『グランブルーファンタジー リリンク』開発者インタビュー。7年以上の長期開発、執念の一作のこだわりポイントを訊いた

Cygamesは8月23日、『グランブルーファンタジー リリンク(GRANBLUE FANTASY: Relink)』を2024年2月1日に発売すると発表した。本稿では、本作ゼネラルディレクターの福原哲也氏ならびにディレクターの梶泰幸氏に向けて実施したインタビューの内容をお届けする。

Cygamesは本日8月23日、『グランブルーファンタジー リリンク(GRANBLUE FANTASY: Relink)』を2024年2月1日に発売すると発表した。対応プラットフォームはPlayStation®4/PlayStation®5/PC(Steam)で、予約受付も開始されている。

『グランブルーファンタジー リリンク』は、Cygamesより配信中の『グランブルーファンタジー』(以下、グラブル)を原作とした、3DアクションRPGだ。本作にはシングルプレイ用のメインストーリーのほか、メインストーリーの進行に応じて解放されていくクエストが用意。クエストは最大4人でのマルチプレイに対応している。

弊誌は『グランブルーファンタジー リリンク』発売日発表に先駆けて開催されたメディア向けプレスイベントにて、本作ゼネラルディレクターの福原哲也氏ならびにディレクターの梶泰幸氏にインタビューをおこなう機会をいただいた。本稿ではその内容をお届けしていく。なお福原氏は『グランブルーファンタジーヴァーサス -ライジング-』のクリエイティブディレクターも務めており、弊誌では同作についてもインタビューを実施している(関連記事)。

左:ディレクター梶泰幸氏、右:ゼネラルディレクター福原哲也氏

――3Dアクションという人気ジャンルの中で、『グランブルーファンタジー リリンク』が独自性を出している部分はどこですか?

福原氏:
やはり4人で共闘できるという点ですね。クエストではオンラインで4人のマルチプレイでも遊べますし、オンラインが苦手な方でもCPUと一緒に戦えます。CPUの操るキャラクターはまるで人間が動かしているかのようにアグレッシブに動いてくれるので、しっかりと連携プレイが楽しさが味わえます。

あとはシンプルにアクションゲームとしての質の良さ、手触りの良さです。これは今まで試遊していただいた方々にも上手く伝わっているという手応えを感じています。そのため、我々がずっと信じて作り込んできた部分がしっかりと実を結んだゲームになっていると考えています。多くの人に『グランブルーファンタジー リリンク』を触っていただいて、『グラブル』に興味をもっていただければと思います。


梶氏:
ハイテンポなアクションゲームで4人マルチプレイができるゲームというのは、自分が開発者として関わってきたアクションゲームにもあまりなかった体験ですね。本作では、それに加えて仲間との奥義のチェインシステムや、味方を回復させたり敵の足を止めたりすることが可能なアビリティもあります。そういう連携プレイをアクションゲームにうまく落とし込んでいるのが、『グランブルーファンタジー リリンク』の持ち味だと思っています。

――メインストーリーとクエストはどういう構造になっているのでしょうか?

福原氏:
メインストーリーはいわゆるキャンペーンモードのような仕組みになっていて、その途中で立ち寄る街にクエストカウンターがあり、そこでクエストを受けられるという形になっています。クエストはメインストーリーを進めるとどんどん種類が増えていきますので、メインストーリーのボス戦で詰まったときなどはクエストを遊んで強化素材を集めると楽になります。クエストを解放してすぐ遊んでおけば、早い段階で強い武器が作れたりといったメリットもありますね。メインストーリーの途中でクエストもしっかりプレイしていけば、基本的にはスムーズにエンディングまでたどり着けるはずです。

――クエストをマルチプレイするには自分とメインストーリー進行度が一致している必要はあるのでしょうか?

