『グランブルーファンタジーヴァーサス -ライジング-』“バトルバランス調整会”出演者&開発者感想インタビュー。なぜ大きな方向転換をしたのか、ぶっちゃけどうだったのか
『グランブルーファンタジーヴァーサス -ライジング-』(以下、GBVSR)第二回ベータテストの開催にさきがけて、有名プレイヤーを招いたバトル調整報告会が行われた。ベータテストを跨いで大きく変更・調整が行われたバトルシステムの概要についてはこちらの記事にて解説したが、こちらの記事では収録後に実施された出演者、ならびにクリエイティブディレクターである福原哲也氏に本作に関する率直な疑問をぶつけたインタビューの内容をお届けする。なお、こちらの調整報告会ならびにプレ大会の内容は動画でも公開されているため、ぜひそちらも確認してほしい。
第一回ベータテストを経てのバトル調整内容の発表が行われたあとは、出演者のプレイヤーたちに2時間ほど実際に再調整されたプレ大会バージョンを遊んで試す時間が設けられた。その後、ちょっとしたイベントとして3on3のプレ大会が開催された。こちらのプレ大会の内容に関しては、誌面で読むよりも実際にゲーム画面を、そして大会内容を動画で見ていただいた方が分かりやすく、面白いだろう。準備時間たったの2時間とは思えないほど完成度が高く、最後まで白熱した大会となっているので、ぜひ動画でご覧いただきたい。
出演者・ディレクターインタビュー
ここからは、出演者となった声優の市来光弘氏、格闘ゲームプレイヤーのなかお氏、debagame氏、かずのこ氏、SCORE氏の4名、そして『GBVSR』のクリエイティブディレクターである福原哲也氏に対して実施された収録後インタビューの内容となる。各プレイヤーの素直な感想から、細かい調整意図まで聞き込んだインタビューとなっている。
プレ大会前の練習風景
――市来さんは前作からプレイされていたと聞いていますが、今回、新しい『GBVSR』をプレイしてみていかがでしたか?
市来氏:
自分は前回のベータテストには参加しておらず、前作を初期の頃にプレイしていたくらいなので、今回は新鮮な気持ちで遊ばせていただきもらいました。追加されたシステムやBPのやりくりなど、今後のやりこみにかなり興味が出る内容だったと思います。前作ではゼタを使っていて今回のプレ大会でも使わせていただいたのですが、実はジータが実装された時に使ってみたくてちょっとだけ練習していました。今作ではせっかくなのでジータでも対戦できるくらいにはなってみたいなとは思っています。
――続いて、プレイヤーの皆さんにお伺いします。新しい『GBVSR』をプレイしてみていかがでしたか?
なかお氏:
前回のベータテスト時に「アンケートをすぐに送ってほしい」と言われていたので多くのプレイヤーがフィードバックを送ったと思うのですが、その内容がしっかりと反映されていて驚きました。ここまでユーザーの声をしっかり反映してくれるとは思っていなかったので、次のベータもしっかり遊んでアンケートを送らねば、と思いました。ゲーム内容は、前作が比較的守備的なゲームで終わったのに対して今回はしっかり攻めが強いゲームになりそうな予感がしているので、そこが楽しみですね。
debagame氏:
前回のベータテストはどなたも「レイジングストライクが強すぎる」「投げが弱すぎる」という点が気になったと思うのですが、そこだけではなく全体的に手が入っていて良かったですね。奥義ゲージやBPに関しても、対戦中に考えるべきことが増えたのは面白くて、やり込み甲斐があるゲームになっていくんじゃないかなと思います。
かずのこ氏:
前作は調整の方向性がかなり一貫していて、終始尖った部分を丸めていく形でバランスを取っていたと思います。ユーザーからは多少バランスが悪くても尖った部分を残しておいたほうが面白いんじゃないかという意見もあったと思うのですが、調整方針に関しては終始ブレなかったと思います。
もちろんそれはそれでアリだとは思うのですが、どうしてもユーザーの声は届いていなかったのかなと思ってしまうところはありました。それに比べて今回はベータテストの時点でユーザーのフィードバックに対してかなり柔軟に対応してくれているなと感じます。ゲームを面白くしたいという意欲も伝わってきますし、ユーザー側としても寄り添ってくれているなと思えるとモチベーションも上がりやすいと思います。
SCORE氏:
自分はゲームでは爽快感や気持ちよさを重視するタイプなので、今回の変更、特にダッシュ攻撃やアルティメットアビリティまわりは使いやすさもありかなり好感触でした。システムについても、投げまわりは未知数なところもありますが、総合的にはとても期待できそうだと感じています。
――システム面の変更以外にも、今回からは新キャラとしてアニラが追加でプレイアブルとなっています。触ってみた感触はいかがでしたか?
