『League of Legends』夏の折り返しを迎えた欧米プロシーン。世界大会に向け白熱していくEU LCSの情勢をチェック
折り返し地点を過ぎて
今年の夏も熱い戦いが繰り広げられているEU LCS。世界大会への切符がかかったこのリーグも、Week 5を終えていよいよ折り返し地点を通過した。これからは世界大会への出場権がかかったプレイオフや、1部リーグ参加権を巡る入れ替え戦など、レギュラーシーズン後を視界に入れての戦いが繰り広げられる時期に入ったといえるだろう。そこで今回は、Week 5終了時点の順位とここまでの戦いを振り返っていきたい。
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2016シーズンのEU LCS Summer Splitからは、レギュラーシーズンの対戦形式が大きく変更された。Spring Splitまでは1回の対戦カードについて1試合しか行われていなかったのだが、この夏からはBo2方式(Best of 2、最大で2試合)で勝敗が決まることになり、総試合数が大きく増加。Bo2方式であることから必然的に1回の対戦カードの結果は「勝利」である2-0、「引き分け」1-1、「敗北」0-2の3種類となっている。「勝利」したチームは3ポイント、「引き分け」では双方のチームが1ポイントずつ獲得する。レギュラーシーズンの対戦カード組み合わせ自体は変わっておらず、ラウンドロビン方式の総当たり戦であり、1スプリットに同じ対戦カードが2回組まれるようになっている。つまり、全9週間で競われる1スプリットは、Week 5終了をもって対戦カードの組み合わせが1巡したことになる。
トップ集団:無敗のG2 E-sportsとトップ3
今シーズンも首位を行くのはG2 E-sportsだ。粒ぞろいのタレントと適切なマクロ判断で、マッチを落とすことなく現時点で5勝5分となっている。Week 5では首位を賭けたFnaticとの直接対決に快勝しており、今後も安定して首位争いを続けられるはずだ。
続くのがEU LCSが誇る名門、Fnaticだ。YellOwStaR選手が復帰してからは比較的安定して勝ち星を重ねており、現在は2位につけている。Week 5ではG2との直接対決に敗れ、更にシーズン序盤に低迷していたGiantsに0-2で敗れるなどして5勝2分3敗という戦績。パフォーマンスには若干の揺らぎもあるようだが、他チームとの勝ち点差は十分に開いており、プレイオフまではとりあえず駒を進められるだろう。
今回も3位につけているのが、EUの強豪(ただし万年3位)として知られるH2kだ。こちらも新チームや新体制のチームがひしめく中で、安定して勝ちを手にしている。懸念材料としては、Summer SplitにおいてADCとして活躍しているFreeze選手が手首を痛めていることだろうか。MidやADCといったポジションは特に操作量の多いポジションであり、職業病ともいえる手首の故障だが、今後の試合に影響が出ないかが心配される。
第二集団:組織の力、チームのまとまり
Spring Splitから変わらず上位を占める3チームに続くチームは、およそ勝ち点13前後で互いに競っている。現在この位置につけているのはSplyce、FC Schalke 04、そしてGiants Gamingだ。いずれもSpring Splitは苦戦し下位に甘んじていたチームだが、Summer Splitでは前シーズンと比べれば上々の位置につけている。
その中でも健闘している興味深いチームとしてFC Schalke 04が挙げられる。春シーズンまでElementsの名で活動していたチームをサッカーチームのFC Schalke 04が買い取って更新されたチームだ。LCSチームのスタッフはそのままスライドしてきているため、純粋に組織の後ろ盾によってチームの環境が改善されたのだと思われる。
Splyceは苦しい春を乗り切ったチームが上手くまとまってきているようだ。折り返しを過ぎたということは、全てのチームと一度は戦ってこの結果である。このまま調子を維持すればプレイオフ進出も十分に可能だ。