福原氏:
自分より先の進度のクエストに参加すること自体は可能です。ただマッチング設定からネタバレを回避することも可能となっています。たとえば自分のメインストーリー進行度からは知り得ない情報をもっている人や、明らかに自分のクエストに対して強すぎる人などとはマッチングしないようにする設定があります。

――マルチプレイはどのようなバランス調整になっていますか?

梶氏:
クエストにはストーリーで育てた仲間CPUを連れてソロでも行けるほか、4人全員プレイヤーでなくプレイヤー2人とCPU2人などでも遊べるようになっています。(CPUのパーティメンバーを連れて行かずに)本当の意味でソロプレイでも遊べます。高難度のクエストはさすがに厳しいと思いますが、ぜひそういったプレイにもチャレンジしてみてほしいですね。高難度でも時間をかければ勝てるバランスにはなっていると思います。ただ、4人全員が人間のプレイヤーだとボスを早く倒したりできるのは間違いありません。

――クエストは周回する必要があるのでしょうか?

梶氏:
多くのキャラクターをまんべんなく強化しようとすると、クエストで特定の素材を取りに行ったり、繰り返し敵と戦ったりという周回プレイはある程度必要になってきます。また最強武器などはしっかりやり込まないと手に入らないようにしてあるので、より強くなりたい人が繰り返し遊べるようにという風な調整になっています。

福原氏:
クエストの初回報酬でキーアイテムや重要素材などはある程度手に入るので、基本的には1回ずつクリアするだけでもスムーズに最後まで遊べるようには作ってあります。ただ尖ったビルドを目指したり、複数のキャラを強化したりしたいときはドロップアイテム狙いでクエストを遊んでいただく形になるかと思います。


――キャラクターの育成や装備の強化はどのようなシステムになっているのでしょうか?

福原氏:
本作にはキャラクターにパッシブスキルを追加する「ジーン」が大量に用意されています。ジーンの作成や強化のほか、武器を作ったり上限解放したりするために、さまざまな素材が必要になります。その際に欲しい素材を入手するためにどのクエストに行けばいいのかを調べられる逆引き検索機能も用意しているので、素材集めの際に活用してもらえればと思います。

――キャラクターのビルド・強化要素について、通常攻撃のモーションやパッシブスキルが変化するような仕組みもありますか?

梶氏:
通常攻撃のモーションが大きく変更されるようなものはないですが、キャラクターごとに強化要素があって、それで新たなアクションや入力要素が追加されることはあります。たとえば強攻撃ボタン長押しのチャージが速くなったり、コンボフィニッシュの後にタイミングよくチャージを開始するとチャージが即座に完了したりとか、テクニカルなものも多いです。基本的にキャラクタービルド要素はクエストに持ち込むアビリティの付け替えですね。自分の戦闘スタイルや、クエストの目的に合わせてアビリティを変更することで大きくゲーム性を変更することができます。

そしてパッシブスキルに関してはどんどん増やしていくことができます。パッシブスキルの内容としては、たとえばジャストガードするとキャラクターが強化されるようになるスキルや、ジャスト回避でキャラクターが強化されるようになるスキルなどがあります。後はキャラクターの強化で特定のアビリティを強化するものがあるので、自分が気に入っているアビリティを重点的に強化するルートを選ぶといったビルドもできます。

――本作ではプロトバハムートも操作できるそうですが、通常キャラクター以外を操作できる要素は基本システムとして採用されているのでしょうか?

梶氏:
プロトバハムートを操作できるのはイベントバトルの一部として盛り込んである要素です。基本システムと同じく操作性にはかなりこだわっていて、プロトバハムートの操作でも皆さん驚くくらいスムーズに遊べると思います。アクションゲームとしての派手さや、巨大生物の戦いのスペクタクル感を味わえるようにしてあります。同じような場面はほかにもいくつかあるので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。

――エンディングまでの想定プレイ時間はどれくらいでしょうか?

