オンラインゲームでは近年「チート・暴言などの有害行為」が増加傾向にあるとの調査報告。シューター・スポーツ・レースゲームでは特に被害多発
Unity Technologiesにより、マルチプレイゲームにおけるToxicity(有害行為)が増加傾向にあるとの調査結果が報告されている。GamesIndustry.bizが伝えている。
Unity Technologiesはゲームエンジン「Unity」の開発元として知られる企業だ。開発者などに向け、市場調査などさまざまなレポートを公開している。今回同社が公開したのはマルチプレイゲームにおける有害行為についての、2023年の調査レポートだ。今回のレポートは米国、英国、韓国における、2522人のプレイヤーと407人の開発者から得られた回答がもとになっているとのこと。
レポートによると、この1年間で有害行為を受けたあるいは目撃したと報告したプレイヤーの割合は74%を記録。2021年から6%増加しているという。また調査対象者の半数が、ゲーム内で定期的に有害行為に遭遇すると回答していたそうだ。なお報告された有害行為の内訳で多かったものとしては「チート/改造」や「意図的な妨害行為」を始め、「ヘイト」「暴言」などが挙げられる。
なおレポート内では回答を寄せた開発者のうち53%が1年間で有害行為が増加しているとの見解を示したことも伝えられている。一方、有害行為が増加していると感じたプレイヤーは32%にとどまったそうだ。調査結果として有害行為を受けたと報告するプレイヤーの割合は増加傾向にあるものの、当事者であるプレイヤーは有害行為の増加を実感しにくいといった不思議な傾向も垣間見える。
またレポートでは、プレイヤーが有害行為に「いつも/ほぼいつも/頻繁に」遭遇すると回答されたゲームジャンルの割合も示されている。上位ではシューターが51%、スポーツ/レースゲームが49%、バトルロイヤルが44%といった結果が得られたそうだ。ちなみにバトルアリーナ/MOBAは第10位となる35%とされている。
なお2023年の調査結果においては、有害行為を受けたプレイヤーのうち96%が相手への対処をおこなったことを報告したそうだ。2021年から30%も増加していたといい、有害行為を受けて何らかの行動を起こすプレイヤーが増加傾向にあるようだ。具体的な対処としては、有害行為をおこなったプレイヤーの「ブロック」を挙げるユーザーが約半数を占める結果に。そのほか回答者の約3分の1が、「ゲーム内の通報機能を用いる」「ミュートする」「ゲームを終了する」といった対処を挙げていたそうだ。またそもそも、有害行為を受けるようなゲームを(今後)やめるかもしれないとした回答者は67%にのぼったという。
そのほかレポートでは、ゲーム内での言動の記録・録音についてのプレイヤーと開発者双方への意識調査も実施。対象のプレイヤーのうち89%は、記録・録音の有益性を認識していたという。また68%のプレイヤーおよび69%の開発者は、記録・録音が有害行為を減らす可能性があると回答したそうだ。「プレイヤーにより良い行いを促す」「通報が正しいかどうかを判断する証拠になる」「有害行為かどうかを判断するモデレーターが公平な判断を行える」といったメリットも一定の支持を集めていたとのこと。ただし記録・録音については89%のプレイヤーが懸念も寄せていたという。
マルチプレイ向けゲームにおいては、チートや暴言をはじめさまざまな有害行為が横行し、開発元がそうした問題への対処に追われている作品もある。『VALORANT』や『Call of Duty』といった複数のシューター作品ではチート対策プログラムやAIによる有害ボイスチャット検出機能など、さまざまな対策が講じられている。また今回の調査をおこなったUnity Technologiesも同様の仕組み「Safe Voice」を発表。ゲームエンジンを問わず利用できるとされ、試験運用も開始されている。
有害行為が増加傾向にあることが示された今回のUnity Technologiesの調査レポート。業界では昨今、AI技術も用いられてさまざまな対策もおこなわれており、有害行為の発生率がどのように推移していくかはこれからも注目されるところだろう。