また、Summer Split開幕以降負け続きとなっていたGiantsが調子を上げてきている。Week 5はROCCATおよびFnaticに2-0で勝利し、一気に勝ち点6を獲得して順位を上げてきた。引き分けが多くなると勝ち点が伸びず固まったグループに落ちやすい現在のEU LCSでは、快勝できる状況にチームが上向いてきている点は純粋に好材料である。
下位集団:Bo2戦と、勝ちきれないチームの苦闘
下位集団である7位~10位のチームは、勝ちきれないことが最大の問題としてのしかかっている。現在この位置にいるのはUnicorns of Love、Vitality、Origen、ROCCATの4チームで、これら下位層チームの戦績は1勝~2勝プラス多くの引き分けという傾向にあり、獲得ポイントは9点前後で団子になっている。
大負けしないのは良いとしても、引き分けが多すぎるチームは勝ち点を稼げず、順位を上げることができない。0勝3分0敗は1勝2敗と同じ勝ち点しか得られないので、似たような状況のチームが固まってしまう。この集団から抜け出すか、少なくともトップに立たない限り、シーズン終了後に待ち受けるのはChallenger Seriesから上がってきたチームとの入れ替え戦となってしまうだろう。
現在7位のUnicorns of Loveが辛うじて2勝を上げている以外は、1勝しかできていないこれらのチーム。同水準のチームに先んじて一つでも多くの勝ちを得ることが至上命題となるだろう。負けないだけではこの危険地帯から抜け出ることはできないのだ。
Worldsへの道
さて、EU LCSレギュラーシーズン後半戦を楽しむにあたって、最も重要な世界大会への切符の獲得ルートについて再確認しよう。EU LCSから世界大会「World Championship(Worlds)」へ出場できる3チームは以下の手順で選出される。
1. 夏のプレイオフ優勝
2. Championship Point 1位(優勝チームが1位の場合はポイント2位)
3. 地域代表選抜戦を勝ち抜く
夏のプレイオフは、Summer Splitの上位6チームが参加するトーナメントだ。このトーナメントを優勝したチームは自動的に世界大会への出場権を得る。
つづいて、プレイオフに参加したチームはその順位に応じてChampionship Pointを獲得する。Spring Splitのプレイオフ時にもこのポイントは配布されており、春夏を通して得たポイントの合計が最も高いチームが世界大会への出場権を得る。もしも該当するチームがプレイオフ優勝チームだった場合、2番手のチームが繰り上がりで出場権を獲得する。Spring Split終了時のChanpionship Point獲得順位については、春の振り返り記事を参照いただきたい。
最後の地域代表選抜戦は、出場権を持っていないチームの中からChampionship Point上位4チームが出場する勝ち抜き戦だ。この戦いを勝ち抜いたチームが最後の出場権を獲得する。例えば昨年の北米代表チームCloud9はSummer Split終盤から調子を上げ、この戦いを勝ち抜いて一気に世界大会へと勝ち上がっている。
EUの現在の状態からすると、プレイオフ優勝の本命はやはりG2だろう。Championship PointはOrigenがG2に次いで多くのポイントを獲得しているが、現在の低迷しているチーム状況では夏のプレイオフ進出が危ぶまれる。Championship Point合計では、Fnaticがその椅子を獲得する可能性が高いだろうか。G2とFnaticがプレイオフ2強となる可能性は高いので、どちらが勝っても双方ともに世界大会出場という状況となるかもしれない。そうなると、残った最後の椅子を巡る選抜戦が加速することになる。例年なら、万年3位のH2Kということになるが、Origenの低迷やFC Schalke04らの活躍という現状からは、春と夏でプレイオフ進出チームが大きく異なる可能性も高い。地域代表選抜戦に残る通算Championship Point上位4チームの予想は難しいというのが正直なところだ。H2KやOrigen(春のプレイオフ2位)が有力だが、残りの枠にどんなダークホースが滑り込んでくるかはわからない。
いずれにせよ、最後の最後の3チームが確定するまで目が離せないLCS。残り4週間(およびプレイオフと地域代表選抜)が楽しみである。
[執筆協力: ユラガワ@Wired-Lynx]