福原氏:
エンディングパートまでは20時間くらいになると想定しています。ただエンディングの後もストーリー自体は少し続くため、ストーリーが完全に終わるまでは駆け足でプレイしても合計で30~40時間はかかると思います。


――全プレイアブルキャラクターに専用アクションがあることには驚きました。かなりこだわったポイントなのでしょうか?

梶氏:
絶対にやりたかったことでしたね。もちろん開発は凄く大変でしたが「『グラブル』のキャラクターで自由にアクションできる」という点は一切妥協をしたくありませんでした。全キャラクターしっかりプレイ感が違うように仕上げていますし、そのキャラクターのファンの方にも納得していただけるようにグラフィックや動きも細部までこだわっています。

アクションゲーム好きの方も自分に合ったプレイスタイルのキャラクターを探しやすいように、いろんなタイプのアクションを持ったキャラクターを取り揃えてあります。そして「自分のキャラクターと特定の敵との相性が悪くてプレイしづらい」といったことが起きないように、どのキャラでも快適に最後まで遊べるようにも気を遣ってバランスを調整してあります。こだわりのキャラクター一人で最後まで行きたい人も、いろんなキャラクターをかいつまみながらプレイしたい方にも満足していただけるようになっているはずです。

――『グラブル』原作ファン向けの、『グランブルーファンタジー リリンク』限定のキャラエピソードなどはあるのでしょうか?

福原氏:
フェイトエピソードという形で、メインストーリーとは別にキャラクターごとのショートエピソードが10話分ほど収録されています。中ではエピソード中に「このキャラクターを操作してこのボスを倒してください」というようなクエストが発生するものもあります。ただの読み物ではなく、しっかりアクション要素やクエストも盛り込んであって、さらにクリアするとそのキャラクターを強化できる報酬がもらえたりします。

収集要素やキャラクター強化のやり込みとフェイトエピソードを合わせると、本作はかなりボリュームがあります。あと、メインストーリー中のセリフの一部がその時の操作キャラによって変化するのですが、これもとんでもない分量になっています。キャラクターを変えながらのストーリー周回も楽しめるかと思います。

――プレイアブルキャラのバックストーリーなどは、『グラブル』を知らなくても分かるようにしてあるのでしょうか?

福原氏:
フェイトエピソードの導入部分はキャラクターの軽い背景説明になっていて、主人公との出会いの経緯などの説明がしっかり用意されています。こちらを読んでいただければ基本的にどういうバックボーンのキャラクターなのかは理解してもらえます。あとは大量に用意された戦闘中の掛け合いなども聞いていただければ、おのずとその性格やほかのキャラクターとの関係性も見えてくるかと思います。


――フィールドのグラフィックが非常に綺麗だと感じたのですが、こだわりポイントはありますか?

福原氏:
『グランブルーファンタジー リリンク』には『グラブル』の背景を担当していたCyDesignationの堀壮太郎さんが携わっています。彼は前職を含めて名立たるタイトルの背景を担当していて、3Dゲームの背景にもこだわりがあるんです。そこで『グランブルーファンタジー リリンク』で『グラブル』の世界観を3Dで表現するとなったときにも、そのこだわりを存分に発揮してもらいました。最近のフォトリアルな背景が主流な中ではユニークな絵作りになっていると思います。

梶氏:
実は僕も背景アーティスト出身で、掘さんと「3Dで『グラブル』の世界観を再現するにはどうすればいいか」といったことを話し合いながら試行錯誤を続けてきました。オブジェクトのひとつひとつのテクスチャーを手描きで作っていたりと、手間をかけて作った結果、かなり『グラブル』らしい世界観や背景を作り上げられたかと思います。

――本作は2016年の発表以来、かなりの長期開発となりましたが、特に時間をかけたポイントはありますか?