かずのこ氏:
基本的にはハイスタンダードなキャラだと感じました。飛び道具も対空技もしっかり持っている。あとは羊に乗って突進する技があるのでそれをガンガン押し付けていって、相手が置き技で止めてこようとしたら途中で降りて飛び道具として射出する派生で読み合いにしていく、みたいなことができそうでした。
なかお氏:
十二神将のステージでは背景に十二神将のキャラたちが登場するのですが、アニラが操作キャラにいるとちゃんと背景からもいなくなっているんですよね。細かいところまで作り込んで合ってすごく良かったです。
debagame氏:
アニラはリーチの長さも印象に残りました。足払いやダッシュH(強)あたりはかなり強そうに見えましたね。
――新しい「投げ」システムの印象はいかがですか?
なかお氏:
第一回ベータテストに比べると投げ抜け猶予は短くなりましたが、それでも前作と同じくらいだとするとまだ使いづらいかもしれませんね。前作の時点で上級者の多くは掴まれたのを見てから投げ抜けで反応できていました。ただそれだとどうしても遅抜けになってしまいフレーム不利なので、攻めのターンは終わりません。しかし今回の変更だと投げボタンで投げ抜けを成立させた場合タイミングに関わらず早抜けになるようなので、上級者同士の対戦だと見てから投げ抜けされてそこで攻めが終わってしまう。なので、崩しとしての投げは使いづらそうかもしれないというのが今のところの印象です。
SCORE氏:
ただ発生は前作よりも早くなっているので、守りの手段としては使えるのではないかなと。発生の早い小技を持っていないキャラとかは、投げが割り込みや切り返しの生命線になるかもしれません。
debagame氏:
個人的には見てから投げ抜けできないくらい猶予は短くしてもらって、投げはもう読み合いにしてもらった方が良いのではないかと思っています。ただ僕らも今回2時間しかプレイしていないので、次のベータテストでしっかりやり込んでみないとまだ分からないですね。
なかお氏:
次のベータテストは絶対プレイヤーも増えて、またたくさんのフィードバックがもらえるんじゃないかな。これだけ変更点があれば、前回のベータテストで合わなかった人もまた触ってくれるだろうし、ユーザーの意見をしっかり吟味してくれることがわかったのでアンケートも皆さんしっかり書いてくれるはず。それでまた発売に向けて仕上げていって貰えれば、僕たちプレイヤーとしても嬉しいですし、期待できると思います。
――ここからは福原さんにお伺いします。今回の企画(調整報告会とプレ大会)のきっかけを教えてください。
福原氏:
まず大前提として第一回ベータテストの評判があまりよくなかったので、発売前にもう一度ユーザーの方に触ってもらうタイミングを用意し、そこで評判が良くならないとこのままではCygamesとして発売できないというのがありました。
第一回ベータテストが不評だった理由のひとつには、事前の説明が不足していたというのが少なからずあると思っています。レイジングストライクや投げがどうしてああいった性能になっていたのかについてしっかりと説明できておらず、前作に比べてセオリーが変わっている部分が十分にユーザーに伝わらないままネガティブな部分だけ目立ってしまったのかなと。また、前作からセオリーが変わった部分は純粋に不評だったので、きちんと正当な続編と言えるようにプレイ感を維持したまま、新要素もわかりやすい性能とし、前作の延長線上の中に新要素がプラスされているような遊び心地にするべきと思いました。
その上で、前回の反省を踏まえて今回はしっかりと変更について事前に説明も怠らないようにしたかった。前回のベータテストの感覚でレイジングストライクを使っているとすぐにBPが枯渇して被ダメージのペナルティを背負ってしまいますし、新しい仕組みについてしっかりとユーザーのみなさまに先に説明しておく必要があります。そこで今回有名なプレイヤーの方にも触ってもらって、ハイレベルな戦いをしてもらいつつも新しいシステムについて理解していただき、ついでに盛り上がっている様子も番組でお届けできたらなと思い、こういう企画を用意しました。
――第一回ベータテストでは格闘ゲーム初心者向けの工夫を凝らしていたように思えますが、今回は主に上級者向けの調整のように感じます。なにか方針の変化があったのでしょうか?
福原氏:
格闘ゲーム未経験の方などから良い反応を頂けたのもあるのですが、結局そういった新規の方がプレイを続けて上手くなった時に、格闘ゲーム経験者の方や前作プレイ済の方と同じ感想に着地するのではあまり意味がないかもと考えました。初心者向けのケアはシステム以外でもいろいろと打ち出していますし、ゲーム全体で手厚く行ってはいます。その上で既存のユーザーや熟練者の方向けにもしっかりと奥深さや面白さを作り込んでいかないといけないと思い、結果的に大きな変更となりました。
特にレイジングストライクの扱いは難しくて、プレイヤースキルで回避できなかったという点と、ガードクラッシュ技自体が「押し得」なところがあって、そういった組み合わせの部分でも好まれなかったのかなとは感じました。普通に当ててもガードされてもリターンがありますから。そこでBPまわりを少し調整して、押す側にもそれなりのリスクをつけて納得感を出せればなと思い、こういう形に落ち着きました。
――投げにも大きな変更が入りました。こちらにはどのような背景があったのでしょうか?
