を見出そうとした際に、並外れていて、若く、才能があるのはもちろんですが、飢えていて成長を望んでいる選手が欲しいと思いました。Kieran選手はそういった資質に恵まれていると確信しています。彼は可能性の塊です。すばらしい選手であるだけでなく、世界中のシティファンと触れ合ったときに光り輝く存在となるでしょう」とコメントしており、選定基準が実力や若さだけではないことをアピールした。

 

スポルティングCPもe-Sports参入を計画

また、The Esports Observerによると、ポルトガル・リスボンに本拠を置くプリメイラ・リーガ所属のプロサッカークラブであるスポルティングCPも、『FIFA』および『League of Legends』プロシーンへの参入を計画しているとのこと。『League of Legends』についてはポルトガル国内で複数の上位チームに接触したそうである。『FIFA』についてはプロ選手との契約だけでなく、国内大会の主催についても興味を示しており、既にリーガ・プレイステーションでのトーナメント開催に参画している模様。

スポルティングCPは、先月に活動を終了したゲーミング組織「Copenhagen Wolves」でビジネスディレクターを務めていたGuilherme Fraga氏と、ポルトガルで活動していたゲーミング組織「SteelShock Gaming」の創立者であったMárcio Figueiredo氏をe-Sports部門に迎えているともあるが、スポルティングCPによる公式発表はまだない。

 

今後もサッカークラブのe-Sports参入は続くのか?

今年5月にはウェストハム・ユナイテッドFCが『FIFA』プロ選手である24歳のSean ‘Dragonn’ Allen選手との契約を発表。先月にはリーガ・エスパニョーラ1部所属のバレンシアCFが『ハースストーン』の選手4名と契約、さらに『Rocket League』の選手・スタッフを募集することでe-Sports部門の設立をアナウンスしている。少しさかのぼった今年2月には、ドイツ・ブンデスリーガのVflヴォルフスブルクが2名の『FIFA』プロ選手と契約している。このように、2016年に入ってから、ヨーロッパのプロスポーツ組織によるe-Sports参入が活発化している状況だ。

相次ぐプロサッカークラブと『FIFA』プロ選手との契約について、同じくプロサッカークラブである「シャルケ04」の『League of Legends』チームに所属するMarcel “dexter” Feldkamp選手は苦言を呈してもいる。

dexter選手は現在の状況を鑑み「ヨーロッパでこういった大きなサッカークラブが、『FIFA』選手とのみ契約して、e-Sports業界そのものを盛り立てようとしてくれない様子にはいささか疲れた。ちょっと多すぎるのではないだろうか」とこぼす。「競争相手がそれをやっていて、取り残されたくないからといって、『FIFA』選手とのみ契約するのではダメだ。e-Sportsに取り組むのであれば、適切な人間を雇ってほしい」「e-Sports業界について学び、未来を築くための労力を払ったり、適切な人間を雇ったりといったことをするべきだ。シャルケ04はe-Sportsに正しい方法で取り組んでいる」と、自らが所属するシャルケ04のe-Sports部門を例に挙げ、目新しく手軽なアピール方法としてe-Sportsへの参入を軽く見積もることへの警鐘を鳴らしている。

確かにe-Sportsの花形は実際にプレイを行う選手たちであるのは間違いない。しかし、ゲーム内の行動を評価するコーチ・アナリスト陣といったブレーンから、日頃の生活面などで選手をサポートするマネージャーなど、選手の活躍にはバックアップスタッフの貢献も無視できない。トーナメントで舞台に立つのは確かに選手ひとりだが、その背後では多くのスタッフが選手を支えている。サッカークラブが選手のみと契約し、手間を掛けず安上がりにクラブのアピールができる方法としてe-Sportsに目をつけているのであれば、選手・e-Sports業界・契約したクラブのいずれもが、長期的な利益を失ってしまうことになるだろう。とはいえこの流れは始まったばかりである。引き続き、今後の動向に注目していきたい。

Sawako Yamaguchi
Sawako Yamaguchi

雑食性のライトゲーマー。幼少の頃からテレビゲームに親しむが、プレイの腕前は下の下。一時期国内外のTRPGに親しんでいたこともあり、あらゆるゲームは人を楽しませるだけでなく、そのものが出発点となって人と人を結びつけ、新しい物語を作る力を持っていると信じている。2012年から始めた『League of Legends』について、個人ブログやTwitterにて日本語で情報発信を続けている。

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