福原氏:
CygamesはUIの洗練度やプレイの快適さをすべてのタイトルで重視しています。何度も繰り返し操作をする部分は特に手触りの良さを重要視していて、代表取締役社長の渡邊やプロジェクト外のスタッフにもプレイしてもらい、フィードバックをもらって改善していく、というようなステップを何度も繰り返しています。

梶氏:
グラフィックにも本当にこだわっていて、そこにかなり時間をかけています。ただ開発期間が長くなったのは特別どこかに力を入れたわけではなく、全体的なクオリティに繰り返し磨きをかけてきたがゆえに時間がかかったと考えています。Cygamesが作るゲームのクオリティの高さを体感していただけるようなタイトルに仕上がったと思います。

――開発チームの規模はどれくらいでしたか?

梶氏:
大阪Cygamesだけではなく、東京本社スタジオのスタッフも参加しており総勢200名程のスタッフで開発しています。かなりの人数で力を入れて作ってます。

――本作はもともとはプラチナゲームズとの共同開発でしたが、2019年にCygamesの単独開発タイトルになったことが発表されました。開発体制が変化した経緯について教えていただけますか?

梶氏:
私は本作の開発当初プラチナゲームズに在籍しており、当時から本作のディレクターを務めていました。福原とも当時から密に連携しつつ開発を進めていたのですが、開発期間の長期化に伴って、最適な開発体制を維持し続けることが難しくなってしまい、Cygames単独での開発に切り替えることになりました。私にとっても両社にとっても非常に苦しい判断でしたが、私自身、多くのスタッフと共に目指した最高のゲームを何としても完成させたい想いを諦めることができず、Cygamesに移籍して本作を完成させる決断をしました。


――『グラブル』ファンではない人にも『グランブルーファンタジー リリンク』を遊んでもらうため、今後どのようなアプローチを予定していますか?

福原氏:
『グラブル』のことを知らない方にも楽しんでもらえるよう意識して作ってはいるのですが、主人公とルリアの関係性と、旅に出た経緯だけは知っておいてもらえるといろいろな理解が早いし深まるかと思っています。なので、たとえばTVアニメシリーズへの誘導や、Web上で『グラブル』を知らない方向けの漫画の公開といったプロモーションを打ち出していく可能性はあります。『グラブル』はいろいろなメディア向けの媒体も揃っているのでそれらも活用したいと思いますが、やっぱりメインはゲーマー向けのアプローチをしていきたいですね。そこで海外版の発売も重要だと考えています。海外だと日本以上に『グラブル』を知らないという方は多いと思うので、そちらへの展開は少なからず力を入れていきたいなと。具体的な内容は、順次発表されていくと思います。

――最後に、プレイヤーの皆様に向けてメッセージをお願いします。

梶氏:
相当お待たせすることになってしまいましたが、ようやく発売日も来年の2月1日に決まりまして、ついに皆様の手元にお届けできることを嬉しく思います。本作のアクション部分は特にこだわって作っていて、お待たせした期間に見合うクオリティを生み出せたと思っています。ぜひ楽しみに待っていてください。

福原氏:
発表から長い期間お待たせしてしまったのは、グラブルファンの方に関しては申し訳なく思っています。そのうえで、かけた時間の分だけ良いゲームに仕上げられたと確信しています。『グラブル』は2024年3月に10周年を迎えますので、2023年11月30日に発売される『グランブルーファンタジーヴァーサス -ライジング-』や原作『グラブル』のイベントやアップデートも含めて、2024年というグラブル10周年イヤーを盛大に盛り上げていきたいですね。ファンの皆様にもぜひお付き合いいただけると嬉しいです。

――本日はありがとうございました。

グランブルーファンタジー リリンク』はPlayStation®4/ PlayStation®5/PC(Steam)向けに、2024年2月1日に発売予定。予約受付も開始されている。

Mizuki Kashiwagi
Mizuki Kashiwagi

PCとPS4をメインで遊んでいます。自分で遊んでも、観戦していても面白いような対戦ゲームが好きで、最近は格闘ゲームとMOBAをよく遊んでいます。

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