福原氏:
投げは前回ベータテストで意見が真っ二つに割れていたこともあり、こちらもかなり悩みました。まず前提としてレイジングストライクは絶対に調整する必要があったので、そうするとある程度代替となる崩しの手段が必要になります。そこであまり複雑なシステムを追加で導入してもややこしくなりすぎてしまいますから、投げに関してはオーソドックスなものに戻していった方が良いだろうとなり、前作基準の投げ抜け猶予に変更しました。とはいえやはり投げ抜けが出来ないとループして嫌だという方がいらっしゃいますので、攻撃ボタンでも投げ抜け出来る仕組みを導入しました。ただこの「遅抜け」は状況が悪く、「遅抜けダメージ」もそれなりに貰いますので、しっかりと投げ入力での投げ抜けも活用しないと状況が好転しないようになっています。
――「遅抜け」後に、投げた側が有利フレームが取れるダッシュL(弱)で攻めを継続できるのかどうかが気になります。
福原氏:
一応、遅抜け後に投げた側が最速ダッシュL(弱)で固め直しは出来はします。ただその最速入力の受付猶予はかなりシビアなのと、ダッシュ速度などキャラによってやりやすさも違うので、なかなか難しいテクニックになっています。少しでも遅れると割り込まれてしまうはずです。
――テクニカル入力のメリットが追加された背景を教えてください。
福原氏:
テクニカル入力については日本と海外で反応が分かれていて、日本では(クイック入力のデメリットをなくしたことについて)肯定的な意見が多かったのですが、海外の方からは反響が大きかったんです。海外のプレイヤーは格闘ゲームをプレイすること自体、アーケードスティックの存在そのものにステータスを感じているような文化があるように思えて……情熱が物凄いと感じました。コマンド入力を習得することに対するモチベーションがすごく高いのかなと。
格闘ゲームの上達と入力の上達は切っても離せない関係にあるので、入力が上手くなっていくことの楽しさも他のライトユーザーに伝えていきたいというような、そういう意欲も非常に高いようです。ファンコミュニティの意見という面では、そういった部分もしっかり考えねばと思い、デメリットではなくメリットという形を加えることに踏み切りました。大きなメリットではないですが、あくまで立ち回りでコマンド入力を成功させるご褒美という形で、ダメージが10%増加します。ただ、これはあくまでニュートラルから出した場合のみで、コンボ中などキャンセルで出した場合はクイック入力、テクニカル入力共に同じダメージ量となります。
――プレ大会の内容を見ていかがでしたか。今後の調整の参考になる点などはあったのでしょうか。
福原氏:
今回プレ大会に使用したバージョンではキャラクターの体力が20000に設定されているのですが、これはちょっと多すぎて試合が長引きがちです。実際プレ大会でもタイムアップになる場面がありましたね。これに関しては開発でもすでに認識していて、第二回ベータテストのバージョンでは16000に変更する予定です。経験者の方はガードが硬いですし、逆に攻めに使える新しいシステムに関してはみなさんまだ使い慣れていないと思いますので、ベータでは逆にちょっと低いくらいがちょうどいいのかなと。ベータ後にあらためてデータやフィードバックを集め直して、最終的に製品版で体力をどのくらいにするかを調整していく予定です。
――11月の第二回ベータテストに向けて、なにか注目してほしい部分などはありますか?
福原氏:
バトル部分が大きく変更されているので、前回のベータテストをプレイしてくれた方はその変化を体験しにプレイしてほしいですし、前回の評判だけ聞いてちょっと尻込みしている方も、ぜひ改善したバージョンを触ってみてもらいたいと思います。前回は対戦待ち受け時にしか出来なかったトレーニングモードも選択できるようになっているので、そちらでもいろいろと試せるようになっています。また、バトル以外にもロビーや「ぐらぶるレジェンドばとるっ!(ぐらばとっ!)」も遊べるようになっていて、ここも今作の目玉の要素ですので、ぜひ触ってみてください。
――みなさん、本日はありがとうございました。
『グランブルーファンタジーヴァーサス -ライジング-』は11月30日発売予定。対応プラットフォームはPS5/PS4/PC(Steam)で、現在予約も受付中。また、注目の第二回ベータテストは11月開催予定となっているので、興味のある方は忘れずに参加しよう。